※現地参加者の把握のため、本講演に現地参加を希望される方は、以下のGoogle Formから1月21日までに登録をお願いいたします。
2025年1月25日(土) 15時15分開始~18時ごろ終了予定(延長の可能性あり)
一橋大学千代田キャンパス6F 第1講義室(Zoomによる配信もあります。詳細は下記の問い合わせ先にご連絡ください)
会場までのアクセスについてはこちら(https://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/hitotsubashi.html)をご覧ください。
当日の入館は、正面玄関ではなく、休日夜間出入口からの入館(要身分証明書提示)となります。入館ルートについてはこちらをご確認ください。
会場は飲食禁止です。
当日は他のフロアで論文審査試験を行っておりますので、他のフロアには立ち入らないようお願いします。
坪井祥吾(一橋大学大学院社会学研究科 総合社会科学専攻 博士課程)https://researchmap.jp/shogo_tsuboi
豊岡正庸(北海道大学大学院文学研究院・日本学術振興会特別研究員(PD))https://researchmap.jp/toyonobu
tsuboishogo98[at]gmail.com ([at]を@に変える)
本発表では穏健な推論主義(moderate inferentialism)と呼ばれる立場から、論理結合子に対し、12の指標を提示する。加えて、二値真理表で記述可能な二項論理結合子の中で、どのような論理結合子がそれぞれの指標を満たすかを明らかにする。また、得られた結果を主張や否認といった言語行為を用いて解釈することで、論理結合子に関する哲学的考察が与えられうることを示す。なお、12の指標のうちの6つはすでに(Garson 2001, 2010, 2013)で提案されたものであり、それ以外の6つの指標は本発表で新たに提示されるものである。
「言語の意味はその使用によって説明される」という説は(Wittgenstein 1953)で提唱され、意味―使用説と呼ばれる。使用の中の特に推論という実践に着目し、意味の説明を与えようとする立場が推論主義である(cf.(Brandom 1994))。推論主義に対置される立場は、真理概念や真理条件、モデルを推論に関わる概念から入手不可能な概念として用い、言明の意味を説明する立場である。
論理学における形式言語は言語の一種であり、論理結合子は形式言語における一表現である。そのため、論理結合子に対し、どのような推論主義的な意味論が可能か、という問をたてることができる。論理結合子に対する推論主義的な意味論として著名なのは、(Prawitz 1973)や(Dummett 1991)で研究された証明論的意味論(Proof-theoretic semantics)である。証明論的意味論では、自然演繹の導入規則が当該の論理結合子の意味を定義する、と解される。例えば「∧」の意味は「∧」の導入規則により定義されている、とする。そのうえで、「∧」に関する他の規則や証明は、「∧」の導入規則にある意味で還元される、とするのが証明論的意味論の基本戦略である。
証明論的意味論の登場の後、推論主義的な論理結合子の意味の説明は様々な発展を遂げたが、こうした説明は以下の二つの立場に大別可能である:
[厳格な推論主義]:論理結合子の意味は、論証や証明、推論規則によって完全に説明される
[穏健な推論主義]:論理結合子の意味の説明には、真理概念や真理条件、モデルの概念も用いるが、それらは、何らかの意味で論証や証明、推論規則により入手可能である
先述した証明論的意味論は厳格な推論主義に分類される。穏健な推論主義は真理条件や真理、モデルを用いる点において、推論主義に対置される立場であるように一見すると思える。しかし、これらの概念が何らかの意味で論証や証明、推論規則により入手可能としている点において、推論主義的である。
本発表では、穏健な推論主義に分類される研究として、(Garson1990, 2001, 2010, 2013)におけるアプローチに着目する。このアプローチでは推論関係と真理概念が前提とされるが、真理条件は前提にされない点にその特色がある。推論関係とは論理式の集合ΓとΔのペア(Γ, Δ)であり、Γは前提、Δは帰結を表現する。Garson自身は以下の二種類の推論関係を考えている:
(1) ΓとΔがそれぞれ二つ以上の論理式を含んでいてもよい推論関係
(2) Δが高々一つの論理式しか含まない推論関係
そのうえで、全論理式の集合から真理値Tと真理値F(真と偽)への付値関数を考えるが、ここでは付値関数に何の制約も課さない。ゆえに、v(A)=v(B)=T
であるが、v(A∧B)=Fとなる付値関数vも許されている。自然演繹における「∧」に関する推論規則から入手可能な真理条件に基づいて、このような付値関数を排除できるか、という問がGarsonの一連の研究における問の一つである。この問いに答えるにあたり、(Garson 2001, 2010, 2013)は「公理的定義可能性」「局所的定義可能性」「大域的定義可能性」という、論理結合子に対する3種類の定義可能性を提案し、2種類の推論関係の種類と掛け合わせ、6種類の指標を提示した。この6種類の指標それぞれについて、先述の問いへの解答が与えられている。たとえば、(2)の推論関係を採用し、大域的定義可能性を用いた場合、「∧」に関する自然演繹の推論規則から得られる「∧」の真理条件は、v(A)=v(B)=Tであるが、v(A∧B)=Fとなる付値関数vを排除することが知られている。
本発表では、Garsonの試みを二つの点で発展させる。第一に、新たに6つの指標を提示する。具体的には、(1)と(2)に加え、以下の二種類の推論関係を考える:
(3) Γが高々一つの論理式しか含まない推論関係
(4) ΓとΔがそれぞれ高々一つの論理式しか含まない推論関係
これら2つの推論関係を考えることで、先述の3つの定義可能性と掛け合わせて、新たに6つの指標を得ることができる。本発表では既存の6つの指標と合わせて、12の指標を扱う。第二に、Garsonは「∧」などの、よく言及される論理結合子のみを扱っているが、本発表では二値真理表で記述可能な二項論理結合子すべてを扱う。具体的には、二値真理表で記述可能な二項論理結合子のうち、どのような論理結合子が、それぞれの指標を満たすかを明らかにする。加えて、(1)~(4)の推論関係を主張や否認といった言語行為から解釈し、得られた結果がどのような哲学的含意をもちうるかを考察する。