タイトル・アブストラクト(五十音順・敬称略)
石橋典
Cyclic quantum Teichmüller theory
Incarnating the ideas of Kashaev, we explicitly construct a finite-dimensional projective representation of the dotted Ptolemy groupoid when the quantum parameter is a root of unity, which correctly gives the central charge of the SU(2)-WZW theory. We call it the cyclic quantum Teichmüller theory, as its central ingredient is the cyclic quantum dilogarithm.
We give a new interpretation of the parameter relation involved in the pentagon identity in terms of the mutation of coefficients, so that we can use the cyclic quantum dilogarithm to describe the quantum cluster transformations at roots of unity. We also clarify its relation to the Kashaev’s invariant of links.
上村宗一郎
On the volume conjecture for the quantum invariant of three dimensional manifolds based on the Teichmüller TQFT
非コンパクトな構造群に対する量子 Chern-Simons 理論に対する数学的定式化は十分になされていない. しかし, Andersen, Kashaev は量子 Teichm¥"{u}ller 理論に基づいて, 構造群が $SL(2,¥mathbb{C})$ で与えられる量子 Chern-Simons 理論に対応することが期待される位相的場の理論 (TQFT) を構築した. この位相的場の理論は Teichm¥"{u}ller TQFT と呼ばれている. そこで定義される $3$ 次元多様体の不変量に関して, 双曲結び目に対する体積予想と類似の予想が提唱されている. $3$ 次元球面 $S^3$ 内の任意の twist knot に対して, この予想の成立が証明されている. 我々は, $S^3$ 内の結び目 $7_3$ に対して, この予想の成立を証明した. 本講演では, Teichm¥"{u}ller TQFT の概要の紹介を簡潔に行い, 我々の結果とその証明の概略について述べる. 本講演は arXiv:2307.12848 に基づく.
狩野隼輔
Derived Hall algebras of Ginzburg dg algebras associated with triangulated surfaces
有限体上のabel圏に対し、対象の同型類が生成する自由加群上に拡大の濃度を用いて積構造が定まる。これはHall代数と呼ばれ、例えばADE型クイバーの表現圏については対応するLie代数の量子包絡代数の上半部分と一致することがRingelにより示されている。 一方で、曲面の深谷圏は、大雑把には曲面上の曲線の成す圏で、拡大は曲線の交点数を用いて記述される。曲面のスケイン代数は、スケイン関係式を積構造の定義式と思えば、曲面の深谷圏のHall代数との関係が期待される。 近年、Morton--Samuelson, Cooper--Samuelson, Haidenらにより、曲面の深谷圏のHall代数と、曲面のスケイン代数が密接に関連することが明らかになってきた。 本講演では、曲面の三角形分割に付随するポテンシャル付き箙のCalabi--Yau代数の導来圏のHall代数について、最近の計算結果を紹介する。本講演は、学習院大学の軽尾浩晃氏との共同研究の内容を含む。
辻俊輔
An invariant for homology cylinders via skein algebras
スケイン代数を用いて、整数係数ホモロジー球面の級数の値をとる不変量が定義できることが知られている。この不変量は、スケイン代数のDehnツィストの公式からも定義をすることができる。この定義の仕組みはホモロジー・シリンダーに拡張することができる。この不変量の定義と特徴づけを紹介する。
樋上和弘
二重アフィンHecke代数とスケイン代数
Cherednikによって導入された二重アフィンHecke代数(DAHA)の最近の応用例のひとつとして、曲面上のスケイン代数があげられる。Cherednikはトーラス結び目の量子不変量としてDAHA多項式を提唱しJones多項式との関係を指摘したが、これはある種のDAHAがトーラス上のスケイン代数と同型であることに起因すると思われる。双曲結び目の不変量の構成に向けて、従来のDAHAの拡張について議論したい。
藤博之
ミニマル弦理論に基づくMirzakhaniの漸化式の類似とその拡張
双曲幾何学において,境界つき双曲リーマン面のモジュライ空間のWeil-Petersson体積に対するMirzakhaniの漸化式が知られています.一方,理論物理学における近年の研究では,この関係式を基にJackiw-Teitelboim重力と呼ばれる2次元重力理論の分配関数の解析が大きく進展しました.この対応関係をミニマル弦理論へと拡張し,Chekhov-Eynard-Orantin(CEO)による位相的漸化式の枠組みを基にすると,Mirzakhaniの漸化式の類似が得られます.
この講演では,CEOの位相的漸化式を概説したのち,Mirzakhaniの漸化式のミニマル弦理論類似や,さらに安定曲線のquadratic differentialの(principal strataの)モジュライ空間の体積であるMasur-Veech体積に対してAndersen-Borot-Charbonnier-Delecroix-Giacchetto-Lewanski-Wheelerの研究で発見された,Mirzakhaniの漸化式の別の類似とその物理的解釈などについて紹介したいと考えています.
本講演は,真鍋征秀氏(大阪公立大学数学研究所,大阪大学大学院理学研究科数学専攻)との共同研究SIGMA 20 (2024) 043に基づきます.
村上順
ボトムタングルを用いた結び目補空間のスケイン加群の構成
結び目 $K$ を,組み紐群 $B_{2n}$ の元 $b$ でプラット表示された結び目とする.組み紐 $b$ は,$2n$ 個のパンクチャーを持つ穴あき円板上に構成されたボトムタングルに自然に作用する.ボトムタングルのなす加群を,この作用を用いて定義されるある同値関係で割ったものは結び目の不変量となり,さらにスケイン関係式を課すことにより,結び目補空間の基点付きのスケイン加群が得られる.特に $B_{4}$ の元から得られる結び目について,$A$-多項式との関係などについても紹介する.本研究は Roland van der Veen との共同研究である.
柳田伸太郎
Askey-Wilson代数について
この講演はAskey-Wilson代数のレビュートークで, 特にスケイン代数との関わりを紹介します. Askey-Wilson代数は様々な文脈に現れる非可換代数で, その名前はAskey-Wilson多項式という5つのパラメータを持ったq超幾何直交多項式系に由来します. この講演では, まずAskey-Wilson多項式を紹介し, それに付随した二重アフィンHecke環のspherical subalgebraとしてAskey-Wilson代数を導入します. 次にOblomkov (2004) によるAskey-Wilson代数の表示およびアフィン三次曲面のFricke-Klein族との関わりを紹介します. 特にFricke-Klein族がPoisson構造を持ち, Askey-Wilson代数はその変形量子化であることを紹介します. そして, 実はそれが穴あき曲面 (4つの穴を持つ球面) の基本群のSkein量子化とも関係することを説明します.