中世闇落ちRTS『The Valiant』は噛めば噛むほど味の出る歯ごたえ抜群のRTS―物語だけでも楽しい

『The Valiant』は、中世ヨーロッパを舞台としたリアルタイムストラテジー(RTS)だ。開発は、『サドン ストライク 4』などを手掛けたハンガリーのゲームスタジオKITE Gamesが担う。国内ではTHQ Nordic JapanよりSteam/PS5/Xbox Series X|S向けにリリース。Steamは2022年10月に発売され、2023年7月11日にPS5/Xbox Series X|Sが発売となる。

本作のゲームプレイは、主に4つ用意されている。ひとつが物語を追っていく「キャンペーンモード」だ。クリアまでに必要な時間は20時間前後であり、しっかりとしたカットシーンが用意され、袂を分かった2人の関係と、個性豊かなキャラクターたちが表現されている。


あとは、AIと陣取り合戦を楽しめる「衝突」や、プレイヤー同士のPvP「コンペティティブ」、フレンドと協力して最大3人でプレイする「最強の戦士」と、いろいろな遊び方が用意されている。


https://youtu.be/HEqGo7qrbD0


本稿では、キャンペーンモードのプレイフィールを中心にお届けする。

興味そそられる舞台と人物設定

本作は13世紀のヨーロッパが主な舞台となる。テンプル騎士団の騎士、セオドリッヒとウルリッヒは信頼関係を持ち共に戦いに身を投じる仲間であったが、ある戦いのさなか、偶然にも遺物の欠片を発見する。この遺物に魅入られたウルリッヒは遺物の謎を明かそうとするが、セオドリッヒはそれに反対し、二人の友情に亀裂が入る。

その後、セオドリッヒの元に学者マルコムが現れ、ウルリッヒが持つ遺物は完成させると世界に災いをもたらすものであると話す。かつての同胞であったウルリッヒを止めるべく、セオドリッヒが旅立つ──。これが物語の導入だ。


簡単に述べると、本作の物語は「闇落ちした昔の友達を止めるために旅に出る」というもの。その道中では、雪山に出現する謎に満ちた生物や、人間を眠らせてしまう“呪い”をかけてくる部族、遺物の謎を秘めた古代遺跡に巣くう野蛮人といったさまざまな敵対勢力が存在する。


これらと戦いながら、そしてそれらと戦う者たちを仲間に引き入れながら、セオドリッヒを導くのがプレイヤーの役目である。道中で出会う仲間はユニットとしてストーリーの進行と共に増えていくことになる。

本作を一通りプレイすると、物語に力が入っていることがよくわかる。ミッションの前後にはカットシーンが用意され、しっかりとその土地の背景や目的などが表現されている。キャラクターも個性の強い者が多く、例えば豪快な性格の戦士であるラインハルトは、ややナルシスト気味の騎士ガスコインと意見が合わないなど、しっかりと愛着を持つことができるのが大きな特徴だ。

また、中世のヨーロッパが舞台であり、十字軍やテンプル騎士団といった史実に基づく設定ではあるものの、物語の中心にある古代の遺物は摩訶不思議な力を持っているほか、雪山では謎の怪物のような敵が出現するなど、全体的にはファンタジックなものになっている。なお、古代の遺物の謎に迫るにつれて、一定時間無敵になるなど、その力を行使して戦うこともできる。

骨太で噛み応えのある難易度

本作のシステムはベーシックなRTSであり、ユニットには「不屈の精神」「体力」「活力」の3つのゲージが設けられている。不屈の精神(白いゲージ)はいわばシールドであり、削られても時間経過で回復する。体力(青いゲージ)は「不屈の精神」が完全に削られたあとに攻撃を受けると減っていくが、こちらは時間経過で回復することはない。フィールドに設けられた野営地などで回復することはできるが、戦闘が連続する場合はこの体力が削られないことが鍵となる。


「活力」(ピンクのゲージ)はアビリティを放つために必要な値であり、コストを必要としない通常攻撃に加え特別なアクションをする際に消費する。時間経過で回復はするが、戦いのなかでアクションを連続することはできない点に注意したい。

この3つの値に気を配りながらプレイヤーは敵の殲滅や敵野営地や陣地の占拠をしていくのが基本的なゲームプレイとなっている。


ユニットにはヒーローとモブ(便宜上こう呼ぶ)の二種類あり、ヒーローは固有のスキルなどを持っている。上の画像でいうと、画面左下のマップ表示の右側に5つ並んでいるユニットリストのうち、左2つがヒーローユニットで右の3つはモブユニットだ。基本的にヒーロー全員が倒れるとゲームオーバーだが、モブは倒れても野営地とコストを消費して再び作り出すことができる(そこにコストと野営地があれば、だが)。


モブユニットには複数の種類があり、前衛が得意な「盾持ち部隊」や、遠距離で敵にダメージを与える「弓兵隊」「石弓兵隊」、移動が早く敵に大きなダメージを与える「騎馬隊」など、物語を進めることでその種類は増えていく。

それぞれに敵のユニットの種類に対する得意・不得意があるため、バランス良く選択することが求められる。これらのユニットをどのように操るかが本作の肝だ。


例えば、敵が複数の方向から来ているシーンでは、後衛にいる弓兵隊が狙われやすい。弓兵隊の位置を変えたり、敵を誘導する「挑発」を持った「斧兵隊」を配備して弓兵隊を守ったりと、考え方によって対処方法はいくつもあり、これを考えるのが楽しい。


「敵が3方向から来たらどうしよう」「ここのエリアを明け渡したら不利になるのでは?」「敵の遠距離攻撃をまず倒そう」など、ひとつのミッションをこなすなかで考えることは無数に湧き出てくる。

RTSのプレイ経験はあれどそこまで得意ではない……というプレイヤーにとって、本作はやや難しいように感じるかもしれない。難易度はイージー、ノーマル、ハードが用意されているが、ノーマルでも敵は堅く、気を抜くと味方のユニットはあっという間に倒れてしまうので、難しく感じてしまうかもしれない。


それゆえに、考え抜いた先で思いついた戦略がピタリとハマった時の爽快感はひとしおだ。イージーでも物語後半で苦戦する人でも考えることの楽しさがどんどん増していき、クリア時の達成感は何物にも代えがたい。

特にRTSの真骨頂である敵と複数の陣地を奪い合う場面は白熱する。どの拠点にどのユニットを配置するのか、どこを前線とするのか、どうすれば敵の包囲網を突破できるのかなど、脳みその使用率が上がっていく様は心地よい忙しさがある。

キャラクターの成長と装備

物語の道中では装備を入手することができる。大きな優劣はないが、特定のスキルやゲージを強化するものなどが用意されている。


また、ミッションクリアで得られる経験値でレベルアップするとスキルを開放することが可能。3つのスキルラインが用意されていて、攻撃特化や防衛特化、味方支援への特化といった、プレイヤーのスタイルに合わせたキャラクター育成ができる。なおスキルポイントはいつでもノーコストで振り直しができるのも嬉しい。


ここまで述べてきた通り、歯ごたえのある難易度のなかで複数のユニットを操る心地よい忙しさによって、本作は物語を楽しむことを目的としても、良い意味でカロリーを消費するRTSと言える。歯ごたえのあるゲームを遊びたいRTSファンや、ファンタジックな中世の物語を楽しみたいといったユーザーにおすすめできる作品だ。初心者ならクリアまでに20時間以上かかると思うので、たっぷり楽しめると言って良いだろう。