Q.1 「日本語教育に興味があります」
まずは、日本語教育概論1(前期開講)を受講して下さい。聴講でも構いません。概論(introduction)は、日本語教員養成プログラムの入口の科目として、日本語教育の全般について、広く薄く紹介しています。まずはこの科目を受講して下さい。時期が合わない場合は、日本語教育概論2(後期開講)でも構いません。基本的には、日本語教育概論1の授業を受講して、はじめてスタートラインに立つということです。
Q.2 「「日本語教育プログラム」はお金がかかりますか?」
かかりません。
Q.3 「どうしたら「日本語教育プログラム」に参加できますか?」
学事第2課(文学部事務)へ行って、そこで登録申請をしてください。登録は4年生の前期までできますが、可能な限り、早く登録して欲しいです。
Q.4 「「日本語教育プログラムは4年生前期からでも登録が可能」と書いてあります。私は4年生なのですが、今からプログラムに参加可能ですか?」
注意してほしいのは、4年生前期スタートで取得できるようなプログラムではないことです。4年前期に登録が可能としているのは、登録していなかった学生で4年前期までに、既に、プログラム関連の科目の単位をかなり取っていて「これなら、あと3〜4科目取ればプログラムを修了できるみたいだ」という学生のためにその時期までの登録を認めています。ゼロスタートの学生の場合は、遅くても3年後期にはスタートしていて欲しいです。
Q.5 「誰でも日本語教師になれますか?」
きちんと勉強して日本語教育の訓練を受けた人だけがなれます。特に、2025年度から「登録日本語教員」という国家資格化がされました。日本語学校や大学予備教育(留学生別科など)で教えるためには、これに合格し、資格を取らなければなりません。もちろん、資格がなくても教えられる場はあるのですが、日本語教師を職業としてやっていきたいなら、これくらいの資格が取得できないようでは覚束ないと思います。
Q.6 「どうやったら登録日本語教師の資格が取れますか?」
「基礎試験」と「応用試験」を受けて、それに合格し、認定日本語教育機関で「教育実習」を受けると取得できます。まだ実施されて1回目なので、まとまった過去問題のようなものはないのですが、今まで実施されてきた認定試験の“日本語教育能力試験”の過去問は1つの目安になるでしょう。教育実習は日本語学校などに別途授業料を支払って実習に行かなければなりません(このあたりは、国語教職などと同じイメージです)。
Q.7 「大学の科目にある「日本語教育実習」と、登録日本語教員の資格取得のための「日本語教育実習」というのは同じものですか?」
残念ながら違います。創価大学はまだ実践研修の認定校になっていませんので、当面は日本語学校などへ行って教育実習をしなければなりません。しかし、実力をつけるという意味では大学の日本語教育実習は有意味な科目だと言えるでしょう。
Q.8 「「日本語教育能力検定試験」と「登録日本語教員」は別のものですか?」
はい、別のものです。「日本語教育能力検定試験」は認定試験で、英検のような、その人の能力を示すためのレベルのようなものです。一方、「登録日本語教員」は国家資格で、国語教職などと同等のステータスのものです。今のところ、現役の大学生は「日本語教育能力検定試験」を目指して勉強しているようです。次第に「登録日本語教員」の資格のほうが優勢になるでしょうから、両睨みで考えておいてください。ただし、試験内容はかなり類似点・共通項が多いので、そこは安心してください。
Q.9 「日本語教師の職場ってどんなところがあるんですか?」
大きく3つ。①大学の留学生センターや留学生別科と呼ばれる大学附属の日本語教育コース、②民間の日本語学校や専門学校、③その他(小中学校の取り出し授業など)です。①は安定していますが、入るために博士号まで求められます。②は四大卒でも就職は可能です(修士まであるのが望ましいのですが)。③はパートタイムになります。海外に目を向けると、職場はグッと広まってきます。
Q.10 「海外には行きたくないのですが、日本語教師になれますか?」
日本国内にも日本語学校はたくさんありますので、日本国内で日本語教師になる、ということは可能です。
但し、あなたがまだ大学生であるなら「海外に行かない」理由は何でしょうか?健康上の問題を抱えている人、家族の問題を抱えている人、等、さまざまな理由があるので、決してそれ自体を否とはしません。しかし、日本語教師はさまざまな国の人々を相手にコミュニケーションを取りながら進めていく仕事です。自分自身が海外生活をして、その苦労を知っているということは、とても大切なことだと思います。あなたが若い大学生であるなら、入口の段階で海外に行きたくないと決めつけるのは良いこととは思えません。機会があれば、世界のどの国にでも行ってみたいという姿勢は持っていて欲しいです。
Q.11 「行きたい国はありますが、行きたくない国もあります」
憧れの国があっても良いですが、そこに行っても、嫌なことも大変なこともあります。行きたくない国―例えば途上国などでしょうか―と思っているところでも、行ってみたら素晴らしいところもたくさんあるでしょう。何より、日本語を学ぶ学生には様々な国の学生がいます。どの国が好きとか嫌いとか、そういう思想がない人が日本語教師に向いていると思います。どの国にも興味がある、というくらいの好奇心は持っていて欲しいと思います。
しかし、給料が少ないからその国に行きたくない、という理由はありうるでしょう。日本語教師は仕事でやっていますから、給料が少なくて日本に帰国できなくなる、将来設計が難しくなる、というなら、そういう理由で行きたくない国があるというのは理解できます。
Q.10の回答と絡みますが、それでも若いうちは修行だと思って「どこでも行ってやろう」くらいで飛び立って欲しいです。一生そこに住めというわけではありませんから、数年やってみて、また次の国へチャレンジ、で良いんじゃないでしょうか。
Q.12 「日本語教師は外国語ができないと駄目でしょうか?」
模範回答:日本語教育は媒介語(英語などや、学習者の現地の言葉)を使わなくても、日本語で日本語を教えるということは技術的にできます(直接法といいます)。むしろ、あまり英語や現地の言葉でベラベラと説明してしまうような日本語教育は望ましいものではなく、可能な限り、日本語で日本語を教えるということが私達ネイティブスピーカーの教員には求められます。
私の回答:言語を教える立場の人間が、自分で1カ国語も習得できていないのはおかしいのではないか。自分が何らかの外国語を苦労して習得したという経験が、ある日本語教師と、ない日本語教師では、自ずとその教育の、中身、質に、差が出てきます。試合に出たことのない人がコーチになれるんでしょうか。中級くらいのレベルでもいいから、なんらかの外国語を、ひと山越えた程度に習得はしていて欲しいなと思います。とにかく、その苦労をしようという「同苦」の姿勢が大切ですね。
Q.13 「国語の科目が得意でした。それは利点になりますか?」
私は「はい、なります」と回答します。いわゆる日本語の「教え方」は国語とは全く異なります。でも、科目の知識として頭に入っていることは決して無駄ではありません。日本語教育をやっていて、漢字を間違えるような先生じゃ困りますし、読解力だって作文能力だって高いほうが良いです。それは、高校生までの国語の授業の中で学んでいるはずです。繰り返しますが、教え方は日本語教育のやり方でやらなければなりません。ですから、初級あたりでは、ほとんど国語の意味を感じないでしょう。でも、上級くらいになったときには、学生たちは作文やレポートの書き方、高度な漢字語彙の学習などをするようになりますし、かなり難しい、それこそ日本の文学作品を読んだりするような授業もやるようになります。そうなったときに、高校生までに学習していた国語の知識は大いに役に立ちます。勿論、それをどうアレンジしてプレゼンするかというところは日本語教育の枠内で工夫が必要です。
Q.14 「日本に住む外国人のために何か役に立ちたいので、日本語教師になりたいです」
必ずしも日本語教師でなくても構わないんじゃないでしょうか。ホームステイの受け入れや、外国人を連れてハイキングに行ったり、自宅の庭でバーベキューパーティーを開いて招待してあげたり、そういう活動のほうが在住外国人は喜ぶと思います。会社員や公務員になっても、外国人のために役立つことはできます。
Q.15 「国語の教職にも興味がありますが、日本語教師にも興味があります」
本学の「日本語教育プログラム」は国語教職の科目との被りが多く、親和性が高いので、両方を同時に目指すことは可能です。英語や社会科の教職は被りがないので大変ですが、それでも、基礎プログラムだけなら十分に両立可能です。Q.14のフォローになりますが、国語教員などや、会社員や公務員でも「日本語教育の素養のある人材」が社会へ出ていくことは有益なことだと思います。そのために基礎プロだけというのも、本人の可能性を拡げるためには十分な挑戦だと思います。
Q.16 「大学院へ進学する必要はありますか?」
少し以前は、ほぼ、Yesと答えていたのですが、最近は、考えを変えました。日本語学校の待遇も随分良くなってきていて、ゼミ生も日本語学校に就職して行っているのを見て、四大卒でも就職が可能なら「まずは教壇に立ってみて、日本語教育をやってみたらいい、それで向いていると思って一生の仕事にしたいと思ったら院へ進学すればいい」と思います。
Q.17 「日本語教師に必要な能力は何ですか?」
研究者の視点です。指導書を開けば、教え方の説明は載っていますし、積み重ねられてきたシラバスは概ねは妥当ですから、それに従ってやれば、概ねは無難に授業はできます。しかし、その項目がどういうものなのか、この語とこの語の違いは何だろうか、という具合に、自分自身で深く探求して理解していくことが大切です。そして、それをどうプレゼンしていくのかという工夫する能力も大切です。となると、これはもう研究力の1つだと言えます。すると、やはり、Q.16のように院へ進んで、研究力を養うことに繋がっていきます。
Q.18 「日本語教師、儲かりますか?」
蔵が建つような職業ではないですね。大学の留学生センターなどの専任教員になれたら、会社員よりもずっと多くの給料が貰えますが、大学就職のためには博士号が必要です。そこまでやるかどうか。民間日本語学校の専任教員には四大卒でもなれます。最近は昔と比べて待遇も良くなってきましたし、優良な日本語学校というのも多数あります。全く食べていけないと決めつけることもないと思います。
Q.19 「何歳からでも日本語教師になれますか?」
30前半くらいなら、まだチャレンジしても良いと思いますが、40代以上の人にはお勧めしません。
Q.20 「定年退職後にやりたいです」
「職業」という角度から言うと、「シニアでもなれます」という事実はなくて、大学・日本語学校・専門学校にも定年退職があります。そうなると、その年齢から専任教員としての正規就職はありません。パートタイム(非常勤講師)として、数コマの授業を受け持てる可能性はありますが、そこにも定年制はありますし、何より、パートタイムではとても「職業」として生計は立てられないですよね。そして、シニアの枠には、シニアスタートじゃない人、つまり、私のような人が定年退職後に履歴書を送ってくる可能性もあるわけです。ですから、そういう元プロのような人とも競合しなければならない、という現実があります。Q18、Q19のフォローになりますが、まだ若くて「どうしても日本語教師になりたい」という強い意志がある人ならチャレンジする意味はありますが、遅くにスタートしては、費用対効果が見合わないです。シニアの可能性があるのは、Q.9③じゃないかなと思っていますが、どうなるでしょうか。
Q.21 「ボランティアでやりたいです」
それ自体は否定しませんが、私自身は若い頃から、プロとしてやって来ました。無給で参入する人が多くなると、プロとしてやって行こうとしている人たちの雇用を奪うだけにならないだろうかという心配は持っています。Q.14に関連しますが、必ずしも教師としてでなくても良いのではないでしょうか。
Q.22 「日本語教師をしていて嫌だったことはありますか?」
対学生という面で言えば、某大学で教務主任だった時代に、成績不振の学生や犯罪を犯した学生に退学の通達をした時です。日本語教師も「教師」ですから、教師として思いつくような大変なことはいくらでもあります。
Q.23 「日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?」
22年間、本職でやってきて、辞めたいと思ったことは0.1秒もありませんでした。それは、3つの理由があったと思います。1つめは、この職に就くためにかなりの努力をして勝ち取った仕事だからということ、2つめは、大変だと感じることが教壇以外の周辺的なことばかりだったということ、3つめは、この仕事が自分の性格に合っていたということ、があるかと思います。
Q.24 「高校生です。創大へ進学して日本語教師を目指したいです。今、何をすればいいでしょうか?」
Q.13の答えと関連しますが、今できるのは国語の授業を頑張って下さい。英語も良いでしょう。漢字検定とかも挑戦する価値は大いにあります。諸外国に関しての雑学本などもお勧めします。今できることをしっかりとやって下さい。
Q.25 「日本語教師のどんなところが良いですか?」
普通に出勤して教卓に座っているだけで、世界中の人がやってきて、様々な話を日本語で聞けること。毎日新しい発見があること。自分の研究と最もリンクした職業であること。国のために役立っていると感じられること。1回1回の授業での成功・不成功がはっきり感じられ、1学期での自分の成果がはっきり見えること。
Q.26 「これから始めたい人にアドバイスは?」
Q.1に戻るようですが、とにかく、この業界に関する「事前リサーチ」をきちんとしてください。