研究内容

田原研究室では、有機分子や金属錯体を取り扱っており、「分子レベルでの電子の出し入れ=レドックス」を利用した材料開発に取り組んでいます。人間の目には見えない分子レベルでの仕掛けを作ることで、新しい機能を生み出すことを目指します。 

①電気化学発光する分子性材料の開発

有機色素に分子レベルで電気化学的な防護具(プロテクター)を装着させ、電気化学発光の強度を最大で156倍にまで増強させることに成功しました。現在、この防護具のアイデアを一般化させる検討を行っています。

②有機トランジスタ材料の開発

レドックス活性な金属錯体のコーティング剤を開発し、絶縁膜表面を溶液プロセスで簡便に被覆し、分子一層の超薄膜(自己組織化単分子膜)を作製しています。この超薄膜を足場とすることで、有機半導体の薄膜を蒸着させた有機トランジスタを作製できます。絶縁膜と有機半導体が接する界面は、電荷が輸送される重要な領域であり、両部材への親和性を兼ね備えた金属錯体を導入する本アプローチは、界面の構造や機能を制御する有力な手法になると期待されます。これまでにフェロセンが電荷捕獲層として働くことを見出しており、不揮発性メモリへの応用展開が期待されます。また、超薄膜と有機半導体層で共通の共役骨格を用いたときの噛み合わせ効果も報告しています。  

③近赤外吸収色素の開発

ある化合物の中で、異なる酸化数が同居する様を、混合原子価状態と呼びます。例えば、生体系の鉄硫黄タンパク質は、Fe(II)Fe(III)状態を取ります。合成顔料のプルシアンブルーは、北斎やゴッホの絵にも使われていることで有名ですが、その印象的な青色は、Fe(II)からFe(III)への原子価間電荷移動 (IVCT) が関わっています。

私たちは、適切なレドックス部位と架橋部位を選択することで、IVCTを近赤外領域まで広げ、光ファイバーで用いられる3つの通信波長(850、1300、1550 nm)の光を選択的に吸収するパラジウム二核錯体のシリーズを開発しました。また、刺激応答性や超分子組織化部位を導入した新しい混合原価化合物を開発しており、特に、分子型量子セルオートマトンへの応用可能性を検討しています

最近の成果についての説明
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