生存時間解析では, 被験者の生存時間や製品の寿命などの「イベント発生時間」に関するデータ解析法やモデル構築法を扱います(武富・山本, 2023). イベント発生時間を観測するには,被験者や製品の一定期間の追跡が必要ですから,観測の途中で,打ち切り・切断・競合リスクなどの現象が生じ,データは「不完全」となります( 道前,2025).加えて,経時的なイベント発生機序をモデル化するために,点過程やハザード関数を用いることがあります.このように,生存時間解析では,イベント発生時間の構造に適合した固有の統計モデルや解析法が必要となります.
医学研究や製品開発で用いられる生存時間解析の統計手法は古典的なものが殆どでしたが,近年では最新の研究成果を用いた高度な統計手法を用いる実証研究も増えています.例えば,がんの治療効果を調べるために被験者から測定する「代替エンドポイント」の検証(江村・大庭, 2024)では,illness-deathモデルやjoint frailty-copulaモデルなどの最新の生存時間解析のモデルが用いられました(Okui et al., 2024; 2025; Simon et al., 2025).
生存時間解析の研究は,統計学の中でも極めて活発な学術領域であり,現在も世界中の研究者が発展に貢献しています.