こんにちは。我々は東京大学童貞学研究会です。
当会は、東京大学の大学院生によって運営されています。
「誰も取り残さない」フェミニズムの実現するための試みとして、トランスの問題を考えることが多い昨今ですが、同様にこれまで軽視されてきた童貞の問題を考える必要があるだろうという意識から本会は生まれました。
「童貞学」とは、我々が独自で考案し発信している体系です。童貞であることによって発生する問題を童貞問題と定義し、童貞史・童貞哲学・比較童貞学など多くの学問分野・地域に越境して研究を行っております。
童貞史とは:
社会学における男性性の議論を歴史に投射したアナール学派的な問題関心を持つ学問。長谷川まゆ帆らの「関係史」や比較文学の<恋愛論>にもつながる。例えば、日本においては、明治期における西洋ロマン主義的童貞存在とその恋愛観の流入によって生じた明治知識人の混乱が生んだ『平凡』(二葉亭四迷)や『三四郎』(夏目漱石)を童貞の「再発見」と位置付けることができる。再発見というのは、童貞は中世や近世の武家政権下では不可視化されていたが、平安時代には『源氏物語』の柏木など、童貞が存在していたためである。柳田邦夫の言うように、箸にも棒にも歴史があり、童貞にも歴史があるのである。
比較童貞学とは:
各国の童貞の自意識、社会的立場などを比較検証する社会学である。これは30代男性の10人に1人が童貞であるという、世界最高水準の童貞率を誇る日本において重要な問題関心である。欧米では現在4chanなどのネットコミュニティーを通じてもてない男のコミュニティ「マノスフェア」が誕生している。アメリカでは童貞によるテロが起き、フランスではミシェル・ウェルベックなど「非モテ」に着目した作家が人気を博している。これらは上野千鶴子をはじめとする第三派フェミニズムが童貞に対する社会的圧力を強化したことにも原因があるだろう。日本の童貞問題などはまだマシであり、北欧で童貞であることを告白すると小児性愛者なのかと疑われることすらあるという。また、日本の童貞は「自虐」として受けいられているため世界的に見ても特殊だという指摘もある。様々な著作、研究、統計などを用いて、各国の童貞の比較研究を行う。本研究は、今ただなかにある第四波フェミニズムが第三波の反省を取り入れるためにも用いることができるだろう。
童貞哲学とは:
童貞に関して、歴史や社会などの軸を入れず、存在論的に問う学問である。精神分析学や文化人類学にも及ぶ視座を持つ。例えば、本会会員の行った思索として、人間性や恋愛がポスト近代化したならば、童貞存在はいかに変化するのかという妄想から、現在の童貞存在の本質やその可能性に迫るというものがあった。これを援用すれば、現在の若い世代の性的退行などを哲学から捉えるなど実用が効く。ポストヒューマン的童貞はどのような存在でありうるか、ロージ・ブライドッティの「ポスト・ヒューマン」に倣って考えるならば、童貞は童貞を喪失するから童貞なのであり、存在論的に童貞喪失は童貞誕生に先行している。つまり、ポストヒューマン童貞は童貞であり童貞でない存在として生まれるのである。その童貞・非童貞共同体としての生命の集合体の切り離された一個人として童貞が発生するような世界がポストヒューマン童貞世界という事になる。そこでは童貞の意味が欠落し、人間は童貞を最終的に超越することになる。しかし、現状はそうではないため、童貞にポストモダンが訪れるのはまだ先の事だろう。しかし、少なくとも現在世界はその方向に向かっているのだろうか? 逆に、童貞と非童貞の分断は深まっていないか? という風に、発想を発展させることができる。また、ケアの倫理など、フェミニズム系の哲学も当然関係があるし、「下劣になればなるほど良い」というラカンの文章も童貞と結びつく。童貞に対する世間のまなざし(regard)や呼びかけ(appel)はフーコーやアルチュセールに開かれている。運動と結びつく場合、当然マルクスやデリダがその支柱になるだろう。童貞哲学は研究の実践性は低くなるが、童貞学の理論的実践のためには必要不可欠なのである。
上のような問題関心に興味を持っている方や、それ以外でも類似の題材に研究の可能性を感じている方はぜひお越しください。
本会の代表者がフランス語選択だったため、知識がフランスと人文知に偏りがちになっています。多くの地域や学問を勉強している方々の協力をいただきたいです。
研究会は男女関係なくメンバーを募集しています。言うまでもなく、会員は必ずしも童貞問題の当事者ではありません。
現時点では、会員が書いた文章をこのサイトに載せているだけです。将来的には会誌『童貞學研究年誌』を発行することを目標としています。
初めての方は当会のテーゼ記事「修正恋愛主義システム論」「22世紀の恋愛主義」や、研究書誌の関心のある本を読まれておくことを、お勧めします。
入会希望者はこちらまで連絡ください:doutei.ut@gmail.com ←質問なども、こちらにお寄せください。
現在、インカレです。
研究書誌のページを作成いたしましたので、よければこちらをご参照ください。