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集中講義「開放量子多体系の基礎理論」

2023年9月11〜13日 大阪公立大学

概要:

量子系が環境と相互作用することによって生じる散逸の効果を理論的に正しく記述することは基礎・応用のどちらの面からも重要な問題である。散逸は量子系のコヒーレンスを破壊する主要因となるため、量子計算機を含む多くの量子デバイスの応用にとって邪魔な存在であるが、一方、散逸によるデコヒーレンスと量子系内部の相互作用によるコヒーレンスの生成との間の競合によって興味深い物理が現れることもわかってきた。さらに、冷却原子気体を用いた実験では、量子多体系に制御性の高い散逸を導入することが可能となってきており、散逸の存在をむしろポジティブに捉えて量子系の制御に積極的に活用しようという方向性の研究も進んできている。


本講義では、このような開放量子系の物理の発展の土台となる基礎的な理論手法を一から解説する。従来の開放量子系の理論では、多くの場合、少数自由度の量子系に環境が結合している状況が想定されてきた。本講義でもそのような標準的な設定での基礎理論の解説に多くの時間を割くが、上記のような今後の発展も踏まえて、大自由度の量子多体系が環境と結合した開放量子多体系を扱う方法まで話を進めたいと考えている。


本講義では量子力学、平衡統計力学、線形代数についての標準的知識を仮定するが、開放系の予備知識は要求せず全て基礎から解説する。

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集中講義「開放系の量子ダイナミクスの基礎」

2021年8月18日〜20日 online (zoom)

講義ノートはこちらです。

8/18(水)  10:00-12:00    13:30-15:30

8/19(木)  10:00-12:00    13:30-14:30

8/20(金)  10:00-12:00    13:30-14:30  セミナー15:00-16:30

概要:

開放量子系の緩和ダイナミクスを記述する一般化ランジュバン方程式・量子マスター方程式の基礎を解説し、開放量子多体系の最近の研究の進展を紹介する。

目次:

1. 孤立量子系から開放量子系へ

孤立量子系の熱化、典型性、固有状態熱化仮説、開放系の記述(縮約密度行列、完全正値力学的半群)

2. 古典・量子Brown運動

Zwanzigモデル、散逸とノイズ、Caldeira-Leggettモデル、熱浴の分類(Ohmic, sub-Ohmic, super-Ohmic)、散逸下での量子トンネリング

3. Markov量子マスター方程式

Caldeira-Leggett量子マスター方程式(量子Brown運動)、singular coupling limit、弱結合量子マスター方程式(量子光学:Redfield, Lindblad)、系と熱浴の自然な相関、完全正値性についての注意、連続測定下のダイナミクス

4. 開放量子多体系

非平衡開放系におけるLindblad方程式の導出、非平衡開放系の熱化、平均場方程式

5. 周期駆動開放系

高周波数展開、Floquet-Gibbs状態とその適用条件

Lecture "Introduction to some basic notions of modern machine learning"
SQP2021 (link)

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