本研究では、観測ノイズが大きい非線形時系列データからパラメータを正確に推定するための手法を検討した。
非線形時系列データのパラメータ推定は、気象予測や経済モデルなど、さまざまな分野で必要とされている。例えば、気象予測では、風速や気温、湿度などのデータを基に、将来の天気を予測するモデルが使用される。このようなモデルは、地球全体の大気の流れや温度変化を再現するため、非常に複雑で非線形な方程式を含む。しかし、観測データには外部環境の影響により必ず観測ノイズが含まれている。このような観測ノイズの存在により、モデルのパラメータを正確に推定することが難しくなる。観測ノイズを含むデータでは、モデルの出力と実際のデータの間にズレが生じ、結果として予測精度が低下する。そのため、観測ノイズの影響を最小限に抑えながら正確にモデルのパラメータを推定する方法が重要である。
先行研究では、観測ノイズを含む非線形モデル(エノン写像および池田写像)を対象に、最小二乗法によるパラメータ推定と勾配降下法による状態推定を組み合わせた手法を用いてパラメータ推定が行われた。この手法は、パラメータ推定と状態推定を交互に繰り返すことで、パラメータ推定の精度向上を目指している。先行研究の結果、観測ノイズが20%や40%の場合には、比較的正確にパラメータを推定することができた。しかし、10%という非常に大きな観測ノイズが含まれる場合には、パラメータを正確に推定することが難しくなるという課題があった。
この課題を解決するために、本研究では最小二乗法を改良した手法によるパラメータ推定と、勾配降下法を使った状態推定を組み合わせた新しい手法を提案した。提案手法を先行研究で扱ったモデルに適用した結果、従来の手法では正確に推定できなかった大きな観測ノイズが含まれる条件でも、高精度なパラメータ推定が可能であることが確認された。