オスからメスへの攻撃
繁殖をめぐるオス・メス間の対立に起因するオスの攻撃は、さまざまな動物種で確認されています。なかでも霊長類は、こうした攻撃が特に頻繁に見られる分類群ですが、そうした攻撃がなぜ発生するのか、またそれが他個体にどのような影響を及ぼすのかについては、いまだ不明な点が多く残されています。
ニホンザルでは、交尾期(9月から12月ごろ)になると、群れに在籍するオスに加え、交尾の機会を得ようと群れの外からやってくるオスによる激しい攻撃が頻繁にみられるようになります(動画1、図1)。また、こうした攻撃によって、メスやコドモは怪我をするリスクが高くなることも分かっています(写真1、図2)。
私は、宮城県ニホンザルの野生ニホンザルを対象に、こうした攻撃がなぜ生じるのか、またメスたちが攻撃にどのように対抗しているのかを調べています。
動画1. 交尾期のオスからメスへの攻撃
写真1. オスの攻撃による怪我
図1. メスがオスから攻撃される頻度。1つの丸は1個体のデータを表し、同じ個体のデータを線でつないでいる。
図2. メスの新しい怪我が確認された日数割合。1つの丸は1個体のデータを表し、同じ個体のデータを線でつないでいる。
群れの離合集散動態
多くの霊長類は集団生活を行います。しかし、集団内の空間的凝集性やそのときどきで確認できる個体の数や構成が、時間的にどの程度変動するか(= 離合集散動態)は、種内でも種間でも多様です。
私は、宮城県金華山島で観察された群れの頻繁な離合集散を4年間にわたって記録し、それが生じた要因を調べてきました。定量的な分析の結果、離合集散は群れの高順位オスの動きによって生じていたことが明らかになりました(図3)。
図3. 宮城県金華山島B1群で観察された群れの離合集散。