古代ギリシャ、ボイオティアの王アタマスには雲の女神ネペレとの間に、王子プリクソスと王女ヘレーという兄妹がいました。しかし、アタマス王がイーノと再婚すると、イーノは前妻の子供らを疎み、生け贄にしようと企てます。その危機を知ったネペレは大神ゼウスに助けを求め、ゼウスは黄金の毛並みを持ち、大空を飛ぶことのできる神聖な羊を遣わしました。兄妹は羊の背に乗って逃げ出しますが、旅の途中でヘレーは海へ落ちてしまいます。深い悲しみに包まれたプリクソスでしたが、羊に励まされながら、コルキスの国へ無事にたどり着きました。その後、プリクソスはコルキスの王女カルキオペーと結婚。そして、兄妹の命を救った黄金の羊は、その勇気と献身を称えられ夜空に輝く牡羊座となったと伝えられています。
古代フェニキアの王女エウロパは、その美しさと優しさで多くの人々から愛されていました。その姿に心を奪われた大神ゼウスは、妻ヘラに気づかれないよう、気高く美しい白い牡牛に姿を変えて、花を摘んでいたエウロパの前に現れます。穏やかで、凛々しい牡牛に安心したエウロパは、その背中へそっと乗りました。すると牡牛は突然走り出し、広 い海を渡って遠く離れたクレタ島へと彼女を運びます。そこでゼウスは本来の姿に戻り、故郷を離れて悲しむエウロパを優しく慰め、妻として迎えました。二人の間には三人の子供が誕生、幸せに暮らしたと伝えられています。また、エウロパの名は後にヨーロッパの地名の由来になったとも言われています。
大神ゼウスとスパルタ王妃レダの間に生まれた双子の兄弟、カストルとポルックスの物語に由来します。兄カストルは「人間」、弟ポルックスはゼウスの血を受け継ぐ「不死身の存在」できた。性質は違っても兄弟は深い絆で結ばれ、互いを支え合いながら数々の冒険を乗り越えていきます。しかし、ある戦いで兄カストルが命を落としてしまい、ポルックスは兄を失った悲しみに耐えられませんでした。その強い兄弟愛に心を動かされたゼウスは、二人が永遠に離れる事の無いよう、夜空に「ふたご座」として輝かせたました。この神話は、信頼や絆、助け合い、そして大切な人との心のつながりを象徴しています。
大神ゼウスと愛人アルクメーネの子供ヘラクレスは、自分の子供を殺した罪を償うため「十二の試練」のひとつであるヒドラ退治に挑んだ際に、登場する巨大なカニに由来しています。ヒドラは、九つの頭 を持つヘビで、その一つ一つの頭を切り落とす度に新たな二つの頭が生えてくる怪物です。ヒドラの友人である怪物カニのカルキノスは、へラクレスのことを嫌っているゼウスの妻ヘラにそそのかされて、ヒドラを助けようと勇敢にヘラクレスに戦いをいどみました。しかしその力は及ばず、踏みつぶされ命を落としてしまいます。その勇気と忠誠心を哀れんだヘラは、カルキノスは夜空へと上げ、かに座として永遠に輝かせました。大切な人を守ろうとする献身的な愛や優しさを象徴しています。
ヘラクレスの「十二の試練」の最初に登場するネメアの獅子退治に出てくる不死身のライオンが物語の由来です。ヘラクレスは、ゼウスの妻ヘラの企みによって自身の子供を殺してしまい、その罪を償うために獅子退治をする事になりました。ネメアの獅子は矢も剣も通さない硬い皮膚と鋭い牙や爪を持つ恐ろしい怪物で、多くの勇者が命を落としていました。ヘラクレスは自慢の矢を放つも歯が立たず、こん棒で殴りつけ、三日三晩に及ぶ激闘の末、遂に打ち倒します。そして獅子の皮を鎧として身にまとい、真の勇者として証を得ました。ヘラは倒れた獅子を哀れみ、その姿を夜空に上げ、しし座として輝かせました。勇気や強さ、困難を乗り越える不屈の精神を象徴しています。
豊穣の女神デメテルは、最愛の娘ペルセポネを冥界の王ハーデースにさらわれてしまいました。悲しみに暮れたデメテルは姿を隠し、その力を失った大地は花や草木が消え、実りもなくなりました。困り果てたゼウスはハーデースに娘を返すように命じますが、冥土の神の策略で二度と地上に戻れなくなるざくろの実を口にしていたハーデースは、毎年四ヶ月だけ冥界で過ごし、残りの期間を地上で暮らすことになります。そのため娘が地上へ戻ると大地に花が咲き、実りを訪れ、冥界へ帰ると冬が訪れるようになったと伝えられています。四季の移り変わりと自然の循環を象徴するとともに、実り、純粋さ、自然の恵み、母子の深い愛を象徴しています。
正義の女神アストレアは、人々が神々とともに平和に暮らしていた時代、天秤を手に善と悪を見極めながら地上の正義を守っていました。しかし大神ゼウスが地上へ送った美しい女性パンドラが、決して開けてはならない箱を好奇心から開けてしまいます。すると病や争い、不幸などあらゆる災いが世界中に広がり、人々の心は次第に悪に染まっていきました。神々は人間に失望し天界へ帰りましたが、アストレアだけは地上に残り、片手に天秤を持ち片手に 邪悪を断つ剣を握り、私情を入れないように目隠しをして、正義や思いやりの大切さを伝え続けます。しかし人々の争いは絶えることなく、ついに彼女も天界へ帰ることに…その時に持ち帰った天秤は天秤座となり、アストレア自身は乙女座となって夜空に輝くようになったと伝えられています。公平さや正義の大切さを教えてくれる物語です。
優れた狩人オリオンは、美しさと強さを兼ね備え、どんな獣も仕留めるほどの腕前を誇っていました。しかし、その力を過信したオリオンは、いつも自分が一番強くて、地上の全ての獣たちを倒せると豪語するようになります。その傲慢な姿を天上から見ていた神々は、オリオンを懲らしめるために、一匹のサソリを送り込みました。オリオンは小さなサソリを侮っていましたが、隙を突かれて猛毒の針で足を刺され、その毒によって命を落としてしまいます。勇気を称えられたサソリは、さそり座となり、オリオンもオリオン座として、夜空に上げられました。現在でも、さそり座が東の空に現れる頃にはオリオン座は西へ沈んでしまうのは、このためだと言われています。勇気、忍耐、謙虚さ、強さは力だけではないことを教えてくれる物語です。
時の神クロノスと女神フィリアの間に生まれたケイローンは、上半身が人間、下半身が馬という姿をしたケンタウルス族でした。荒々しい仲間とは異なり、知性と慈悲にあふれた賢者として知られ、芸術の神アポロンから音楽、医学、予言を狩りの女神アルテミスから狩猟の技を学び、多くの英雄たちの師となりました。ある日、弟子のヘラクレスが誤って放った毒矢が、ケイローンの足に刺さり、不死身であるため死ぬこともできず、激しい苦しみに耐え続けていました。その姿を哀れに思った大神ゼウスは、その苦しみを終わらせ、これまでの功績を称え天へ迎えました。こうしてケイローンはいて座となり、知恵と導きの象徴として今も夜空に輝いていると伝えられています。
ある日、神々がナイル川のほとりで宴会を開き、音楽好きで明るい性格の牧畜の神パーンも得意の笛を奏でて、楽しいひとときを過ごしていました。ところが、そこへ突然恐ろしい怪物テュフォンが現れ、神々に襲いかかりました。神々はそれぞれ動物の姿に変身して逃げ出し、大神ゼウスは鳥に、美の女神アフロディーテと息子のエロスは魚となって川へ飛び込みました。パーンも魚に変身して逃げようとしましたが、慌てたため上半身が山羊、下半身が魚という不思議な姿になってしまいます。こ の姿がやぎ座の由来となって伝えられています。困難な状況でも知恵と機転で乗り越える力や、柔軟に環境へ適応する力を象徴しています。
オリュンポスの神々の宴では、不老不死の酒ネクタルを注ぐ給仕役を青春の女神ヘベが務めていました。しかし、ヘベは英雄ヘラクレスと結婚をするためその役目を退き、新たな給仕役が必要となります。大神ゼウスは鷲の姿となり地上へ降り、美しい少年ガニュメデスを見つけると、天上へ連れて行きました。ガニュメデスは、神々の給仕役となる代わりに、永遠の若さと美しさを授かり、やがて水瓶を抱えた姿でみずがめ座となります。彼の水瓶からあふれる不老不死の酒は、命や恵みの象徴とされ、夜空ではその流れが南のうお座へ注いでいるように描かれており、人々へ恵みを分け与える心を表しています。
ある日、ナイル川のほとりで開かれた神々の宴に、美の女神アフロディーテと息子エロスも招かれていました。楽しい宴の最中、突然恐ろしい怪物テュフォンが現れ、神々はそれぞれ動物の姿に変身して逃げ出します。アフロディーテとエロスは魚の姿になってナイル川へ飛び込みましたが、離ればなれになることを恐れたアフロディーテは互いの体 をリボンで結びました。親子は力を合わせて無事に危機を逃れ、その深い愛情を称えて、二匹の魚はうお座として夜空に輝くようになったと伝えられています。親子の愛情にあふれた物語をもととなり、2匹の魚がリボンで結ばれた姿になったのがうお座と言われています。
エチオピア王ケフェウスと王妃カシオペヤの娘アンドロメダは、息をのむほど美しい姫でした。しかし、母カシオペヤがその美しさを誇りすぎたことで神々の怒りを買い、国は災いに見舞われます。やがてアンドロメダは、荒れ狂う海辺の岩に鎖でつながれ、怪物くじらへの生け贄として差し出されることに。恐怖に震えながら助けを待つ彼女の前に、メデューサを倒して帰る途中の英雄ペルセウスが舞い降ります。夕暮れの空の下、激しい戦いの末に怪物を討ち果たしたペルセウスは、アンドロメダを救い出しました。この勇壮な物語の登場人物たちは、今も秋の夜空に星座となって輝いています。
世界の西の果て、ヘスペリデスの園で、大神ゼウスと女神ヘラの黄金の木を守る番人として竜がいました。昼夜を問わず大切な宝を見張り続けていましたが、ある時ほんの一 瞬居眠りをしてしまい、その隙に黄金のリンゴを奪われてしまいました。それでも長年にわたり忠実に使命を果たし続けた功績は神々に認められ、竜は星座となって夜空へ上げられました。大きくうねるその姿は、今も北の空で力強く輝き続けています。
大神ゼウスが美少年ガニュメデスを天へ連れ去るために変身した鷲と伝えられています。また、人間に火を授けた罰により岩山につながれたプロメテウスのもとへ毎日舞い降り、その肝臓をついばむ鷲とも言われています。力強く大空を舞う姿は、今も夏の夜空に輝いています。
海の神ポセイドンの忠実な使いであるイルカは、求婚から逃げたアンフィトリテを懸命に探し出し、その居場所をポセイドンへ伝えます。その功績が認められ星座として天に上げられました。また、イルカに襲われた名音楽家アリオンが荒れる海へ身を投げると、一頭のイルカが勢いよく駆けつけ、その背に乗せて無事に岸へ送り届けました。勇敢で心優しいイルカの姿は、今も夜空で輝き続けています。
月と狩りの女神アルテミスに仕えていた美女カリストの悲しい物語が伝えられています。大神ゼウスに愛され息子アルカスを授かったカリスト、それに嫉妬したアルテミスによってみにくい熊の姿へと変えられ、深い森へと追いやられてしまいます。月日は流れ、立派な狩人となったアルカスは、ある日、森の中で熊に姿を変えたカリストと出会います。息子に気付いたカリストは、喜びのあまりアルカスに近づいていきますが、その熊が母であることを知らないアルカスは、弓を引いてしまいます。その悲劇を見たゼウスは二人のためにカリストをおおぐま座、アルカスをこぐま座として夜空へ上げ、親子は永遠に輝き続けることになりました。
カシオペヤはアンドロメダ姫の母であり、古代エチオピアの王妃です。娘の美しさを自慢したカシオペヤは、神々の怒りをかい、その罰としてイスに縛りつけられたままの姿で、星座にされてしまいました。自身のおごりのせいで愛する娘をくじらの生け贄に差し出す悲劇へとつながり、更に北の空で北極星のまわりを絶えずぐるぐると巡り続けることとなりました。時には逆さまにひっくり返りながら、今も夜空を駆けるように輝き続けていると伝えられています。
勇者ペルセウスが恐ろしい魔女のメドューサの首を切り落とした瞬間、その流れ出た血の中から、純白の翼を持つ天馬ペガススが力強く飛び立ったと伝えられています。大空を自在に駆け巡るペガススは、その後も数々の冒険で英雄たちを助け、神々に愛される存在となりました。その勇壮な姿は、今も秋の夜空で翼を広げて輝いています。
大神ゼウスの変身に由来すると伝えられています。ゼウスは美しいスパルタの王妃レダに心を奪われ、妻ヘラの目を避けるため、気高く美しい白鳥の姿へと変身しました。そして静かに湖へ舞い降り、レダと出会います。その優雅で神秘的な白鳥の姿は、やがて星座となり、今も夏から秋の夜空を大きく羽ばたくように輝いています。
「オルフェウスのたて琴」として語り継がれていること座の物語。音楽の神アポロンの子オルフェウスは、琴の名手として知られ、美しい妻エウリディケと幸せに暮らしていました。ところがある日、エウリディケは毒蛇にかまれて命を落としてしまいます。悲しみに暮れたオルフェウスは、妻を取り戻すため死の国へ。 美しい琴の音色で冥界の王プルートンの心を動かし、「地上へ出るまで決して振り返らない」という約束で妻を連れ帰ることを許されます。しかし出口を目前にした喜びから思わず振り返ってしまい、エウリディケは再び死の国へ引き戻されてしまいました。悲しみのうちに生涯を終えたオルフェウスを哀れんで大神ゼウスはその琴を夜空のこと座としました。
アルカディア王リュカオンの伝説に由来するとされています。リュカオンは大神ゼウスの力を試そうと、人間の肉を牛肉と偽って食卓に出し、その不敬な行いに激怒したゼウスは、王を恐ろしいおおかみの姿へと変えてしまいます。この神話は、人を欺くことや神への冒涜が厳しく罰せられることを伝える物語です。また、古代ではおおかみ座は独立した星座ではなく、ケンタウルス座の一部と考えられており、後に現在の「おおかみ座」として区別されるようになりました。