高倉研究室では、持久的競技パフォーマンスを下支えし、代謝性疾患の予防・改善に関わる骨格筋有酸素性代謝能力を効果的に向上させるトレーニングプログラムを探究しています。ここうでいう「効果的」とは、競技力向上を目指す場合であれば、トレーニングによって得られる効果をより大きくするトレーニング方法(=競技パフォーマンスがより向上する)を考えること、健康増進を目指す場合であれば、身体的負担をなるべく少なくしながら、目的とする運動効果を獲得する運動プログラムを考えることを指します。そのため、トレーニングの構成因子(運動時間・強度、トレーニング期間、トレーニング様式)を変えたり、トレーニング効果を修飾すると考えられる因子(トレーニングのタイミング、低酸素環境の有無、栄養摂取の違い、炎症性サイトカインとの関わり、抗酸化物質の有無など)をトレーニングプログラムに組み込んだりしながら、様々な運動トレーニングプログラムの効果やそのメカニズムを生化学・分子生物学観点から検証しています。
骨格筋有酸素性代謝能力を支える要因を①細胞外からの酸素供給能力、②細胞内での酸素運搬能力、③細胞内での酸素利用能力の3要因に大別し、それぞれの要因に対する低酸素暴露および低酸素トレーニングの影響を分子レベルで検討しています。これらの3要因がより顕著に応答、適応する低酸素環境を用いたトレーニングプログラムの構築を目指しています。
肥満は単なる「結果」ではなく、そこから派生して疾患の原因となるため、生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防、治療する上で、肥満によって惹起される身体の環境変化( cf. 炎症性サイトカイン濃度の増加)を検証し、その改善策に取り組むことは重要です。そこで、肥満ラットを用いて抗炎症・抗酸化物質(メラトニン)の投与が、炎症性サイトカイン濃度の抑制を通じて運動トレーニングによるミトコンドリア生合成の促進を助長するかを検討しています。
運動時間と運動強度の違いが骨格筋の適応に及ぼす影響について検証しています。例え、運動時間が短いとしても強度が高ければ、有酸素能力の向上やミトコンドリア生合成が促進されることが知られていますが、いわゆる低〜中強度で長時間継続するような持久的トレーニングによる適応との差異などは存在するのかなどに着目しています。
・時計遺伝子の発現リズムに基づいた運動トレーニングが骨格筋有酸素性代謝能力に及ぼす影響について
・身体活動水準の変化が筋収縮中の筋細胞内酸素運搬機序について