研究のきっかけ&エピソード

研究のきっかけ

有機ゼオライトとしての上記ヘキサアリールベンゼン誘導体の水素結合ネットワークキャビティーを拡張すべく、静大1期生の小林憲史君にヘキサキス(アリールエチニル)ベンゼン誘導体を合成してもらったところ、非常に高い蛍光発光を示すことを知りました。そこで、パラ位の置換基と蛍光発光特性の相関を知りたいと思い、ヘキサキス(アリールエチニル)ベンゼン系ホスト分子の研究は、有機ゼオライトから徐々に有機蛍光発光材料へと舵をきるようになりました。

エピソード1

2期生の澤野君には、ヘキサキス(アリールエチニル)ベンゼン系ホスト分子の溶液中での分子認識センサーとしての可能性を探求してもらいましたが、思うような成果は得られず申し訳ないことをしました。澤野君は、学部・修士の3年間腐ることなく一生懸命がんばってくれました。現在、高校理科の教員として活躍しています。

エピソード2

ある時、私たちの有機ゼオライトの研究に興味を持ってくださったM社のTさんが訪ねてきました。その後のやり取りの中で、私はTさんに別テーマの6,13-ビス(メチルチオ)ペンタセンの話をして、同社の別部門のAさんを紹介してもらいました。数ヶ月後、AさんとSさんにお会いし、6,13-ビス(メチルチオ)ペンタセンの共同研究が始まりました。私はAさんに、「別テーマとしてヘキサキス[p-(N,N-ジオクチルアミノ)フェニルエチニル]ベンゼンを研究していて、よく光るので、2次の非線形光学材料として使えませんか?」と話したところ、「もしかすると二光子吸収材料として使えるかも」とのご意見をいただき、同社の別部門のMさんと別のSさんを紹介してもらいました。このような偶然と必然が重なって、二光子吸収材料の共同研究が始まりました。そして、静大3期生の喜多君がパイ共役拡張を行い、スターバースト型のヘキサキス[4-(p-置換スチリル)フェニルエチニル]ベンゼン誘導体が生まれました。

(注) なお、「研究のきっかけ」と「エピソード」に出てくる登場人物は、ほとんど論文発表した内容に関与した卒業生です。これから論文にするデータはホームページで公表できないため、苦労して結果を出してくれた卒業生や現役生の名前は登場しません。ご容赦ください。