日本語版の共通声明

「台湾の国会、権力の乱用に反対!」

在日台湾人・海外台湾人の共同声明

Overseas Taiwanese Solidarity Against Legislative Power Abuse

関連リンク:

https://linktr.ee/taiwan_gin_a_overseas


私たちは、海外で働き、学び、生活している台湾人です。現在、台湾の立法院(国会)で過半席を占める野党連合は「国会改革」を口実に、専門家と市民団体の懸念を無視して十分な審議を尽くさないまま、強行採決しようとしています。これらの法律案は、立法権を恣意に拡大して権力分立の原則に反しています。私たちは台湾人として母国の国会で起きている民主主義の危機を看過できません。また、台湾の民主主義は、東アジアそして国際社会の平和と安定に繋がっています。決して対岸の火事ではありません。台湾の市民と連帯して一緒に台湾の民主主義を見守っていきましょう。


今回の台湾国会での権力乱用の問題は、主に以下の3点です:


立法プロセスの横暴と不正

「国会改革」とは、「民主主義のルール」のもとで、民意政治と責任政治を推進すべきです。合法な制度を通じて、国民が法律案審査のプロセスを理解・監督し、意見を表明できるようにしなければなりません。また、意見交換の場を提供しながら、難解な法律の文言を一般の人にも理解できるように機会を提供します。国民は、自分の票で選んだ議員がどの法案を支持するのか、どの法案に反対するのかについて知る権利があります。自分の価値観に一致しているかを判断し、次の選挙における投票の意向を固めます。そして、国会議員は、単に法律案を通過させることではなく、法律案についてきちんと審査・議論を行うことが求められます。従って、法律案を成立させるには慎重な議論が必要であり、話し合いを通じて様々なの意見を反映させなければなりません。こうしたことによって国家、国会と国民を一体にさせ、進むべき方向をまとめ上げるのが国会議員の仕事なのではと考えています。これこそ、民主主義の核心的価値です。


今回の「国会改革」の審議における最大の問題点は、立法手続きの原則が完全に破壊されたのです。「委員会中心主義」の下に行われる条文の議論が「ほとんど行われなかった」という不思議な状況にあります。それぞれ法律案の修正案に対して調整したり、条文ごとを議論したりすることは、立法院における各委員会の最も重大な任務です。公開な討論を通じて、国民が議案審査の内容やプロセスをより理解できることが目的ですが、今回、野党連合の議員が強行採決しようとする法律案は、「委員会中心主義」精神を全く無視し、討論せずに委員会から強引に本会議まで提出させました。そのため、法律案の実質的審査が全く行われませんでした。


委員会による議論がなければ、我々国民は立法委員が各修正案に賛成や反対の理由を知ることができません。また法案審査がゼロに近いため、法律案の記録も残らず、国民が理解も監督もしようがありません。野党はただ形式上の審査プロセスを推進し、国会内・外の議論を完全に否定しています。それだけでなく、野党の立法委員は「法律が成立完了までには国民に説明できません」とさえ公言し、民主主義における主権は全て国民にあるということを無視しています。これは、有権者に対する責任を果たして国会でコンセンサスを求めることを放棄しています。全く立法者としての失格です。立法委員が自分たちが握ている立法権に対して軽蔑するような国会。私たちは到底受け入れられません。


法律案の内容は憲法の破壊、政治の混乱を招く

私たちは、国会の審議の質を高め、立法のプロセスをより透明的かつ責任あるものにするような国会改革であれば、もちろん支持します。しかし、民主主義の核心である「権力分立」に反し、立法権が別の機関の憲法における権限を超越するような法律案には固く反対します。法律案を強行採決させる野党は、この法律案がアメリカの「国会侮辱罪」に倣ったものであり、「総統」と行政権を抑制するためであると主張しています。しかし事実上、今回の議案では立法権が拡大される一方、行政権と司法権の均衡・抑制に関する修正する文言は増えておらず、立法権が実質的に拡大し、行政権・司法権を侵害します。


これだけではなく、この法律案は国会に対して「政府機関、軍隊および民間へ資料を要求するたび、その要求対象が協力しない場合、『立法委員の間での少人数投票』によりて、要求対象に刑法または行政法に基づく罰を科すことができる」という極めて大きな権限を与えている。にもかかわらず、この権限を持つ立法委員に対して相応しい制限を全く課していません。司法権の干渉を防止する、機密情報保護、調査委員会の利益相反回避などの規範も全くありません。この法律案が可決されましたら、立法委員は行政側の専門的判断を凌駕することになります。どのようなレベルの公務員でも、このような恣意的な法律追究を恐れるため、自分の専門性や原則を放棄し、立法委員の言う通りに従うことになりかねません。結果的に、行政権が空洞化になり、ただ与党に対する野党連合の政争の具が増やすだけです。


さらに、現在審議中の法律案は、国会で質疑を受ける公務員が「逆質問、回答の拒否、資料提供の拒否、情報隠蔽、虚偽回答」などを行うことを禁止していますが、成立要件については決して明確されておりません。また、公開すべきでない機密情報の認定については、情報の機密性や本質に判断するのではなく、「国会議長ないし委員会委員長の同意」が認定要件とされているため、国会の質疑応答によって国やビジネスの機密を漏らしてしまう可能性が非常に高く、国としての基盤を損ないます。


悪法の実行はただ国家運営の妨害になる

民主化以来、台湾は中国共産党から恫喝を受け続けてきました。中国は武力で台湾を併合しようとすることを明言しています。しかし、いくら外圧があっても、台湾の人々は「民主主義の道」を心揺れなく選びつづけました。過去8年間にわたって、台湾は日本を含め、世界中の民主主義国家と関係を強化し、地域と世界の安定に貢献しつづけてきました。最近、台湾近辺での中国の軍事演習は、中国共産党がまさに地域の安全保障に脅威を与えているもので、そして民主主義を守る、平和で安定した台湾が、地域ないし世界の経済発展と繁栄に不可欠であるということを証明しました。


しかし、前述の法律案が施行されるならば、台湾は外交的困難や中国共産党からの圧力に直面するだけでなく、国内における憲法的・政治的危機や、財政規律の破壊が生じましたら、国際企業や投資家が台湾の投資環境に対する見通しが悪くなる一方でしょう。台湾の半導体やIT技術産業は、既に「民主的サプライチェーン」における重要な一部になっています。権力への濫用を伴うこの悪法が、台湾と国際社会が数年間わたって積み上げてきた経済と技術の成果を破壊することを絶対に容認できません。この悪法により、機密情報や国家安全に関んする情報が漏れるリスクが発生し、外部勢力が台湾の内部から民主的制度を崩壊させる機会を与えることになります。それにより、台湾と各国の関係に重大な影響を与え、日本、米国や欧州などの同志国にも大きな打撃を与えましたら、誰にも望まない「台湾有事」が現実となり、地域の平和と安定が脅かされる可能性もあります。


私たちと同じく、民主的制度の破壊に反対して地域の安定に対する影響を懸念する方々は、ぜひ台湾での起き事に関心を寄せて頂き、台湾を守るために、海外にいても一緒に行動を取りましょう。