【開催概要】世界的に言語や民族の多様性が論じられ始めた近代以降も、日本社会に存在した多言語状況に一般の人びとが意識を向けることはほとんどなかったと思われます。これに大きな変化のきっかけを与えたのは、おそらく1990年以降の、日本に移住した外国人の急増であり、「多言語」と銘打った書籍や研究論文が目につくようになってきた頃とほぼ一致します。そして今、東京オリンピックを控えて、海外からの観光客をタ－ゲットとした多言語サ－ビスの必要性が叫ばれています。しかし、異言語との対面的、日常的な接触によって、主流派言語話者としての日本人の意識や言語行動にどのような変化が生じたのか、移民コミュニティや外国人の多い都市空間ではどのような言語生活が営まれているか、といった多言語社会化しようとする日本の内実についてはまだまだ明らかになっていないことが多いといえるでしょう。今回のシンポジウムでは、日本の多言語化をめぐる研究に貢献するため、多言語化の概念やこれからの方向性について議論を深めることを目的とします。

【プログラム】

10: 00 受付開始

10: 20～10:30 開会挨拶 福永由佳（国立国語研究所）

＜発表＞

10:30～11:15 1. 多言語環境とはどういうことか 庄司博史（国立民族学博物館）

11:20～12:05 2. ‘National multilingualism‘の概念を社会言語学的に検討する ジョン・マーハ（国際基督教大学) 使用言語：英語

12:05～12:50 ―昼食休憩―

12:50～13:35 3. 多言語社会日本におけるリンガフランカ日本語 ダニエル・ロング（首都大学東京）

13:40～14:25 4. 「ありふれた」メトロリンガリズム：セミオティック資源の多様化と日常化 尾辻恵美（シドニー工科大学/国際基督教大学）

14:25～14:35 ―休憩―

14:35～15:20 5. 「多言語社会」の語り方 安田敏朗（一橋大学）

15:25～16:10 6. パキスタン人コミュニティにおける多言語使用 福永由佳（国立国語研究所）

16:20～17:25 ＜パネルディスカッション＞ 議長： 庄司博史

・ブラジル人コミュニティからみた多言語化 ディスカッサント：拝野寿美子（神奈川大学）

・討論およびフロアとの質疑応答

17:25～17:30 閉会挨拶 福永由佳（国立国語研究所）