署名活動についての説明

東京工業大学ではダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実現を目指し、入学試験の選別において女子枠を導入することが大学当局から発表されました。

東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の「女子枠」を導入 ダイバーシティ&インクルージョンの推進を目指して2024年度入試から順次実施 | 東工大ニュース | 東京工業大学


私たちは女子枠の導入の撤回または再検討を求めます。

概要

女子枠の導入に対する主要な反対意見の概要と、それに対する大学当局からの返答(11/15の学生向け説明会)、そして私たちの再反論の概要は以下のようになっています。

1.性差による差別や学生の質の低下の懸念

主要な反対意見:

そもそも女子枠を設けることは性差による差別であり、実質的に入学する学生の質の低下を招くのではないか?


大学当局からの返答:

「日本の大学はMIT等よりもSTEMの女子率が低く、世界と比べて2、3周遅れている!」。多様な評価軸により受け入れるため質は下がらない


再反論:
差別であることを否定していない。一般入試でこれまで不合格だった層を性差によって掬い上げるのは本当に質の低下とは呼ばないのか?


2.女子枠入学の女子学生への差別や誹謗中傷

主要な反対意見:

女子枠で入学した女子学生が差別誹謗中傷を受ける(実際に制度について差別的な投稿が見られる)ことについてはどう対処するのか?


大学当局からの返答:

大学当局も把握し「残念に思っている」一方で具体的な対策などは言及せず


再反論:
対策せずに導入するのはD&Iの実現からむしろ遠のくのでは?


3.強硬な女子枠の導入を行う必要性

主要な反対意見:

一般枠を大幅に削ってでも無理矢理女子枠を導入するのは何故か? 入試方式の変更以外で女子をより多く入学させる代替案は考えないのか?


大学当局からの返答:
現状の大学での取り組みを列挙し、「これだけでは世界に取り残される」。世界から遅れている日本の意識を改革するために行う


再反論:
何故世界に取り残されているのか再考する必要があるのでは? 大学を出たその先が見せられていなければ、むしろ女性たちの肩身が狭いまま社会に放り出すことになるのでは?


4.LGBTQ+などへの配慮が欠けている

主要な反対意見:

ダイバーシティ(多様性)を重視するのであれば、LGBTQ+などへの配慮をするべきではないのか?


大学当局からの返答:
配慮の必要性は感じているが、
明確な方針は定まっていない


再反論:
D&Iを掲げるのであれば、そのスローガンだけでなく具体的な方策を打ち出すべきでは?


5.女性活躍社会への貢献の展望を問う必要性

主要な反対意見:

面接において「女性活躍社会への貢献の展望」を問う必要性があるのか? そもそもそれは女子学生へ要求すべきことなのか?


大学当局からの返答:

女性活躍社会への貢献」を担う女子学生を獲得するための試験制度であるので、これについての展望を問うことは適切である


再反論:

女性活躍社会への貢献」は女子学生だけが担うべき責務ではないのでは?


1.「性差による差別や学生の質の低下の懸念」について

まず、女子枠により、これまでは実力が足りず合格出来なかった女子学生を、入試制度の変更によって合格することになります。これにより、既存の入試では合格していた、本来なら女子枠で合格した女子学生よりも一般入試では高い点数を取れる、能力のある学生が合格できないことになります。これにより、学生の質が低下すると考えられます。実際に、例年は一般入試での合格率は全学院で男子より女子が低い傾向にあります(統計情報はこちら


大学側はこれに対して、世界と日本の大学のSTEM(理系分野)への進学者の男女比を比較して「日本は世界と比べて2周、3周も遅れている、このままではさらに周回遅れになる」と主張し、差別に対しては正面からの議論を避けました。また、「総合型選抜では実力の伴わないような人間は受からないようになっているし様々な評価軸から評価し合否を決める、そのため学生の質が下がることはない」と主張しています。


大学側の差別について正面からの議論を避け、論点をすり替えようとする姿勢は非常に遺憾です。入試についての言及も、現状一般入試で実力を確かめていることや、女子にのみその尺度を適用することと齟齬が生じています。


2.「女子枠入学の女子学生への差別や誹謗中傷」について


先ほど述べたように、性差を用いた入学選抜方法は差別的であり、入学した学生間、男女間での軋轢や差別が発生する恐れがあります(既にSNS上では女子枠導入に関連して差別的な発言が何件も発生しており、それを大学当局も認識しています)。


これに対して 大学当局は「非常に残念でなりません」とは述べた一方で、対策などについては一切説明がありませんでした。


このまま推し進めた際には、必ず何らかの弊害、差別が起きるにも関わらず、現在のように認識しても放置する可能性を考えると、このまま女子枠を実施するのは東工大全体に良い影響以上に悪影響が出る可能性が高いと考えます。



3.「強硬な女子枠の導入を行う必要性」について


女子枠導入にあたっては、既存の総合型選抜や一般入試の枠を削減し,定員1028人中143人を女子枠に充てることで、全学院入学者における女性の割合を20%超に引き上げる予定です。女子の割合を増やしたいのであれば他にも方法は幾らでもあるはずです。そのはずなのに、入学試験の形式を変更して無理矢理にでも数を増やそうとするのはいかがなものでしょうか。


これに対して大学当局は、1.で述べたときと同様に世界の大学との差を明示しつつ、今までに東工大が行ってきた施策を列挙し、「これだけでは足りないから女子枠を導入する」と主張しています。


導入する理由の一つとして、OECD各国の中でSTEM(理工系の学問領域)へ進学する男女の割合は日本が1番アンバランスだという事実を挙げていますが、STEMの女子率が他国より低い原因は、果たして本当に大学にあるのでしょうか? そして大学が女子枠を導入し女子率を高めたとして、キャリアプランの充実など大学を出たその先を作っていかなければD&Iの実現は見えてこないのではないでしょうか?


4.「LGBTQ+などへの配慮が欠けている」について

世界はもちろん、日本国内にも様々なLGBTQ+の方々がいらっしゃいます。今回大学当局はスローガンとしてダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を掲げていますが、その一方でこれらの方々に対する配慮は全くありません。
大学当局の回答でも、配慮の必要性は感じているが具体的な対応の予定はないとのことでした。


D&Iの実現を目指すと謳いながらも、その実多様性に全く配慮することのない杜撰な姿勢は許されるべきことではありません。


5.「女性活躍社会への貢献の展望を問う必要性」について

一部の学院の女子枠の面接では「女性活躍社会への貢献の展望」を述べることが求められます。 この点に関して2つ疑問点があります。

1つ目は、総合問題の一部である女性活躍社会に貢献するために本学で学びたいことを要項に含めた目的と日本を先導する理工系大学として学生を選抜する目的が合致しないのではないかという点です。

本学の目標としている日本を先導する理工人である研究者や技術者の目標は女性、男性といった性別に関わらず、皆が協働し、科学を発展させていくことであると思っています。そのため、今後の日本を先導していく女性を女子枠で選抜するのでしたら、自身がどのような研究・技術に魅力を感じ、研究者・技術者になりたいと思ったのかという動機の方が重要であるはずです。

2つ目は同要項の記載が女子枠のみに課されている点です。

大学当局からの返答でも、「女子枠は女性活躍社会への貢献を担う女子学生を獲得するために設置している」とのことでした。

女性活躍社会への貢献は女性男性という性別によって区別されるものではないはずです。そのため、女子枠として選抜する場合、女性活躍社会に貢献するために本学で学びたいことを要項に含めることに違和感があります。


まとめ

上記等の理由から、私たちは東京工業大学の入学試験、総合型選抜における、現体制での女子枠の導入の撤回または再検討を求めます。

この署名活動は、女子を差別する訳でも、男子を優遇する訳でもありません

また、アファーマティブアクション、ポジティブアクション自体に反対するわけでもありません

現在の一般入試で男女の区別なく学力順に合格者が決められている、機会が平等に与えられている現状を壊し、無理矢理女子率を上昇させてしまおうという取り組みを止めたいのです。

現在、名古屋工業大学、富山大学工学部などで同様の取り組みが行われようとしています。男女の人数を合わせようとして逆に男女平等を崩しているのは本末転倒ではないでしょうか?

東工大の学生の方でも、そうでない方でも是非、この署名に興味を持って頂ける方には拡散し、賛同頂ける方には署名して頂きたいです。