戦後日本の大学教育で重視されてきた「専門知」の修得は, 高度経済成長期にはその目的を曖昧なままにしても, 確かに効率的かつ有効に機能を発揮した。しかし, 欧米にキャッチ・アップした後の,現在に至る日本の停滞状況は,後に続く国々の高等教育の普及に伴って日本の立場が低下し続けてきたことに理由を求めることができるが, それだけではない。折に触れ各界の指導者たちからも, 教養教育の重要性が指摘されてきたところであるが,関係者が改めて議論して,教養教育の目指す方向を自ら見出す時期に来ていると言えよう。
私たちは, 大学課程の修了生が, 人文社会系 ・理工系を問わず, いずれかの「専門知」を修得する他に,その専門性を活かすため,「社会課題の解決」「持続可能で心豊かな社会の創造」,「善く生きること」など「総合知」の重要性を理解する「賢明な人」であろうとすることを目指すことが望ましいと考える。
そこで本討論会では,毎回, 最初に,それぞれの分野の専門家が, 「専門知による社会課題の解決」の限界を紹介することに加え,「社会の役に立ちたい」と願っている多くの参加者が,
①社会課題の“掘り起こし”能力(can): 「何ができるのか」:参画できる確信をもつ,
②社会のあるべき姿・理念(must): 「何をなすべきなのか」:進むべき目標を探究する,
③人間性の形成・正義感・信念(will): 「何を望みうるのか」:信念に基づき進み続ける
を自ら主体的に考える上で参考とするための議論を行う。これらに触れることによって,一人でも多くの参加者が,深刻化する様々な社会課題に「共通する構造」を解決する方向性を自ら見出すと共に,長期展望に基づいて「課題解決の方法論」を議論し具体化することによって, 「持続可能で心豊かな社会」の創造に貢献する可能性が膨らんでくることを期待するものである。
日程:2025 年 8 月 19 日(火)第 1 回から順次開催予定
形式:講演者が最初に 20-30 分間講演,その後,ディスカッサントも交えて討論
資料:「未来を考える 21 の論点~心豊かな社会をつくる総合知~」の冊子体の PDF ファイルから,毎回の講演内容を WEB で提供
参加:オンラインセミナー形式
参加費:無料
受付:Google Form より事前参加申し込み
対象者:大学生・大学院生(学び),若手教員(教育,研究)を主たる対象とするが,一般も含める。
主催:東北大学 工学研究科 工学系研究企画室
共催:公立大学法人 宮城大学
協力:科学者の卵養成講座
後援:株式会社 河北新報社
協賛:公益財団法人 仙台応用情報学研究振興財団
お問合わせ :
東北大学 工学研究科 研究推進課
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6
e-mail(研究推進係)eng-ken@grp.tohoku.ac.jp
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大学では、未来を拓く力を育むことを目的とした講義やプログラムが開講されている。しかし、その活用は十分とは言えない。その根源は、初等中等教育とは異なる「大学教育の意義」が十分に理解されておらず、大学教育で求められる「学びの転換」が実現していないことにある。この問題には教員側にも責任があるが、学生には、社会動向を踏まえて将来のキャリアを真剣に考え、そのために必要な学びを整理し、主体的に取り組む姿勢が求められる。就職活動では、コンピテンシーやコミュニケーション能力が重視される。理系学生には、論理的思考力や情報分析力などが基本的な能力として求められる。研究を続けることを希望する学生には、博士課程への進学を強く奨めたい。
キーワード: 学びの転換、現代的素養、未来を拓く力、キャリア教育、就職準備、博士課程進学
参考テキスト: 座小田 豊「心の豊かさを求めてー私たちの使命と倫理」
課外活動は自分でやりたいことをみつけ、そのコミュニティの中で自分の居場所・役割を得て、なりたい自分を実現していく活動である。挑戦により様々な失敗や人間関係の葛藤などの様々な試練を乗り越えコミュニティの活動目標や自分でたてた目標を達成する悦びを経験する。課外活動にどのような価値や課題があるかを考える。
キーワード: 主体性、承認欲求、スポーツ、コミュニティ、伝統、アイデンティティ、未知への憧れ、困難を乗り越える経験
現代日本では正規雇用者と非正規雇用者の間で賃金、社会保障、雇用の安定性などで大きな格差がある。この格差は労働市場の分断、人的資本蓄積機会の格差、ネガティブなラベリング、差別的社会意識によって維持されている。この格差を解消するためには、政府、企業、労働者、学生、大学がそれぞれ変化していく必要がある。
キーワード:非正規雇用、日本型雇用慣行、企業内身分制度、四重労働市場、人的資本、人的資本蓄積の格差、同一労働同一賃金、格差の正当化、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、ワークライフバランスの実現、公正な社会
現在、世界に大きな影響を与えている新自由主義は、競争を煽り、貧富の差は拡大するばかりで、真に豊かな生活をもたらす経済モデルを提供しているとは言えない。著者は、日本の政治経済を立て直すための有用な参照モデルとなるのは、ドイツ新自由主義(オルド自由主義)であると考えている。本章ではさらに、市場に依存しないコモンズの視点からもまた、新自由主義について批判的な検討を試みる。
キーワード:オルド(秩序)自由主義、規制緩和、コモンズ、私営化、新自由主義、民主主義
里山の豊かな生態系は多様な機能を有し、私たちの暮らしに必要なものやエネルギーの供給、環境調節、心の豊かさなどの多くの恩恵を与えてくれる。私たちは長年にわたり里山を保全・利用してきたが、社会情勢や産業構造の変化によって多くの里山が衰退している。長期的視点から里山の価値を見出し、里山と人とのつながり、里山での人と人とのつながりを新たに創成する必要がある。
ディスカッサント:須田 義人(宮城大学大学院食産業学研究科)
キーワード:環境倫理、持続性、生態系サービス、多面的機能、つながり、農林業、恵み、豊かさ
原子力は、二酸化炭素の排出を抑えたエネルギーの安定供給や医療への放射線の応用の観点から今後も安全を大前提に利用されることが考えられている。本章では、原子力の利用に伴い発生する放射性廃棄物の処理処分の課題を取り上げ、現段階の科学で100%結論が出せない問題に関して社会とともにどのように向き合うかを考える。
キーワード: 原子力、放射性廃棄物、処理処分、福島第一原子力発電所、人工バリア、天然バリア、地層処分、社会的合意形成
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界中で大きな被害をもたらした。グローバル化が進んだ現在の世界では、パンデミックのリスクはかつてないほどに高まっている。パンデミックの被害を軽減するためにはワクチンや治療薬の開発も必要だが、それだけでパンデミックの被害が全くなくなるわけではない。科学技術の限界も理解した上で、感染症に強い(レジリエントな)社会を構築していく必要がある。
キーワード: パンデミック、感染症、新型
大学運営は授業料の他に公的資金補助に支えられてきたが、国の財政が悪化した現在、社会は大学に何を期待しているのか、社会から敬愛される大学になるためには教育と研究は何を目指したら良いのかが、大きく問われている。本討論会ではそれらを整理し、大学における教育と研究の目指す方向を教員、学生、読者とともに改めて考える。
キーワード: 専門教育、研究指導、教養教育、人間性形成、博士課程進学、心豊かで持続可能な社会の創造、敬愛される大学
☆第 1 章 大学における教育と研究の意義は何か(金井 浩)
☆第 2 章 大学で何を学ぶか-調査を踏まえ伝えたいこと(服部徹太郎,風間 聡)
☆第 3 章 未来を拓く教養教育~不確実な時代の羅針盤(山内保典)
☆第 4 章 初等中等教育の現状と課題~情報化を考える(堀田龍也,長濱 澄)
第 1 章 新しい価値観に根差した持続可能社会の実現(吉岡敏明,齋藤優子,西山 徹)
第 2 章 里山での心豊かな暮らし(小倉振一郎)
☆第 3 章 これからの「食農教育」を考える(伊藤房雄)
第 4 章 「ふるさと」が問いかけるもの~食料・労働力・電力の供給地から共生共死する共同体へ~(尾崎彰宏)
第 1 章 感染症にレジリエントな社会の構築(押谷 仁)
第 2 章 原子力の利用と放射性廃棄物(新堀雄一)
第 3 章 日本の「モノつくり」復活への大学の責務(佐々木保正,森谷祐一)
☆第 4 章 研究の本質を突くアントレプレナーシップ(長坂徹也,池ノ上芳章)
☆第 5 章 イノベーションを育む土壌(秋田次郎)
第 1 章 新自由主義を超えて(細谷雄三)
第 2 章 正規雇用と非正規雇用の格差を乗り越える(佐藤嘉倫)
第 3 章 創未来インフラ(久田 真,鎌田 貢)
第 4 章 少子・高齢化の含意と科学的解明(吉田 浩)
第 5 章 少子高齢社会における社会保障の持続可能性(藤森研司)
☆第 6 章 デザイナーシップを発揮せよ(本江正茂)
☆第 7 章 なりたい自分を主体的に実現する「課外活動」(永富良一)
☆最終章 心の豊かさを求めて~私たちの使命・倫理(座小田豊)
東北大学工学研究科 研究推進課
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6
e-mail(研究推進係)eng-ken@grp.tohoku.ac.jp
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