物理現象の多くは、時間変化に伴い、様々な変動をしている。そのような変動は、何らかのシステムに起因していると考えられる。さらに、そのシステムの状態は常に同じとは限らず。変化することも考慮しなければならない。従って、そのシステムの状態変化を検知するということは、物理現象を理解する上で重要な役割を果たすと考えられる。
物理現象の中にはその基本原理が十分に分かっていないため、数式で表すことが難しいものが多くあるが、多くの場合、現象の振る舞いを時系列データとして記録出来る。本研究ではこのような状況を想定し、時系列データのみを用いて、システムの状態変化を検出することを目的とした。
現在、時系列データを用いてデータの状態変化を変化点として検出する手法として、“局所定常 Auto-Regressive (AR)モデル”が提案されており、様々なデータに適用されている。一方で、この既存の手法には区間設定方法の問題、ARモデルの問題の2点から、時系列データの正確な変化点の検出が困難である場合があると考えられる。
そのため本研究では、上述する問題を解決する新たな分析手法を提案した。提案手法では、新たな区間設定方法を用いることで、より速やかに正確な変化点の検出を行うことが出来ると考えられる。加えて、より洗練されたARモデルであるReduced AR~(RAR)モデルを導入することで、時系列データが持つ周期性をより正確に反映したモデリングを行うことが出来る。まずはシミュレーションデータに対して、この手法が有効であることを確認し、重力波観測データやプラズマデータといった様々な実データに対して変化点検出を試みた。その結果、提案した手法を用いることで、高い精度での変化点検出や定常区間の特定が可能であることが確認できた。一方で、実データへ適用した際に、シミュレーションデータにおける検証では見つからなかった本手法における変化点検出の新たな課題を見出すことができた。