本ページでは,現在取り組んでいる研究,これまで行ってきた研究の一部を紹介します.
テーマ1 プレフレイル・認知機能低下と作業機能障害の関連
テーマ1の研究では,地域在住高齢者を対象に,プレフレイル・認知機能低下・抑うつ傾向が「作業機能障害(Occupational Dysfunction)」に
どのように関与するかを検討しています。
◇ 研究の背景
高齢者における介護予防では,これまで
身体機能
認知機能
が中心に検討されてきました。
しかし本研究では,それに加えて「作業(生活行為)」の質とバランスに着目しています。
プレフレイルでは
→ 作業不均衡(生活の忙しさ・偏り)が増加
作業不均衡は
→ プレフレイルの関連因子として抽出
つまり
生活のバランスの崩れが早期から出現している
認知機能低下単独では影響は限定的
しかし
→ 抑うつを伴うことで作業機能障害が顕在化
特に
→ 作業剥奪(やりたい活動ができない)が増加
つまり
心理要因(抑うつ)が作業機能障害を増幅する
本研究から明らかになったのは:
👉 プレフレイル段階からすでに作業機能障害は始まっている
👉 その中心は作業不均衡(生活のバランスの崩れ)
👉 さらに抑うつが加わることで作業剥奪のリスク可能性がある(因果関係が逆の場合もある)
つまり生活のバランス(作業)を整える介入 や 抑うつの早期評価・介入が重要
テーマ2 カードを使った「意味のある作業への気づき」への介入
テーマ2では地域在住高齢者を対象に,「意味のある作業に着目した介護予防プログラム(メイキング・ミーニングゲーム:MMG)」の効果を検討しています。
現在の「通いの場」は,
体操(運動)中心
機能回復に偏りがち
という課題があります。
そこで本研究では,
「意味のある作業(生活行為)」に着目した介入 メイキング・ミーニングゲーム(MMG) を導入しました。
MMGは,カードを用いたグループワーク型プログラムです。
① 活動カードを仕分け
「重要」「やや重要」「重要でない」
② 重要な活動を選択
自分にとって大切な作業を明確化
③ 「できていない活動」を1つ選ぶ
課題に気づく
④ グループで共有・対話
共感・助言を得る
⑤ 具体的な目標を設定
日常生活で実行
👉
短時間で「気づき → 目標 → 行動」につなげる
「できるようになった」
「満足できるようになった」
👉 短期間でも変化が確認されました
他者との共有・共感
楽しみながら目標設定
👉行動変容を促す重要な要素
本研究から明らかになったのは:
👉 意味のある作業への気づきが行動を変える
👉 グループでも効果的な介入が可能
👉 身体機能を含めた包括的支援が重要
テーマ3 家族介護者の「介護対応力」と抑うつリスクの評価
認知症の人を介護する家族を対象に,介護対応力(Caregiving Competence)と抑うつの関連を検証し,早期支援につなげる指標の開発を行っています。
在宅介護では,
介護負担(ストレス)
介護満足感・やりがい
対処能力(コーピング)
など,複数の要素が複雑に関係しています。
従来は「負担」のみの評価が中心でしたが,
👉 包括的に評価する指標が必要と考え, 介護対応力評価尺度(CCSD)を開発しました。
※CCSDの無料ダウンロードは「尺度・ツール」のページに案内を記載しています
質問紙調査に基づき,因子分析を実施し,
介護対応力は5つの側面から構成されることを確認しました。
肯定的感情と意識
相談相手・家族の支え
介護負担とコーピング
認知症リテラシー
関わり方と感情コントロール
👉心理・行動・環境を含む多面的構造
さらに,
妥当性(構造的妥当性)
信頼性(内的一貫性)
も確認され,
👉 尺度としての基盤が確立されました。
抑うつがある介護者はCCSD得点が低い
BPSDが多いほど心理的負担が増大
👉介護対応力は心理状態と密接に関連
感度:88.1%(高い)
特異度:42.5%
AUC:0.72(中等度)
👉CCSDは,抑うつリスク(在宅介護破綻のリスク)を早期に抽
出することが可能な尺度であることが示唆された.
本研究から明らかになったのは:
👉 介護対応力は多面的な構造をもつ概念である
👉 抑うつリスクと関連する重要な指標である
👉 カットオフ値により早期支援が可能となる
テーマ4 家族介護者への心理教育によるエンパワーメント支援
認知症の人を介護する家族を対象に,心理教育プログラムによるエンパワーメントの変化を検証しています。
在宅介護では,
介護負担
不安・ストレス
だけでなく,
👉 「介護できている」という感覚(エンパワーメント)
が重要です。
しかし従来は,
👉 負担軽減に焦点が当たり「力を引き出す支援」は十分ではあ
りませんでした
4か月間・全4回のプログラム
① 認知症の基礎理解
② 社会資源・対応方法
③ BPSDへの対応
④ 振り返りと課題解決
介護の悩みを共有(ピア効果)
他者の経験から学ぶ(代理経験)
専門職からの助言(説明的介入)
👉「気づき」と「自信」を引き出す構造
介護の知識・技術への自信が向上
👉 「自分にもできる」という感覚の変化
介護への前向きな感情が増加
👉 介護に対する意味づけの変化
総合得点が有意に改善
👉心理教育による一定の効果を確認
本研究から明らかになったのは:
👉 心理教育は介護者の“力”を引き出す支援である
👉 特に「自己効力感」と「肯定感」に効果がある
👉 行動変容の前段階として重要な介入