ハドロンとは、素粒子・クォークが集まってできた複合粒子であり、その代表例として原子核の構成子である核子(陽子・中性子)や、湯川秀樹博士により予言されたパイ中間子があります。さらに、ハドロンの一種である核子が集まってできた複合粒子が原子核であり、原子核ハドロン物理学ではこのような多粒子系が作る構造や現象を探ることで、物質の成り立ちを明らかにする研究が行われています。特に近年、従来のハドロン描像ではその性質を説明できない「エキゾチック状態」が加速器実験より数多く報告され、世界中で活発な研究が行われていますが、その構造解明には至っていません。本研究室では、このような多粒子系が生み出す多彩なハドロン・原子核の構造や現象の謎を、国内外の他の理論グループや実験グループと協力しながら研究を進めていきます。
通常のハドロンは3クォークからなるバリオンと、クォーク-反クォーク対からなる中間子(メソン)で分類されてきました。しかし、これら描像では説明ができないハドロンが加速器実験で報告され、エキゾチックハドロンと呼ばれています。これまでの研究から、4つや5つのクォークからなる多クォーク状態であると考えられていますが、その空間的構造として、多クォークがコンパクトにまとまった状態(コンパクト状態)や、原子核のような複数ハドロンの複合状態(ハドロン分子)などが考えられ、活発な議論が行われています。ここでは、クォークやハドロンの少数多体問題を数値解析することで、その性質の解明や新しいエキゾチック状態の予言を行っています。
エキゾチック状態や原子核を含むクォーク・ハドロン多体系の多彩な現象を理解する上で、構成粒子間に働く相互作用の解明は必要不可欠です。しかし、クォークの動力学を記述する基礎理論・量子色力学(QCD)は低エネルギー領域で非摂動的であるため解析が困難であり、また、多くのハドロンは不安定であるため、散乱実験が難しく、相互作用に関する情報は非常に限られています。ここでは、QCDの持つ対称性に着目した有効模型や、クォークの動力学を現象論的に記述する構成クォーク模型を用いたアプローチにより、ハドロン間相互作用がどのような機構(例えば、メソン交換力やクォーク交換力など)により記述されるか、それはハドロンの種類や量子数の違いによりどう変わってくるかなどを明らかにしていきます。また、このことは、この宇宙の物質の素となっている核子や原子核に働く相互作用の理解にも新たな側面を与えると期待されます。