保有装置を紹介します。まっさらな部屋にひとつひとつ手で入れていったものなので、それぞれに思い入れがあります。
詳細が気になる方はお問い合わせください。
最終更新日、2025年12月24日。
いわゆる「トランスファーステージ」です。Thorlabsの部品を組み合わせて自作しています。Thorlabsにして良かった点といまいちな点それぞれ実感しました。図面や部品リストが欲しい方はお問い合わせください。
対物レンズを、ステージやスタンプと独立に動かせるため、作業中のフォーカス合わせが容易。
また、試料ステージとスタンプ全体をさらにXYステージの上に乗せているため、接触中に視野自体を動かすこともでき、大きなサンプルや、スタンプを当てたくない場所があるときに便利です。また実用的にも、顕微鏡の倍率を変えて視野がややずれたときに、スタンプ等の位置関係を変えずに視野を合わせなおすことができて便利です。
真空吸着と加熱機構は、ESSTech社の「HS-2s ホットチャック」を使用しています。自作するつもりでしたが、安価かつ快適動作なので満足しています。ちょっと冷えるのが遅いかも。
スタンプ(スライドグラス)は、伯東よりPDMSゲル「PF-60x60-0170-X4」を購入し、カミソリの刃で切り分けたものをスライドグラスに乗せて使っています。PDMSを自作するよりもはるかに時短です。ポリマーはPVC(リケンラップ)を使うことが多いです。最近は、グラフェンもhBNも任意の二次元物質も、全部PDMSで済ませることが増えてきています。
スタンプをアームに取り付ける際は、磁石でスライドグラスを上下から挟むようにしており、取り外しが容易です。装置構成も真空吸着よりずっと簡単になります。専用のホルダを3Dプリンタで設計・印刷して使用しています。
市販のAFM(Bruker Dimension Icon)とピエゾステージ(Attocube ECR5050)をベースに、その場で探針と試料のねじれ角度を変えながら輸送測定が可能な顕微鏡「量子ねじれ顕微鏡」を立ち上げました。ステージ類を組み合わせるためには、3Dプリンタで作ったオリジナル部品をたくさん使っています。この過程で、FreeCADというフリーの3DCADソフトが十分に使えることを学びました。
探針作製は独自開発の手法(論文投稿中)を用い、従来よりも低コスト・短時間での探針試料作製を可能にしています。
母体となるAFMも極めて改造性・拡張性に富むため、温度・電磁場・音響波など種々の外場を与えながら、AFM探針をナノセンサとして用いて物質の応答を測定する実験が可能です。
ルーティンとしては、コンタクトモードでの試料クリーニング(100 nN程度で数時間掃くだけ)、トーショナル共鳴モードでのモアレ観察(輸送測定をせずともねじれ角がわかる)、膜厚測定に用いています。
プロトタイプ作製用に3Dプリンタ「Bambu Lab P1S」を導入しました。
発注前の部品位置合わせや、簡単なアダプタ・スペーサを作るのに使っています。例えばThorlabsのパーツは3Dファイルが公式配布されており、添付写真のもの(左三つ)は全部で3時間で刷れました。
同型他機種(Prusa製など)と比べて、印刷速度も速く、デフォルトで多色刷りもできてコスパが良い。
まれに、"Ready to Print"とだけ表示されて進まないことがあります。その時は、電源リセット、Calibrationを走らせる、過去にうまくいったファイルで試し刷りしてみる、AMSの電源リセット、ファイルをコンパイルしなおす、のいずれかをやると復旧します。
NikonのEclipse LV100Dを中古で導入しました。グラフェンなど二次元物質の探索や層数判定のため、世界中でよくつかわれています。特に、手動ハンドルが右手部分についているのと、焦点調整が左手で素早くできるので、操作感もいい。新品で買うと高いのですが、運よく中古美品をみつけて定価の1/3程度に抑えることができました。
顕微鏡カメラは、The Imaging Source社のDFK33UX226を使用しています。解像度も問題なく、RGB、コントラスト調整や、スケール測定が付属の無料ソフトでできます。これで10万円切るのですから、圧倒的なコスパです。
CマウントレンズはNikon付属のものを使いましたが、なんでもよさそう。
ライブで顕微観察しながらRGBのラインプロファイルが測定したかったため(グラフェンなどの層数判定用)、自作でpythonプログラムを作成しました。欲しい方はお問い合わせください。
hBNや初めての物質用には、日東電工の「ELP BT-130E-SL」を使っています。
hBNは、ふんだんに母結晶を載せたテープを基板にはり、100度で1分加熱した後、極めてゆっくり(数分かけて)テープをはがすとよいです。
またグラフェンには、ウルトロニクスの「ダイシングフィルム1007R」を使用しています。
プラズマ処理などせず、ふんだんにグラファイトを載せたテープで、一気にへき開すると、100umスケールのフレークが採れます。
トンネルバリア用途など薄いhBNが必要な場合は、「ELP BT-130E-SL」をマスターテープとして、それを「ダイシングフィルム1009R」にコピーして使います。
PDMSゲル状に直接へき開することもしばしばです。PDMSは70-80度で粘着力を失うため、基板へトランスファーするのが容易です。またグラフェンを直接ピックアップすることもできます。レシピを知りたい方はご連絡ください
「PIB-10」というポンプ一体型の簡便な装置です。廃棄予定だったものを譲っていただきました。
ボタン一発で、大気をそのままプラズマ化、基板表面を親水性にしてくれます。
へき開前の基板処理はこれをweakで30秒ほどやれば十分です。
装置のデザインはSolidworksで、微細加工パターンはIllustratorで書いています。慣れるといろいろ作れて便利です。Thorlabsやシグマ光機の部品はSolidowkrsのファイルが公開されているので、かなり助かっています。
近頃は無料のCADソフトもかなり充実してきており、QTMの装置を作る際には、FreeCADというソフトウェアを学生に使ってもらいました。まったくの未経験の状態から、実用的な部品が作れるまで1週間ぐらいで習得してくれていました。
基板へのマーキングをするために「RUBIS DS1F 」を使っています。普通のダイヤモンドペンだと、鉛筆のように持って刃を立てた状態でしか使えず、顕微鏡下での作業が至難です。
高級志向の人は、基板の座標を登録してフレークの位置を管理する(さらに機械学習を組みわせる)のですが、私はフレークを見つけたらその周りをこれでグルっと囲って次に行く、方式で高速化しています。
グラフェンやhBNのへき開用には、ドープSi/SiO2(285 nm)を利用しています。
薄いhBNを狙う場合は、SiO2(90 nm)を使うとコントラストが上がり便利です。
キャパシタンス測定のために基板の伝導性を排除したい場合は、ガラス基板を使います。
ガラス基板といっても、スライドグラスをダイヤモンドペンで割るだけで十分です。
試料をグラウンドに落として、流れ込む電流を増幅・測定するため、Femto DLPCA-200を使用しています。フィードバック抵抗の値を変えることができ、つまみ一つでゲインも可変です。コンダクティブAFMなどプローブ顕微鏡や、輸送測定など、幅広く使われている機種です。キャパシタの充放電電流を測定することで、キャパシタンス測定にも応用できます。
電流源なので取り扱いを間違うと重大な事故につながるため注意が必要です。
そのせいもあってか、「試料を閉じた箱に入れてその扉と連携したインターロックをつける」(人間が勝手に触れられないようにする)ことがマストの仕様となっています。インターロックを適当なジャンパワイヤでショートすればこの仕様は回避できるようですが、安全には十分な注意を払う必要があります。
AC電流源としてロックインと組み合わせるときは、位相マーカーを出力する必要があります。端子がBNCではなくトライアキシャルなので注意。
Thorlabsの教育用AFMキットを、学生に立ち上げてもらいました。まったくの未経験の状態から、マニュアルを見ながら独力で3日程度で立ち上がっていました。
https://www.thorlabs.co.jp/educational-atomic-force-microscope-afm?tabName=Overview
建物の6階に置いているのと、普通の事務机の上に置いているため、本来のパフォーマンスを全然引き出せていないですが、それでも1 um四方程度のスキャン範囲であれば、十分な像が得られています。
将来的には、グローブボックスの中への導入、QTMなど種々の新規スキャニングプローブ装置への改造を行う予定です。
今後の更新予定、
ロックインアンプ