本研究では、非線形時系列データに対するモデリングにおいて、埋め込み構成、Radial Basis Function (RBF) モデル、システムノイズの大きさ、およびフリーラン挙動の関係について検討を行った。非線形時系列データのモデル評価においては、短期的な予測精度だけでなく、長期的な軌道再現性や統計的性質を適切に捉えることが重要である。この観点からより良い統計モデルの構築に着目した。
まず、適切な埋め込みを構成するため、太陽の黒点数データの埋め込みの時間遅れを答えとしてモデルを作成し、そのモデルに対して、自己相関関数による周期性の把握、Reduced Auto-Regressive (RAR) モデルを用いた線形的周期性の抽出、および実データの振る舞いの観察を組み合わせた埋め込みの時間遅れ選定手法を用い、非一様な埋め込みの候補を絞り込んだ。また、その妥当性を検証するために実際の太陽の黒点のデータに対しても同様の手法を用い、埋め込みの候補を絞り込んだ。さらに、その手法をレーザーデータに適用し、従来の一様埋め込みに比べて有効な埋め込みが得られることを示した。
次に、RBFモデルを用いた非線形時系列データの予測を行い、フリーランを通じてモデルの妥当性を評価した。その際、システムノイズの大きさがフリーラン挙動に与える影響を検討した。適切な大きさのシステムノイズを加えることで、軌道の発散や周期解への収束を抑え、統計的性質を良好に再現できることを確認した。さらに、Description Length (DL) が同程度であってもフリーラン挙動が大きく異なるモデルが存在することを示し、DLのみでは動的安定性を十分に評価できない可能性を指摘した。その要因として、RBFのパラメータのcenterおよびradiusによるアトラクタのカバー率に着目し、エノン写像を用いた解析から、アトラクタをカバーしていないRBFがフリーラン不安定性を引き起こす可能性を検証したが、フリーランの挙動の改善には繋がらなかった。
以上より、本研究は、非線形時系列モデリングにおいて、埋め込みの候補の絞り込み、システムノイズ設定、およびフリーラン挙動を含めた統合的評価の重要性を示した。