外山 喬士 (Takashi Toyama)
Research Map
https://researchmap.jp/toyama_takashiGoogle scholar
https://scholar.google.co.jp/citations?hl=ja&user=dO1jvmwAAAAJ
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環境省「重金属等による健康影響に関する総合的研究」
水銀は有用な金属であり、古くから様々な用途に利用されてきました。環境中に存在する水銀(無機水銀)の一部は微生物の働きによってメチル水銀に変換されます。このメチル水銀は水俣病の原因物質として知られており、重篤な中枢神経障害をもたらすことが知られています。また、魚介類中に比較的高濃度に蓄積されたメチル水銀を妊娠中の女性が多く摂取すると、メチル水銀が胎児に蓄積し、生まれてくる子供に脳障害や発育不全を引き起こす危険性が指摘されています。メチル水銀はヒトの健康への影響が最も懸念されている環境汚染物質の一つですが、その毒性発現機構およびそれに対する生体防御機構は解明されていません。本プロジェクトでは、メチル水銀がタンパク質のシステイン残基に結合すること (S−水銀化) を介した脳神経毒性発現機構およびバイオマーカーの解明を目指し、外山が以前開発したBPMLをベースとして発展させたケミカルバイオロジーを用いることで (Toyama et al., 2013, J Toxicol Sci)、新しい付加体検出法の開発から、メチル水銀毒性発現の分子機構と曝露マーカーの特定を目指します。
新領域創成のための挑戦的研究デュオ
動物や植物はそれぞれの環境に合わせて独自のレドックス機構 (酸化や還元反応を伴う生命反応) を進化させてきました。本課題では、動物のレドックス機構を植物に用い、機能性植物を創出するとともに環境中重金属のバイオレメディエーションを狙う一方、植物のレドックス機構を動物に用いることで疾患治療等を狙う、新規性の高い生命工学的視点に基づく挑戦的な研究です。
含セレン化合物による抗ウイルス・抗炎症のポリファーマコロジカルな多機能薬剤の開発
AMEDシーズAを背景としたスクリーニングやメカニズム解析からEbselenは、Mproの活性中心のシステイン残基と共有結合 (セレノスルフィド結合; R-Se-S-R) を形成することがその薬効の作用点となることが判明した。通常、共有結合性の薬 (コバレントドラッグ) は、対象との立体的な相互作用 (Docking)、および共有結合 (Locking) のミックスモードによって標的分子と安定な共有結合を形成し、強力な薬効を発揮する。しかし、非特異的な標的に対する不可逆的な共有結合を形成し、重篤な特異体質性薬物毒性 (IDT) を引き起こすことが問題となり、一般的に開発は難しい。一方、セレノスルフィド結合は生体内のグルタチオン (GSH) や超硫黄分子 (R-S(n)-R) といった求核分子とチオール交換反応で容易に転移 (Rolling) する。そのため基本的に、生体内分子に対する非特異的な結合は一過的に解消されるため毒性は低いと考えられる。しかしながら驚くべきことに、Mproに対するEbselenのセレノスルフィド結合はGSHでは解除不可能であり、選択的に不可逆的な阻害作用を示すこと (Rollingの終着点となる) が判明した。そこで、本プロジェクトでは、Docking、Lockingだけでなく、新たにRollingの概念も加えた新規モダリティで安全性の高い抗ウイルス薬・コバレントドラッグ開発を目指す。また、我々が開発した含セレン化合物は細胞内のGSHと反応することでグルタチオンペルオキシダーゼ様の活性サイクルを示し、活性酸素種を消去することも明らかとなった。このことから、我々が開発中の含セレン化合物は、Mpro阻害 (ウイルス増殖阻害) だけでなく、抗酸化―抗炎症作用も合わせて発揮する、1剤で無症状―軽症―重症まで対応可能な、マルチモーダル (ポリファーマコロジカル) な次世代型の感染症治療薬 (COVID-19に限らず) となる可能性があり、鋭意開発を進めている。
糖尿病増悪因子セレノプロテインPのエピガロカテキンガレートによる中和作用
糖尿病で増加するセレノプロテインP(SeP)はセレン過剰供給を介して糖尿病病態を悪化させる、負のスパイラルを引き起こす原因因子である。最近我々は、SeP産生を抑制する食品成分を独自のスクリーニングにより探索したところ、お茶成分であるエピガロカテキンガレート (EGCg) が効率良くSeP産生を抑制することを見出した (Mita Y et al., 2021, Nuc Acid Res)。我々は、そのメカニズムの一部として、EGCgで誘導されるノンコーディングRNA L-ISTがSePの発現を抑制する機構を突き止めた。しかしながら、本機構だけでEGCgのSeP発現抑制作用は説明することができず、全容は明らかとなっていない。一方、最近我々は、メチル水銀がSePのセレノシステイン残基 (SePはセレンを輸送するために、この特殊なアミノ酸としてセレンを10原子組み込んでいる) と共有結合した場合、SePのセレン供給活性を著しく低下させることを見出した。EGCgは化学構造内に不飽和カルボニルを有しており、生体内で親電子的に振る舞うと考えられる。そのため、EGCgがSePのセレノシステインと結合して、SeP中和作用を示すと強く予想される。そこで、① 我々が独自に開発したセレノシステイン特異的なビオチンラベル化法であるacidic-BPMLを利用することで、SePのセレノシステイン残基へのEGCgの修飾を検討する。② SePのセレン供給活性にEGCgが与える影響についてと、培養細胞のインスリン抵抗性に与える影響を検証する。③ 更に、東北大学メディカルメガバンクに保管されている血漿中SeP濃度と、お茶摂取頻度、および糖尿病病態との相関関係を解析することで、実際のヒトにおける作用も検証する。
生命金属科学A03 生命金属と有害金属のメタル相互作用を介した生体機能撹
外山 喬士
血漿中に存在するセレノプロテインP (SeP) は必須微量元素である生命半金属セレンを、セレノシステイン (システインの硫黄がセレンに置き換わったアミノ酸) として保持し、同元素を脳や胎児に効率よく供給するための輸送体です。最近、水俣病の原因物質であり、胎児の神経障害を示す有害金属であるメチル水銀 (MeHg) が血漿中で主にSePのセレノシステインに結合して体内を循環することが報告されました。SePはその受容体を通じて各組織へのセレン供給を担いますが、本供給経路にMeHgも便乗することで (メチル水銀によるSePのハイジャック)、その毒性発揮に関与する可能性が考えられます。また、MeHgが結合したSePは神経細胞に取り込まれますが、セレン源としては用いられない可能性が示唆されており、生命金属と有害金属のメタル相互作用を介した全く新しい毒性発現機構が想定されています。そこで本研究では、新技術「セレノシステイン特異的に結合したメチル水銀検出法」を開発・ベースとし、上記仮説の解明に挑戦します。
https://bio-metal.org/members/koubo/2020-koubo-a03/2020-a03-k01-toyama/
「生命金属科学」研究最前線ビデオシリーズ セレンの動態と機能 を作成しました。
https://bio-metal.org/research-video/series-2-se/