鈴木 靖将(すずき やすまさ)は、1944年に滋賀県大津市生まれの日本画家。戦後日本の文化的再生の時代に育ち、若い頃から日本画の道を志しました。伝統的な日本画の素材である岩絵具や和紙、金銀箔などの扱いを基礎から学び、自然観や精神性を重んじる日本美術の流れの中で研鑽を積みました。
1969年には第33回新制作協会展に初入選し、その後も新制作協会展や創画会展に入選を重ねるなど、着実に画壇での評価を高めました。日本画の伝統を踏まえながらも、単なる古典的再現にとどまらず、自らの主題を明確に打ち出していった点に彼の特色があります。
鈴木靖将の創作の大きな柱となっているのが『万葉集』です。日本最古の歌集に収められた歌の世界を、現代の感性で再構築し、心象風景として描き出す試みを長年にわたり続けてきました。歌に込められた情感や時代の空気を、具体的な歴史画としてではなく、象徴的で静謐な画面として表現することで、鑑賞者に時間や記憶の層を感じさせます。この「万葉」をテーマとする展覧会は日本国内のみならず、フランス、ドイツ、アメリカ、中国、韓国など海外でも開催され、国際的にも紹介されてきました。
さらに近年は、新美南吉氏の童話を題材にした絵本原画の制作にも取り組み、日本画の技法を活かした絵本作品を発表しています。これにより、従来の美術館空間にとどまらず、出版物を通して幅広い世代へ作品世界を届ける活動も展開しています。また、滋賀という土地との結びつきも強く、琵琶湖や地域の歴史を主題とした作品制作や展覧会も行っています。