学部および大学院におけるセミナー指導について
学部セミナー:
坂本の専門は偏微分方程式論です。3~4年セミナーではこの分野の基本的なことについて学んでいきたいと思います。公式には
Lawrence C. Evans, `Partial Differential Equations' (2nd ed.)
の第2章(古典的=概ね微積分のみでわかることの基礎)を挙げていますが、この本の別の章(例えば5章のSobolev空間論などより現代的=関数解析・関数空間の理論を基に話を進めるところ)からでも可能ですし、(全部読む必要はないのですが)大部すぎて気が引ける方には
Jurgen Jost, `Partial Differential Equations'
Salsa-Verzini `Partial Diffrential Equations in Action'
を、より短く古典的な内容から現代的な内容まで押さえていること&九大生は学内からデータをダウンロードできるため推奨します。偏微分方程式にまずは和書で触れてみる、という観点からは
も挙げられます。逆に現代的内容の基礎をまず徹底的に知りたいというのであれば
を挙げますが、どちらも結構な力が必要になります。
現代的偏微分方程式論を学ぶには多彩な道具が必要になるため、まずはそちらを先に、具体的にはFourier解析や関数解析、超関数論について先に学ぶというルートも可能です。その場合の候補は
スタイン-シャカルチ I(フーリエ解析) III(実解析) IV(関数解析)のどれか(原著ならなお良し)、
Haim Brezis `Functional Analysis, `Sobolev Spaces and Partial Differential Equations' (九大生タダ)
などです。
修士課程への進学を考えている場合、偏微分方程式論なら洋書3冊のどれか、道具なら関数解析関連のテキストを推奨します(必須ではないです)。または十分力があるならば下記修士向けに挙げたテキストでも良いです(力のある4年生なら読めるでしょう)。
大学院での指導を希望する方へ:
坂本の専門は偏微分方程式論の中でも特に運動論方程式と呼ばれるもの(研究のページもご覧ください)で、修士1年生にはこの分野の基礎、または関連分野の基礎を学んでもらいます。
前提条件として、まずは大学院試験に受かるだけの微積・線形および常微・複素解析・測度論と積分論への習熟は必須ですが、そのうえで学部卒業までに上記の本で扱われていることの「多く」を勉強しておいてください (特に他大学や数学科以外からの進学希望者はカリキュラムが異なるので十分留意してください)。自分が学生だったころを振り返ると学部のうちに知っておくべき内容でも知らなかったことが多いので、後から勉強すればいいとはいえ先にやっておくほうが絶対に良いです。特にFourier解析と関数解析は必ずマスターしておいてほしいです。
そのうえで、運動論方程式の基礎であるBoltzmann方程式を学ぶために
Robert Glassey `The Cauchy Problem in Kinetic Theory' または
Cercignani-Illner-Pulvirenti `The Mathematical Theory of Dilute Gases'
を読みます。現代では運動論方程式の考え方は各個体間の相互作用により群の動きが決まる、というアイディアが応用され生物学をはじめとする他分野への応用がありますが、その基礎を学びたい場合
Benoit Perthame `Transport Equations in Biology'
Nicola Bellomo `Modeling Complex Living Systems'
Bellomo et al. `A Quest Towards a Mathematical Theory of Living Systems'
があります(Perthameの近年の著書の内容は運動論方程式の技法と異なっているようなので、そちらに移るまでに力をつけてもらう必要があるでしょう)。
この段階でも技法から学ぶことは(あまり薦めませんが)可能です。その場合
Bahouri-Chemin-Danchin `Fourier Analysis and Nonlinear Partial Differential Equations'
を挙げます。
偏微分方程式の現代的王道であるNavier-Stokes方程式の数学理論を九大数理にいながら学びたいという人には(一番良いのは基幹教育院のJan Brezina先生を志望されることですが)私を志望されるのが一番分野的に近いです。私自身NSはほぼ素人なので上の理論と比べると指導のつたなさは「共に学ぶ」という姿勢でご容赦を願いますが、その場合のテキストとして
Tai-Peng Tsai `Lectures on Navier-Stokes Equations'
を挙げておきます。
以上の本を半年~1年程度勉強した後、それに引き続く研究の最先端の内容を紹介したり探したりして、修士論文の作成につながるような勉強を続けます。
研究生を志望する方へ(特に海外の学生向け):
しばしば私の研究生を志望し、九大数理の修士課程・博士課程に進学を希望する人からのメールを受け取るようになりました。私を指導教官に志望してくれるのは光栄ですが、海外の方が日本に来てから「こうではなかった」と思うといろいろつらいと思いますので、特にそのような方を念頭に置いての注意を書いておきます:
修士に進学を希望する場合は学部4年間の解析学、博士に進学を希望する場合さらに偏微分方程式の専門的な内容を九州大学学生と同じレベルで十分深く理解してください。具体的に、基礎的な微分積分(ベクトル解析を含む)・線形代数・複素解析・常微分方程式・測度論とLebesgue積分論・Fourier解析・関数解析を十分に理解したうえで私の研究生を志望されることを強く期待します。これらの内容は全て九州大学では学部教育で講義として提供されますが、私の仕事の時間の都合上時々質問に答えることはできてもそのすべてを教えることはできません。具体的なレベルとしては、公開されている九州大学の院試の過去問がきちんと解けることですが、少ないので他の国立大学大学院の同レベルの問題もたくさん解いて自分の実力を把握されるといいと思います。さらに博士への進学を希望する場合、偏微分方程式の基礎的なことについて十分な学習と経験がある(他大学で修士論文を書けるぐらい)ことを期待します。
研究生としての受け入れはちょうど1年間のみとします。海外の主要国と比較すると日本の学期は半年ずれていますが、もし10月に日本に来ると2月の外国人向け試験と8月の日本人向け試験という2回のチャンスが一応はあります。しかしこれらの試験は方法が少々異なるため、全く同じ方法で準備するとうまくいきません。従って、1年準備するつもりで日本に来るならば、それまでに上記の事柄はある程度知っておいて(基本的なことは完全に習得して)、理解が足りていない部分の穴を埋めつつ日本の文化と日本語を勉強するという計画が良いと思います。上のことを全て1年で習得するのは不可能でしょう。また2年も3年もいるとお互いに良くないと思いますので、1年やってだめだったら次の活動場所を考えるときだと思います。
門司 光奈代 (2024/10~2026/03, B3~4) 神保『偏微分方程式入門』を通読した
顔 嘉騰 (Yan Jiateng) (2024/10~2026/03, 研究生) Cohn `Measure Theory' を読んだり院試の勉強をしたりした