機械製品の設計作業は古くは人の手で行なわれ、近年は計算機(コンピュータ)を利用した設計が注目されています。
本研究室では、計算力学・機械学習・数理的最適化手法を用いて機械構造物・社会システムの複合領域の最適設計法の構築を行なっています。
基礎研究だけでなく、企業との共同研究も積極的に行いながら、実製品の開発・設計を対象とした応用研究も推進しています。
研究対象は、宇宙機器・航空機・自動車・船舶など多岐にわたります。
機械学習は古くから機械設計に使われてきましたが、近年の深層学習の登場により,できることが大幅に広がっています。
当研究室ではデータ駆動型設計と名付け、性能予測・形状創出・形状修正の3つの観点で深層学習を機械設計に適用する研究を行なっています。
性能予測
機械製品の性能を統計的機械学習を用いて予測します。
形状創出への応用
所望の性能値を指定して、それに見合った設計解を出力するシステムを構築しています。
例えば下の3つのアニメーションは, 翼形状をその揚力係数がだんだん大きくなるように変化させたものです。3つのアニメーションはそれぞれタイプの異なる翼を変化させていますが、 それぞれのタイプの特徴を保ったまま変化していると言えます。
この例では深層ニューラルネットワークモデルの一つであるGANやVAEの枠組み使用しています。私たちは機械設計に適する学習モデルがどのようなものかについて研究しています。
形状修正への応用
強化学習を用いて,最適形状を探索する方法について研究を行なっています。
設計課題の一つに、対象物も形状もほぼ同じものに対して、 流速などの条件を少し変えては形状の最適化を繰り返すタスクがあります。
例えば航空エンジンのタービン設計・ターボ機械のシリーズ設計などでこのタスクが見られます。 このようなタスクに対して、これまでは数理最適化手法を用いて解決していました。しかし、この場合はタスクが決まってから数理モデル化を行ない、長い計算時間をかけて最適化を行なうことになります。
強化学習を用いる場合は、事前に長い時間をかけて学習を行なっておき、流速などの条件が決まれば、あとは強化学習エージェントが短時間で(数分~数十分で)最適解を探索してくれます。
生成モデルで作製した二次元層流翼の例
トポロジー最適化理論の高度化と様々な設計問題への適用
トポロジー最適化とは、物理現象(数値解析結果)と数理的最適化手法に基づき、要求仕様を満たす形状をコンピュータに自動導出させる究極のコンピュテーショナルデザイン手法です。
設計者の既成概念を超えた構造アイデアを導出できる点で、注目されており、本研究室では動的応答や熱構造連成問題への適用など、要求される設計問題に対応できるように手法の拡張を行っています。
流体機械設計への適用を想定したトポロジー最適化の計算高速化手法の開発
トポロジー最適化は機械設計に有効な手法ですが、計算時間が長いことが欠点があります。特に流体性能を考慮 した最適化は長大な計算時間がかかるため機械設計の現場では使いにくいものでした。
そこでiSA法(Instantaneous Sensitivity Approximation)という方法を構築し、計算時間を従来の100分の1から1000分の1に短縮しました。
これにより機械設計の現場で実際に使用されるようになりました。
マルチマテリアル最適設計法の開発
異なる材料特性を有する材料の配置とその形状を同時に最適化できるマルチマテリアル設計法の研究を進めています。
宇宙機器や航空機設計では、性能向上の観点から構造体の軽量化が求められており、複合材と金属のそれぞれの利点を活かした設計が注目されています。
当該設計は考慮すべき項目の多い複雑な設計問題であるため、トポロジー最適化の適用を検討しています。
トポロジー最適化によるラティス構造の創成と3Dプリンターの連携
3Dプリンタとも呼ばれる積層造形は、様々な形を自由に造形することができます。
家庭用の安価な装置も販売され、「モノづくりの民主化」をキーワードに様々に活用されています。
3Dプリンタならではの形として、ラティス構造が挙げられます。これは微細な構造が繰り返し現れる構造で、軽量な構造が作れるという特徴があります。本研究室では、3Dプリンタでの製造を前提とし、最適なラティス構造をトポロジー最適化にて導出する方法論を提案しています。
安全で効率的な運用のための船舶の最適設計
船舶は、波浪中を航行する大規模構造物です。その安全な運行のために、構造・流体を含む様々な計算力学手法を用いた解析を行い、設計の最適化を行っています。
次世代の船舶海洋システムの最適設計
地球温暖化を防ぐため、船舶においてもカーボンニュートラルが求められており、次世代の新しい船舶を目指した様々な技術開発が進んでいます。