Brand Director Interview
新ブランド
「STTC(エス・ティー・ティー・シー)」、始動
今季7月、スタクティカが新たなプロジェクトをスタートした。中心を担うのは、直近4年間でサッカーフットサル系のスポーツユニフォーム制作を約140チーム手掛けた「スタクティカ」を運営するブランドディレクターの山田翔司。「ひとつのチャレンジになる。」と意気込む彼の声から、今回どのような想いで始動したのかを迫る。
2020年に、大好きだった祖父の名前を借りて「三造商店」を開業。プロフットサル選手とスクールコーチを生業にスタートしたが、様々な出会いがあり、昇華プリント製法のユニフォーム制作に携わることに。フットサル選手として活躍しながら、自身のブランド「スタクティカ」を設立し、チームオーダーユニフォームの受注生産を開始。2023年春夏シーズンから新ブランド「STTC(エス・ティー・ティー・シー)」を「スタクティカ」のレーベル分けブランドとして、既製品アパレルや小物の販売として始動。
「STTCは、スポーツミックスがカジュアルに日常として溶け込んでいく服」
2023-24A/W COLLECTION image visual
▶︎ところで「STTC」とは、どのようなブランドなんでしょう。
最初は「架空のプロアスリートが……。」とかコンセプトも真面目に考えました。ブランドの想いとか、そういったブランディングのところも多少は考えてスタートしてきました。ただ、結局作り手の想いとして一番嬉しいのは、”ふと出かけようと思ったときに、ふと手に取って着てしまうこと”だと気付かされました。僕は「クローゼットの中の一軍になる服を作る。」と良く冗談で言ってるのですが、本心だったりします(笑)デザイン面も少しグラフィックを取り入れたり、ひと癖あるものを作ってみようと意気込んで最初はパソコンでカチカチと絵を書いていたのですが、まずはロゴとエンブレムを覚えてもらおうと、ブランドらしさ全開のシンプルな展開で進めているところです。ただ、唯一ブレずにこだわっているのは、「スポーツシーンだけでなくその移動もカッコ良く一貫して楽しむこと」です。簡単にいうとジムだったりサッカー・フットサルなどスポーツしに行くのに、「着たまま移動してもカッコ良くて、そのまま運動出来て、また着替えもカッコ良い!」みたいな感じです(笑)そんなのどこのブランドでも考えてるでしょと思うのですが、僕はあえて口に出して、立ち返ります。もちろんそういった要素を含めてデザインだったりチョイスしているアイテムが現在のラインナップになっています。中には気付いている人もいるかもしれませんが、ずっとベンチマークしているブランドもありますし、商品を作る以外の、売り方や付加価値も考えたり、それなりに時間をかけてスタートしているブランドです。
▶︎4年前にスタートした「スタクティカ」とのアプローチの違いは?
「スタクティカ」のブランディング・ターゲティングを僕がディレクションしてきたのは、トップ競技者でもない、エンジョイ層でもない「中間層」を捉えることでした。今やスポーツブランドもユニフォームブランドもやろうと思えば誰でも始められる飽和状態の中、価格競争が始まっていました。僕は、自分のイメージするターゲット層からトップアスリートの求める高機能性をあえて全て兼ね備えずにコストを抑え、サイズ選択に迷わない身幅の型紙パターンを採用したり、お客様希望のデザインにプラスアルファの提案を加えてあげたり、お客様にはとにかく即レスしたりと、少しの工夫を積み重ねることで差別化を図ってきました。価格帯もブランドマッピングをして、一般消費者的に高くも安くもない「中間価格帯」を設定しました。
4年目の今シーズン「スタクティカ」が約140チームのオーダー実績が出て軌道に乗ってきたところで、既製品でアパレルやプラクティスシャツなどをそろそろ販売した方が良いのではないか、と考え始めた頃でした。
チームオーダーはそれなりに量産が出来るのでコストは抑えれるが、既製品となると小ロットで価格も上がってしまう。しっかり仕事として稼働させていくには価格設定も大事だし、それなりの仕様を保って中途半端なものは作りたくないと、非常に悩ましいところでした。
この辺りの理由が重なり少し腰が重くなりましたが、既製品アパレルは中間価格帯の「スタクティカ」とはレーベル分けして、よりこだわりを持って高級感を保ちつつ、丁寧に少しずつ地に足つけて進めていこうと決断しました。
例えば、服自体では刺繍加工をするとかタグをヴィンテージ加工にしたりとか。梱包ではステッカーをノベルティに入れたり、高級感の演出としてブラックダンボールを使用したりとか。物撮りも手を抜かずにしっかり撮っていますし、ブランドイメージに合うモデルを起用してスナップを撮影したり、アパレル業界としては当たり前のことなのかもしれませんが、素人スタートながら本当些細なことを手を抜かずに出来ることから始めています。今後も様々な壁にぶち当たっていくとは思いますが、仲間に力を借りながら頑張っていきたいと思います。
▶︎今回のA/Wでいうとどういったところにこだわっているのでしょうか。
例えば、このビーニーです。完全にアスリート目線になってしまうのですが、練習後とか試合後ってシャワー浴びたり、急いでて浴びれなかったり色々あるじゃないですか。そんなときにサッと被れるモノが欲しいと思ってました。形も深すぎず浅くかぶれてトレンド感あるモノになるようにこだわりました。あとは、やはりボンディングセットアップですね。仕入れたときに生地感がしっかりしていてシャリっとしている中にハリも感じ、高級感を感じました。試着してみると暖かく秋から冬にかけて長く一軍として手に取ってもらえると確信しました。原価を抑えるためにはプリント加工も出来たのですが、この素材感との相乗効果を期待して、刺繍加工を選択しました。着たときにシワも出にくく、スタイリッシュに着こなせるかと思います。
▶︎ブランドとしてどのような成長を目指していますか?
スポーツをする人、しない人関係なく誰でも手に取ってもらえる。敷居の高すぎない、でも何か持ってると特別感を感じられる、そして商品もちゃんと質が良いと思ってもらえることはプロダクトとしてもちろん。そして、着ていたら「なんかいいね」「なんかカッコ良いね」「それどこのブランド?」そんな風にしてコミュニケーションの一部になるようなブランドになっていけたら嬉しいですね。今では、まずは僕の選手時代のファンの方々や、SNSで応援してくれている人だったり、サプライヤー選手のファンの方などファンベースのところで周知があると思うので、そこを飛び越えていってこそ成功だと思うので、そうなっていけるように続けていきたいと思います。初めてすぐは売れなかったり上手くいかないことが続くと思うんですけど、途中で歩みをやめて投げ出してしまうことが一番の失敗だと思ってるので、上手くいかなくてもとにかく向き合って、改善を重ねてブランドをより良くしていきたいと思います。
▶︎今後の展望をお聞かせください。
STTCは実店舗を持たない、BASEオンラインショップを活用した販売をしているので、SNSでの購買者の口コミは感じ取れますが、実際の購入者のリアルな反応や感想を聞いてみたいというのはありますね。スタクティカのユニフォームは着用シーンがサッカーやフットサルと決まっていますが、STTCはまた違う立ち位置で、 「スポーツミックスがカジュアルに日常として溶け込んでいく服」というところがあるので、たくさんの人に知ってもらえるように主にInstagramを通して面白い取り組みをしていけたらなと思っています。