QGISで放射線量分布地図をつくる方法を解説します。(パソコン中級者向け) 詳しい説明になるよう少しずつ改訂していく予定です。
2013.4.28
1-2. 国土地理院の基盤地図情報をダウンロードする。の、ファイル変換方法 を改訂しました。
1-4. 地図情報のスタイルを整える。の、等高線25000のスタイルについて を改訂しました。
1-8-3. マップチップスとして表示 を加えました。
内容目次
目標1 QGISをつかって文科省航空機モニタリング空間線量率データ地図をつくる。
1-1. QGISをダウンロードして起動する。
1-2. 国土地理院の基盤地図情報をダウンロードする。
1-3. QGISに基盤地図情報を読み込み、プロジェクトを作成する。
1-4. 地図情報のスタイルを整える。
1-5. 文部科学省 ウェブサイトから「航空機モニタリングで測定された空間線量率の測定結果」csvをダウンロードする。
1-6. QGISに読み込む。
1-7. 線量値シンボルに色を割り当てる。
1-8. 地図上で線量値を表示する。
目標2 自分で測定した放射線量の分布地図をQGISで作る。
2-1. 線量分布地図をつくるための線量計をえらぶ。
2-2. GPSと線量計を組み合わせる。
詳しい手順の説明
目標1 QGISをつかって文科省航空機モニタリング空間線量率データ地図をつくる。
1-1. QGISをダウンロードして起動する。
QGISはソースが公開されている無料ソフトです。ボランティアグループが開発・維持しているソフトであり、ライセンスは GNU Public Licenseに準拠しています。 ダウンロードは次のサイトできます。http://www.qgis.org/ 使用するパソコン、OSにあわせてダウンロードしてください。
QGISマニュアル日本語訳は次のサイトで入手できます。http://docs.osgeo.jp/foss4g/qgis/user_guide-1.6.0/user_guide.html#user_guidech1.html
初心者のためのQuantum GIS入門: http://www.osgeo.jp/wp-content/uploads/2010/11/qgis_hands_on_foss4g2010.pdf
注:筆者はMacを利用しているので、以降の解説で他のOSと多少異なる部分があります。
1-2. 国土地理院の基盤地図情報をダウンロードする。
国土地理院の基盤地図情報をダウンロードするためには まず初めに 利用者登録(無料)します。
http://www.gsi.go.jp/kiban/index.html から、ダウンロードサービス画面にはいって、基盤地図情報縮尺25000JPGIS形式(サンプルは福島県)をダウンロードします。災害復興計画基図(沿岸部)は有料(170円/地図)です。
QGISではJPGIS形式を直接扱えないので、 http://psgsv.gsi.go.jp/koukyou/public/sien/pindex.html 公共測量ビューア・コンバータを利用して、シェープファイル(.shp)に変換します。
1-3. QGISに基盤地図情報を読み込み、プロジェクトを作成する。
「ベクタレイヤの追加...」で、上記 1-2.で作成した シェープファイル(.shp)を読み込みます。
QGISマニュアル日本語訳:http://docs.osgeo.jp/foss4g/qgis/user_guide-1.6.0/user_guide.html#user_guidech1.html
1-4. 地図情報のスタイルを整える。
左のレイヤ欄でレイヤ名をダブルクリックしてレイヤプロパティを表示し、 「スタイル」タブ画面で地図として見やすいように道路縁や等高線の色を整えます。ディスプレーによっても見え方は変わので、適宜改良してください。
標高点25000:左のレイヤ欄でレイヤ名チェックボックスで非表示設定します。
道路縁25000: レイヤプロパティ「スタイル」タブの「共通シンボル」で線色を適当に選びます。例では暗い黄緑を使いました。
水涯線25000:川、水路、池の周囲の線です。青にして、幅を「0.3」にしました。
行政区画代表点25000:代表点の名称を表示します。「ラベル」タブで「ラベルを表示」チェックボックスをオン、「ラベルが含まれているフィールド」で「名称」を選択します。「スタイル」タブで「シンボルの大きさ」を「0.00」にします。
等高線25000:「標高カラム」が文字列になっているので、整数に変換します。レイヤメニューから属性テーブルをオープンして、「えんぴつボタン」をおして、編集モードにします。一番右の「フィールド計算機のオープン」ボタンを押して、整数フィールドを作るためのウィンドウをあけます。新しく作るフィールド名を「cont」フィールドタイプを「整数(integer)」」出力フィールド幅を「6」にして、関数リストの「変換」から「toint」、「フィールドと値」から「"標高"」を選び、「)」を加えて、「toint("標高")」にします。「OK」ボタンをおすと、「cont」カラムが追加されますので、確認してください。レイヤプロパティ「スタイル」タブの「共通シンボル」を「段階にわけられた」に変更、「カラム」を「cont」に割当て、「色階調」を「Greens」、「分類数」を「47(福島県の場合)」にします。
他のレイヤも適当に設定してください。
1-5. 文部科学省 ウェブサイトから「航空機モニタリングで測定された空間線量率の測定結果」csvをダウンロードする。
文部科学省の放射性物質の分布状況等調査データベースがウェブ公開されています。 http://radb.jaea.go.jp/mapdb/top.html
航空機モニタリングで測定された空間線量率の測定結果(H24.6.28換算)の「詳細データダウンロードcsv形式(utf-8)」か 「詳細データダウンロードcsv形式(shift-jis)」をダウンロードし、解凍します。(サンプルは「福島県双葉郡葛尾村」)
エクセルで開いて、1列目を「測定座標 東経(10進法)」、2列目を「測定座標 北緯(10進法)」、3列目を「空間線量率(μSv/h)」にし、csv形式で保存します。
Macエクセル (shift-jis) で作業した時はQGISで文字化けしないようエンコーディングを (他のエディタなどで)utf-8に変更します。
1-6. QGISに読み込む。
「プラグインの管理」から「デリミテッドテキストレイヤを追加する」チェックボックスをオンにします。「デリミテッドテキストレイヤを追加」ボタンかメニューバー「レイヤ」から「デリミテッドテキストレイヤを追加」を選び、「参照...」ボタンをおして5.で作成したファイルを選択します。座標系はWGS84を選びます。「 デリミテッドテキストレイヤを追加」のアイコンはカンマ入りの書類です。
ファイルの指定ウィンドウの例を示します。
1-7. 線量値シンボルに色を割り当てる。
シンボル色割り当て例です。
左のレイヤ欄で線量値レイヤをダブルクリックしてレイヤプロパティを表示し、 を「スタイル」タブで「段階に分けられた」、分類数を「12」、カラムに「空間線量率(μSv/h)」をえらびます。色階調は適当なものがなかったので、「新しいカラーランプ」として自作しましたが、はじめは選択できるものの中から様子をみてもよいかもしれません。「シンボル」の「◯」をダブルクリックして、1つずつ指定してくことができます。「範囲」や「ラベル」も同様に指定しました。「スタイルを保存...」すると、他のレイヤやプロジェクトでも利用できます。
1-8. 地図上で線量値を表示する。
1-8-1. ラベルとして表示
左のレイヤ欄で線量値レイヤをダブルクリックしてレイヤプロパティを表示し、 「ラベル」タブで「ラベルを表示」チェックボックスをオン、「ラベルが含まれているフィールド」で「空間線量率(μSv/h)」を選択します。
1-8-2. 地物情報表示
地図上の地物(この場合は線量測定点)の情報をカーソルでクリックして表示します。
左のレイヤ欄で表示したいレイヤを選択します。メニューバーの地物情報表示ボタンをクリックすると、カーソルが矢印「i」の表示になります。地図上の地物をクリックすると、地物情報ウィンドウがあきます。▷をクリックして下向き三角▽にすると、詳細な情報が表示されます。レイヤプロパティの「一般情報」タブで「フィールドを表示」欄を「空間線量率(μSv/h)」に選ぶと、「空間線量率(μSv/h)」の値が一番上に表示されます。
地物情報表示ボタン
と情報表示ウィンドウです。
1-8-3. マップチップスとして表示
メニューバー「ビュー」で、「マップチップス」をオンにし、レイヤプロパティ「一般情報」の「フィールドを表示」で「空間線量率(μSv/h)」を指定すると、カーソルを指定レイヤの地物にあわせたときに、マップチップスとして表示されます。
目標2 自分で測定した放射線量の分布地図をQGISで作る。
2-1. 線量分布地図をつくるための線量計をえらぶ。
線量計の感度の高さは時間応答性の速さに関係します。高い感度の線量計は 自動車などで走行しながら細かなホットスポットを見つけたりするのに必要です。歩いたり ゆっくり移動して測定する場合にはさほどの高感度は必要ありません。
放射性核種を識別するにはガンマ線スペクトルの計測が有効です。ガンマ線を出さない核種については、ガイガー管をつかって遮蔽をつける・つけないの差から(アルファ線)ベータ線量を推定するのが有効かもしれません。中性子線についてはこれに感度のあるシンチレータを内蔵した線量計もあります。ただしこれらの測定には時間を要するので 移動しながらでは その地帯の平均的な値しか測定することはできません。
2-2. GPSと線量計を組み合わせる。
GPSによる測位情報(緯度、経度、高度)と線量計測値を同時に記録してQGISで利用できるデータ・ファイルを生成するシステムを用います。
GPSの測位精度は、繰り返し線量測定する場合に測定場所を正確に再現できるかどうかなどを決めるので重要です。GPSには 測位誤差が公称10m(捕捉する衛星の数・条件などで実効の誤差はもうすこし小さい)である スマートフォンに内蔵されているタイプやカーナビゲーションにつかわれるレシーバー、準天頂衛星や他の測位衛星システムもあつかえる GPSレシーバー、測位精度を高めるために地上固定局や静止衛星からの電波も同時に受信して測位する Differential GPS(DGPS)などがあります。DGPSに関する説明が下記サイトにあります。
www.enri.go.jp/~sakai/pub/symp06_tutorial.ppt
さらに地震予知のためなどに使われているシステムでは GPS電波の位相の情報もつかい 数cmの測位精度がえられます。
ちなみに カーナビゲーションやスマートフォンのアプリケーションでは測位精度の足りないこともあって 測定結果の表示点を道路や線路に引き寄せて見栄えを良くする機能が内臓されていたりして、注意が肝要です。
GPSの座標系については QGISによる処理に整合させるために WGS84を選びます。