研究紹介
研究紹介
撮像診断装置の進化により、1回の撮影で大量の画像データを短時間に取得できるようになりました。しかし画像枚数の増加により、診断を行う医師の負担は年々増しており、それに伴う診断精度の低下も懸念されています。
こうした課題に対し、医療AIの中核技術の一つであるコンピュータ支援診断技術(Computer Aided Diagnosis, Computer Aided Detection : CAD)の重要性が高まっています。CADは、コンピュータによって病変部やその疑いのある領域を自動で検出したり、病変の大きさや良悪性の判定を支援する解析を行う技術です。医師はCADの出力結果を“第2の意見”として活用することで、読影負荷の軽減や診断精度の向上が期待されます。
当研究室では、この医療AI・CAD技術の研究開発を精力的に進めており、画像診断の質の向上と医療現場の支援を目指しています。
肺がんは日本人男性の死因の第一位となっており、早期発見・早期治療が求められています。CTやPET/CTは肺がんの早期発見に有効で、健康診断でも利用されるようになりましたが、1回の撮影で大量の画像が出力されるため、診断する医師の負担が非常に高くなっています。当研究室では、肺がんの診断や治療を支援するための技術を開発しています。
各種医用画像を対象とした診断レポートの自動生成
画像から異常部位を検出するだけでなく、診断に役立つ文章(診断レポート)を自動生成する技術の研究も進めています。当研究室では、胸部X線画像、胸部CT画像、さらに肺細胞診画像など、異なる種類の医用画像を対象とし、それぞれに適した診断レポートの生成モデルの開発に取り組んでいます。これにより、放射線科医や細胞検査士の負担軽減に加え、診断の標準化や見落とし防止にも貢献することを目指しています。
病理(細胞診)画像からの診断レポート生成
PET/CT画像を用いた肺結節検出手法
CT画像から得られる形態情報とPET画像から得られる代謝(機能)情報を併用して肺結節を自動検出する手法を開発しています。ディープラーニングを取り入れることによって飛躍的に検出性能が向上しました。
PET/CT画像を用いた肺結節の良悪性鑑別
肺結節が発見された後、必要に応じて良悪性を鑑別するための肺生検が行われます。しかし生検は非常に身体的負担の高い検査です。そこで、PET/CT画像と機械学習技術を用いて、画像診断の段階で良悪性鑑別が行えるシステムを開発しています。
予後予測
一生のうちに2~3人に1人ががんと診断される時代になっています。がんが身近なもとなるにつれ、自分の余命に関心を持つ人が多くいます。がん患者は今後も増加すると予想されるため、ますます余命に関心を持つ人が増加すると考えられます。
そこで当研究室では、肺がん患者のCT画像を利用して予後予測を行う手法の開発を行っています。人工知能技術の一種であるディープラーニング技術や機械学習法を用いることで高い予測精度が得られています。
肺結節・肺がんの疑似CT画像生成
近年、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる、人工知能による精巧な画像生成技術が注目を集めています。当研究室では、GANや拡散モデルを利用し、肺結節・肺がんの疑似CT画像の生成に関する研究を行っています。生成した画像を画像分類等のタスクに利用することにより、CADシステムの性能をさらに高めることが可能になっています。
胃がんは、日本人男性の死因第二位・女性の死因四位となっており、早期発見・早期治療が求められています。検診では内視鏡検査が広く行われていますが、医師は内視鏡を操作しながら病変をくまなく探す必要があり見落としが懸念されます。当研究室では、ディープラーニングを用いて内視鏡画像から胃がんを自動検出するシステムを開発しています。
疾患を確定する病理診断では大量の標本・細胞を観察する必要があり、スクリーナーや病理医の負担が高いことが課題となっています。そこで、病理画像をディープラーニングを用いて解析し、良悪性や癌組織型の自動分類を行う研究を行っています。
循環器疾患は世界全体の死因の約3割を占め、循環器の治療・診断精度の向上が望まれています。当研究室では循環器疾患の中でも心筋梗塞に注目し、心筋梗塞患者の診断および治療支援技術の開発を行っています。
超音波動画像による心筋梗塞の自動検出
超音波検査はエックス線による被ばくの影響もなく、簡便に検査できることから循環器疾患の診断にも広く用いられています。しかし、装置の操作を行いながら動画像による診断を行う必要があり、術者による診断精度のばらつきが問題となっています。そこで当研究室では、超音波動画像を2つのディープラーニング(CNN・LSTM)を用いて心筋梗塞を自動検出する検討を行っています。
心電図波形を用いた患者予後(死亡)の予測
重度の心筋梗塞患者は循環器専門の集中治療室(CCU)にてケアが行われます。患者が重篤な状態になることが予測できれば、さらに綿密な治療や観察が行えます。そこで当研究室ではディープラーニング技術の一つであるCNNを用いて心電図波形から患者の予後(短期死亡の有無)を予測する研究を行なっています。
日本人女性の乳がん罹患率は11人に1人であり、死亡率は年々増加傾向にあるため早期発見・早期治療が望まれています。当研究室ではマンモグラフィ画像中の乳腺構造の特徴を用いて、構築の乱れを自動検出する手法の開発(図1)や、腫瘤や石灰化病変の良悪性鑑別手法の開発(図2)に取り組んでいます。
図1構築の乱れの自動検出
図2 病変の良悪性鑑別手法
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名城大学 情報工学部 情報工学科 寺本研究室
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