麹菌界面活性タンパク質 RolA の界面上

での挙動に関する分子機構の研究

〇はじめに

 糸状菌(カビは多糖類、タンパク質、ポリエステルなどの生体高分子を加水分解する酵素を多種類生産することから、自然界の物質循環において分解者として重要な役割を果たしています 。酵素による固体高分子の加水分解は病原性糸状菌が宿主に感染する際に必須のプロセスであり、このプロセスには酵素とともに糸状菌から分泌される界面活性タンパク質が関与しています。私たちは、麹菌 Aspergillus oryzae が分泌する界面活性タンパク質 RolA に着目し、RolA の界面上での挙動に関する分子機構について研究しています。

〇界面活性タンパク質 RolA が固体表面上で形成する構造の形成機構の研究

 RolAは麹菌の分生子表面や固体表面、気体-液体の界面に吸着後、"rodlet"と呼ばれる棒状の構造の膜を形成します。この膜が分生子表面や菌糸表面を覆い、外的環境への防御、宿主や固体表面に吸着、宿主からの免疫応答回避など様々な機能を発揮しています。私たちはこの棒状構造膜がどのように形成されるのかを研究しています。

【関連文献】

Terauchi Y., et al., Biosci, Biotechnol, Biochem., 2019

〇界面活性タンパク質 RolA と固体高分子分解酵素 CutL1 間の相互作用機構の研究

 植物の葉の表面などの固体表面上に吸着した RolA は、葉の表面に存在する疎水性固体高分子(クチンなど)を分解する酵素である CutL1  を葉の表面にリクルートし、CutL1の固体高分子分解を促進します。私たちは、RolA-CutL1間の相互作用のメカニズムや、CutL1のRolA膜通過メカニズムの研究を行っています。

【関連文献】

Takahashi T., et al., Mol Microbiol, 2005, 2015

Tanaka T., et al., Appl Microbiol Biotechnol, 2017