鈴村研究室は、2021年4月に設立された東京大学大学院・情報理工学系研究科・電子情報学専攻に所属する研究室であり、 鈴村豊太郎が主宰します。本研究室では、人工知能を支えるグラフニューラルネットワークや大規模グラフ解析、大規模言語モデル、生成AI、強化学習などの研究を軸として、民間企業とは様々な推薦アルゴリズムに関する研究を行っています。国際連携を通した応用研究の研究も行っています。
人工知能を支えるグラフニューラルネットワークに関する研究
研究テーマの一例: 深層学習を用いた超大規模な時系列グラフデータの高速解析手法・次世代システムにおけるスケーラブルなソフトウェア基盤の研究
グラフ(もしくはネットワークと呼ぶ)とは、ノード(頂点)と、ノード同士を接続するエッジ(枝)から構成されるデータ構造である。このグラフ構造を用いることによって、現実世界、デジタル空間、生体内、自然界におけるデータをより直感的に表現することができる。インターネット上におけるソーシャルネットワーク、E-Commerceにおけるユーザーの購買行動、商流を表すサプライチェーン、金融における決済ネットワーク、道路交通ネットワーク、脳科学における神経ネットワーク、タンパク質相互作用ネットワーク、DNAのシーケンス配列内の依存性ネットワーク、創薬におけるタンパク質立体構造ネットワーク、物質の分子構造、人の骨格ネットワーク、自動応答システムを支える知識ネットワークなど、応用先は枚挙に暇がない。
これらのグラフデータは、そのノード数が数百万から数十億に至るまで大規模であり、ノードやエッジ自身がラベルなどの属性を持っていたり、構造が時系列および空間的な意味を持ったりする。昨今、これらのグラフ構造に対して、グラフ内のノードやエッジ、部分グラフ、もしくはグラフ全体の属性を機械学習のラベルとみなして分類する手法の研究が盛んに行われている。特に、グラフニューラルネットワーク(GNN)は、ニューラルネットワークを用いて自動的にグラフ構造を学習し、教師付き機械学習、クラスタリングや異常検知などの教師なし学習に繋げる手法として、最も注目を浴びている領域である。
このグラフ構造を用いた機械学習の応用例として、金融決済データにおける不正パターンを検出する際に、人間が不正ラベルと判定したものを用いて、教師付き機械学習として扱うことができ、ノードの特性を学習し、ノードやエッジの不正を判定することができる。また、E-Commerceにおける商品・広告などの推薦アルゴリズムに用いることができる。前述したように、この他にも様々な応用が考えられる。
本研究室では、このグラフニューラルネットワークGNNを中心にして、実社会における様々な応用問題・データに対して、表現性の高い新たなGNNのモデル、そして実行効率の高いGNNに関する研究を行っていく。より具体的には、(1) 超巨大なグラフ構造に対して効率よく計算可能なGNNモデル、(2)対象となる応用問題に対して適切なグラフの粒度を自動的に発見する手法、(3) 複数の関係性データを統一的に扱う手法、(4) 深層強化学習との連携、(5) 敵対的生成ニューラルネットワークを用いたグラフ構造の生成、(6) 人工知能における公平性および説明性を保証するようなGNNモデル、(7) GNNの他問題への転移学習、などの研究を推進していく。
また、本研究室では、海外研究機関との共同研究、産業界との共同研究を積極的に進め、社会実装も見据え、研究を進めていく。