塗料を使用して塗装を行う際に注意すべきことを列挙していきます。
【塗装の基本的条件】
1-①塗料は塗装することではじめて塗膜になる
塗料は、塗装を行うことで塗膜になり、はじめて塗料としての役割を果たします。ここで塗装作業が不適当だと、塗料の性能を十分に発揮できず、設計通りの塗膜を形成することが出来ません。
1-②塗料の使用方法を誤らないこと
塗料の品質を良く調べ、使用方法を誤らないようにしましょう。
(1)使用するシンナーを間違えないようにしましょう。
(2)2液形ポリウレタン樹脂塗料のような多液形塗料を使用する場合には、各塗料の重量を計測し、混合比率を必ず守ることが重要です。
また、使用可能時間(ポットライフ)があるので、指定時間以内に使用することも重要です。
1-③素地調整は必ず入念に行うこと
定められた素地調整を行いましょう。具体的には、どのプライマーサフェーサーを使用し、何番のペーパーで研磨するか等です。また、素地調整後の面には素手で触らないようにしましょう。もし触ってしまった場合は、必ずシリコンオフで脱脂する作業が必要です。理由としては、皮脂などの汚れが付着すると、塗料の密着不良や、錆やふくれの原因となるためです。
1-④塗料の性状に適した塗装用具を使用すること
使用する塗料に適した塗装用具を選びましょう。また、塗装用具はいつでも使用できるよう、使用後は洗浄することは勿論、定期的に分解する等して整備をしておきましょう。
1-⑤塗料の沈殿、分離に注意~十分にかき混ぜること
使用の際は、塗料を十分にかき混ぜてから使用しましょう。長期間保存した塗料は、ケーキングや皮張り等の不良をおこしている可能性が高いため、アジテータカバーを使用してよく撹拌したり、かき混ぜ棒で直接撹拌したり、または撹拌機を使用して数十分撹拌するようにしましょう。※詳しくはこちらを参照
1-⑥一度に厚く塗らないこと
一度に厚く塗り過ぎると、
(1)塗料がたれることがあります
(2)塗膜の乾燥不良の原因になります。
(3)塗膜にしわ(ちぢみ)が発生することがあります。
その他、塗装時に気を付けたいことやトラブルはこちらにまとめてあります。
1-⑧塗装場所の環境
塗装場所の環境は、十分に明るいこと且つ均等に明るいことが好ましいです。理由としては、まず十分な明るさが確保されていないと、(作業が見えず)作業性が悪いこと。均等に明るくないと、塗装物の場所や角度によって色味が変わって見えるため、塗装品質の悪化を招くためです。
★最低でも500ルクス以上の明るさを確保すること
色を目で比較する場合は、JIS Z 8723「表面色の視覚比較方法」に規定してある通りです。
<照明条件>
原則として、自然昼光または標準イルミナントD65に近似した分光分布を持つ人工昼光(常用光源とも言います)のいずれかを使用します。自然昼光は北空からの拡散昼光を用います。この場合、建物の壁の色や樹木などからの反射光による影響を受けないようにする必要があります。
また、照度は1000ルクス~4000ルクスの間が望ましいとされていますが、白のような明るい色の場合は最低照度は500ルクスでも良いとされています。
1-⑨低温・多湿を避けること
気温は10~30℃、湿度は45~80%の範囲が良好とされていますが、塗料によっては塗装可能温度範囲、塗装禁止条件が異なります。製品説明書で確認を取る必要があります。
1-⑩その他の注意事項
<埃・塵に関して>
0.01mm(10μm)以上の埃や塵はブツの原因になります。
ブツ:塗膜中に混在する異物が突起状になったものをブツと言います。塗膜の平滑性を損なうので、自動車塗装ラインでは最も嫌われる不具合です。
詳しくはこちら
<通風に関して>
密閉された空間で塗装作業を行うことは、作業者の健康に多大な悪影響を及ぼすため絶対にNGですが、かといって通気の良すぎるところで塗装をするわけにはいきません。基準としては風速3.0~5.0m/秒以下を目安としましょう。
【塗装と気象条件】
2-①塗装に好ましい条件
気温:10~30℃
湿度:45~80%
ただし塗装方法・希釈材を調整することで、気温:5~35℃、湿度:80~85%以下の範囲でも塗装は可能
※厳寒・低温時には加温処理が必要
→厳寒・低温時は塗料の乾燥時間が大幅に伸びます。
→2液型の搬送硬化塗料では、反応が進まず硬化不良&塗膜の性能低下につながります。
<乾燥時間の目安と温度変化との相関性>
・非反応形の合成樹脂塗料の場合
25℃では12時間程度で乾燥しますが、5℃では40時間程度まで乾燥時間が延びることがあります。
・2液形の反応硬化形塗料の場合
25℃では6時間程度で乾燥しますが、5℃では38時間程度まで乾燥時間が延びることがあります。
→温度と乾燥時間には明確な相関性が見られます。低温時は塗装環境の温度を上げる等の工夫が必須になってきます。温度・湿度の管理は徹底しましょう。
2-②塗装を中止しなければならない気象条件
・雨天または降雨時
塗装ブースの中で、温度や湿度を厳密に管理できる状態でない限り、基本的に雨天または降雨時の塗装はオススメしません。
・塗装後2時間以内に降雨、降雪が予想されるとき
塗装ブースの中で、温度や湿度を厳密に管理できる状態でない限り、降雨・降雪が予想される日の塗装はオススメしません。
・気温5℃以下、相対湿度85%以上のとき
冬季等でこの条件下でどうしても塗装しなければならない時は、ヒーター等を使用し温度と相対湿度を調整するようにしてください。
・被塗装面に結露があるとき
被塗装面に結露が発生している場合、塗装後の表面に、同様に結露(水分)が付着し塗装品質を著しく損なうことが予想されます。結露が発生している時は
塗装を避けることをお勧めします。
・炎天下で被塗装面(特に鋼材)の温度が上昇しているとき
被塗装面の温度が上昇している状態で塗装を行うと、塗料の乾燥が異常に促進され、塗装の途中にも関わらず乾燥が進行し、塗装品質の悪化が懸念されます。
被塗装面の温度には常に気を配り、被塗装面が常温であることを確認してから塗装を行うようにしましょう。
・砂埃が多い時(風速5m/秒以上では砂埃が発生しがち)
風速5m/秒以上では砂埃が発生し、塗装面にゴミやブツが付着する可能性が高まります。ブース内等でホコリが混入しにくい環境で塗装することは勿論、ブースのフィルターを定期的に交換する等して、ブース内にフレッシュエアーが取り込めるように維持管理を徹底しましょう。