【第一弾】
どこか、遠い世界の遥か昔、群雄割拠の乱世の中の一つの国ウカント領の小さな村、カマラでのこと。
機織りと物書きで生計を立てる、二人暮らしの若い双子の姉弟があった。
博識な物書きの姉の名はシーダ、器用で芯の強い機織の弟はシーノといった。
ある日の事、旁若無人さから【不協和の王】と呼ばれた国主ギガヤの命を受けたその家臣である領主カガナリは、
彼らの家へと兵を向け、シーダを強引に連れ去ってしまった。
『シーノ、助けて!』
『シーダを離せ!もしシーダの身に何かあれば、僕はお前らを絶対に許さないからな!』
必死に抵抗したシーノであったが、健闘虚しく多勢に無勢、姉は拐われ、自身も反逆者の汚名を着せられ、村から追われる身となってしまった。
独り旅をするシーノは行く先で似た境遇の女剣士ソージと出会い、二人は八房の尾を持つ猫神スズタマの声を聞く。
『八人の呪われし者を束ね、ギガヤ率いる六呪奏を討ち、彼らの持つ弦を集めよ』
天命を受けた二人は旅を続け、同じく呪いの士・ドウディと合流する。
着々と猫の呪いを受けた同士は集いつつある傍ら、囚われたシーダはギカヤの懐刀であるザイソンの妖術の毒牙にかかり、
ギガヤの傀儡とされてしまっていた。
不協和王ギガヤの狙いは、シーダが祖先より受け継いだ一子相伝の八猫士の伝承の秘密だった。
暴君の真意は果たして何なのか。
シーノ達はギガヤを討ち、シーダを取り戻し、呪いを解くことが出来るのか。
【第二弾】
暴君ギガヤに拐われた姉を追うシーノの旅は続く。生来より培われた糸捌き、絹糸から鉄弦に持ち替えて、
行く手を阻む者を躊躇いなく切り捨ててゆく。
ギガヤ居城への最短経路を探るため、一度散開して情報収集を始めたシーノ達。その中でドウディは船頭のゲンイと出会い、
意気投合。彼の持つ槍の力で風雨を操り、嵐の海を越えて一気に城下町へと潜り込む作戦を立てる。
目論見は大成功、見張りの立たぬ嵐の夜にゲンイの操る船は人知れず城下町のはずれへの接岸に成功する。
人気無い雨の城下町に美女と美女の逢瀬の影あり。しかし、よくよく見れば片方はギガヤ正室のカナメ妃その人、
さらにもう片方は涙を零せば猫になってしまった呪いの同志。猫になった美女は女装の美男子ビッケ。
事情を伝え合ってみれば、彼もまたギガヤから愛する人を取り戻す最中。共闘を誓い合った後、
ビッケはギガヤ家臣唯一の穏健派とされるワゴンへの接触をはかる為に、芸姑に化けて単身ワゴン邸へと乗り込んだ。
ビッケと別れたシーノ一向、一山越えてギガヤの城へと向かう途中の洞窟で夜明かしを、と、ソージが道すがらに摘んだ茸で汁を作れば大当たり。
腹痛に苦しむシーノとソージ、そこに野盗達が襲いかかってきて、さぁ猫士達の絶対絶命。
それを救ったのは一騎当千、無類の巨躯、自警団のコファンゴという男。これもまたギガヤ家臣ケイシュンに家族を奪われた復讐者。
協力を約束したコファンゴは、早速シーノとソージを抱えて全速力で街へと出戻り医者を探す。
そこに薬屋から手招きした小さな影は、幼いながらも薬学を極めた神童マサラであった。
彼女もまた猫の呪いと戦う者で、その知識と技故にギガヤに命じられたワゴンから命を狙われる身であった。
マサラは先手を打たんとコファンゴと共にワゴン邸へ乗り込み、霊薬の香でワゴンを眠らせて誘拐する事に成功する。