なぜその場所にその生物がいるのか、ということを総合的に明らかにしたいと考えています。ここでは、出版論文の内容を簡潔に紹介していきます。
なぜその場所にその生物がいるのか、ということを総合的に明らかにしたいと考えています。ここでは、出版論文の内容を簡潔に紹介していきます。
自然の分布域の外から人為的にもちこまれた種である外来種は、生物多様性を毀損しうる存在として関心を集めています。多くの外来種はその侵入の初期段階において、専門家などにより発見・同定され、外来種であることが明らかになります。しかしながら、分類学的な研究があまり行われていない分類群では、その侵入に誰も気がつかなかったり、気がつかれたとしても在来種と誤認されたりすることがあり、保全上の問題を引き起しかねません。
この研究では遺伝子を用いて、北米原産のメリケンコザラ Ferrissia californica が日本に移入していることを明らかにしました。さらに、日本の固有種であるとみなされ、かつての環境省レッドデータブックでも情報不足にカテゴライズされていたスジイリカワコザラ F. japonica は、実際 のところ、外来種のメリケンコザラであったこともわかりました。また、核 DNAとミトコンドリア DNAに系統的な不一致があり、外来種のメリケンコザラと在来種のカワコザラ F. nipponica が交雑している可能性も示唆されています。この研究は、保全的な視点において、対象の分類的・遺伝的な背景を明確にすることが非常に重要であることを改めて強調するものでしょう。
過去の生物の様相は、進化生物学や保全生物学において根幹的な情報です。過去を知るためには様々な方法が考えられますが、博物館の生物標本は、近過去の様相を直接的に知ることができる有力な手段となります。本研究では、日本における近代動物学・貝類学のパイオニアである岩川友太郎氏(1855-1933)によって収集された貝類から成る岩川コレクションのタニシ類を再検討し、