ブログ「心に残る旅」
私の人生を変えた旅
雪谷旅人
2014年1月末,74歳の私は意を決してパタゴニアへ21日の旅に出た。それまでは北米や欧州,アジアには仕事を含めて多くの国へ行ったが,南米は経験がなかった。しかもパタゴニアは最南端で,そのトレッキング・コースは厳しい。高齢の私で大丈夫だろうかと,かなり逡巡したが,背中を押したのはGreat Journeyと呼ばれる人類の旅だ。アフリカで人類が生まれ,アジア,北米から南米の最南端に辿り着いたヤマーナという原住民だ。なぜ彼らは極寒の地を選ばねばならなかったか。「地の果て」(End of the World)とはどんなところか。それを見たかった。
69歳のときリーマン・ショックで仕事がなくなり,「これからは旅だ」と勢いよく一人旅を重ねた。もちろん家族旅もあったが,一人旅は自由で気まま。ふらふらと世界中を歩き回った。東欧やバルカン半島,南欧や中国,アジアを歩き回った。
ロスからチリのサンチャゴ経由でプンタアレナスについたのは40時間後だった。「これがパタゴニアか」強い西風で木々が東へひん曲がっている。そこから北のパイネ国立公園,さらに北のフィッツロイへ行き,最南端のウシュアイアへ飛んだ。日程はゆっくり組んだのでそれほどきつくなかったが,パタゴニアの厳しさが身に沁みた。
最後にウシュアイアの”Moustacchio”というアルゼンチン・レストランで一人で食事をしていると,アメリカ人の団体が入ってきた。楽しそうに語らい,笑っていた。ずっと一人だったので,「グループ旅行もいいな」と思った。「帰ったらどこかの会に入ろう」と心に決めた。それまでは「グループ旅行」というは考えもしなかった。
帰国後「地球の歩き方」掲示板をみていると「シニアの旅仲間で集まろう」という投稿があった。すぐに返信し,最初のミーティングが新宿であった。今の「シニア・トラベラーの会」(STF)の始まりである。何となく代表に選ばれた。幸い,私は同窓会でこういう会の運営に慣れていたので,快く引き受けた。早速例会の会場を決めた。同窓会で使っていたURLが空いたのでそこにホームページを1週間で作った。その後の発展はご存知の通りだ。
9年間の代表として一番楽しかったのは,やはり例会や旅行で皆さんとともに旅の醍醐味を感じることだった。つらいこともあったが,楽しい思い出がいっぱいある。とくに仲間とのグループ旅行は企画から終わるまで,とても楽しかった。苦楽を共にして頂いた仲間たちには感謝の念しかない。
パタゴニアへの一人旅は,私の人生を変えた旅だった。2年後,今度はSTFの主催旅行として皆さんを引率し,再びMoustacchioへ行った。一人旅の経験はグループ旅行の大きな助けになった。ボリビア,カナダ,シャモニー….いずれも一人旅が糧になっている。