概要
3年次の科目である計量経済分析において,主としてミクロデータを用いた統計学,計量経済学のトピックを扱う(一部(マクロ)時系列分析,simulationを含む).具体的には,個人,家計,企業といった経済単位を対象とした統計・計量の基礎的な理論と手法を学ぶ.特に相関と因果を識別するための実証分析の考え方について説明し,実際の社会事象や国などの政策を対象に,因果効果を識別したうえで,それらの影響をどのように分析しているかについて習得することが主眼となる.実社会との接点を捉えるため,事例を交えつつ講義を行う予定.
到達目標
分析の目的がどのような統計・計量分析のためのモデルやデータと関連しているのかを,まずは直観的に理解することがのぞましい.相関と因果を識別したうえで,分析結果の解釈や実際の分析において検討すべき点について身につけること.
履修上の注意
前提となる数学,確率論,統計・計量分析の基礎的な内容を理解したとして講義を進める.関連する数学,統計学,ミクロ経済学,マクロ経済学の知識を自ら確認,見直しながら予復習することが望ましい.1講義当たり3~5時間程度の予復習が求められる.講義の録画,録音,撮影,板書や講義資料・シラバスの転載・配布は禁ずる.到達度評価の一環であるcapstone projectでは,各自が関心のあるトピックを選び,参考文献やLLMを駆使しながらデータを収集・編纂し,実際にプログラムを書いて実証分析を行う.
講義計画
1回目 はじめに(なぜ計量経済学が必要なのか,確率論,統計学的推論),gretl他統計ソフトの紹介
2回目 因果関係を識別する実験
3回目 回帰分析
4回目 回帰非連続
5回目 集積分析,1回目の課題,capstone project計画書提出
6回目 横断面データ
7回目 (マクロ)時系列データ
8回目 パネルデータ
9回目 差の差 (static)
10回目 差の差(dynamic, multiple),進捗報告 (i)
11回目 制限従属変数,2回目の課題
12回目 matching, simulation,capstone project提出について, 進捗報告 (ii)
13回目 操作変数,進捗報告 (iii)
14回目 これまでの講評,3回目の課題,capstone project提出
15回目 到達度評価
参照
導入
データ分析の力 因果関係に迫る思考 光文社
実証分析入門 日本評論社
大脱出ー健康,お金,格差の起源 みすず書房
FACTFULNESS-10の思い込みを乗り越え,データを基に世界を正しく見る習慣 日経BP
参照
計量経済学の第1歩 有斐閣ストゥディア
計量経済学 有斐閣
データ分析のための統計学入門(OpenIntro Statistics 4th ed.)
英文教科書の邦訳版(できれば原文(英語版)を読んだ方が良いです.尚,無償の英文であればWooldridgeのIntroductory Econometrics: A Modern ApproachがpdfでDLできます.)
「ほとんど無害」な計量経済学-応用経済学のための実証分析 NTT(出版)
因果推論入門 ~ ミックステープ 技術評論社
隣接分野の教科書例(比較的安価な有斐閣ストゥディアのものを挙げています)
環境経済学の第一歩 有斐閣ストゥディア
都市・地域経済学への招待状 新版 有斐閣ストゥディア
ストーリーで学ぶ開発経済学-途上国の暮らしを学ぶ
その他
統計分布ハンドブック 2003
サンプルサイズの決め方 2003
欠測値補完についての参考文献の紹介―欠測データの統計科学 医学(公衆衛生など)への適用 調査観察データの実際(第1巻)
欠測値補完についての報告 http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/report/report_all_detail.pdf
公的統計の欠測値補完の現状 文献調査 http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/ihou/80/pdf/2-2-808.doc
imputation http://www.stata.com/manuals13/mi.pdf
ウェブデータについて:Pythonクローリング&スクレイピング[増強改訂版]-データ収集・解析のための実践開発ガイド
LLMの活用について
課題
problem set (i) 確率論,統計学的推論,相関と因果解析 (10 percent)
capstone project proposal (5 percent)
problem set (ii) データの種類に応じた解析(横断面,時系列,パネル),差の差分析 (10 percent)
problem set (iii) 制限従属変数,matching - simulation, 操作変数法 (10 percent)
capstone project submission (30 percent)
exam (30 percent)
others -- contributions including attendance (5 percent)
これまでの結果の纏め
コメント
講義へのコメントで,実証分析(capstoneプロジェクト)の課題を与えて欲しい,グループワークとして欲しい(知人・友人が増え,自身のチーム内での責任感も増し,講義へ参加する動機付けにもなる)という要望がありました.コロナ禍に入学し,対面での交流機会が減ってしまった学生の状況を察するに悩ましかったのですが,各自が自身の動機に基づき,考え抜いて題目を定め,15週分みっちり,机にかじりつきながら自分と格闘しつづけるcapstoneプロジェクトの枠組みは変えないこととします.講義に留まらず,将来何をするにしてもよい鍛錬・機会になるかと思いますので,ぜひご自身と格闘してみてください.