お知らせ
今大会の基調講演と大会企画シンポジウムは、令和4年度国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」の助成を受けています。
また、日本環境教育学会、日本野外教育学会、こども環境学会からの後援を受けています。
このため、基調講演と大会企画シンポジウムについては、広く一般の皆様に参加していただくため、一般公開(無料)とします。
(*大会の他のプログラムに参加するには参加費が必要です)
基調講演と大会企画シンポジウムのみに参加ご希望の方は、以下のチラシ裏面のQRコードからお申し込みください。
基調講演(オンライン・録画)
テーマ:これからの持続可能なライフスタイルに向けた体験型の幼児教育 「森のムッレ」アプローチ
講演者
ライラ・グスタフソン氏(スウェーデン・クリスチャンスタッド大学)
大会企画シンポジウム
テーマ:SDGsの視点から自然保育を問い直す
~スウェーデンと日本の保育実践及び環境教育思想の比較から見えてくるもの~
パネリスト
仙田 考 氏(こども環境学会代議員・田園調布学園大学)
増田直広氏(日本環境教育学会理事・鶴見大学短期大学部)
瀧 直也 氏(日本野外教育学会理事・信州大学)
ファシリテーター
山口美和 (日本自然保育学会理事・上越教育大学)
企画の趣旨
近年、温暖化の影響による気候変動が地球規模で進み、各地で台風などによる大規模な災害が起こっている。また、マイクロプラスチック等による海洋汚染は海の生態系に深刻な影響を及ぼし、山や森林の環境変化により野生生物が民家周辺で目撃されるようになるなど、多様な生き物が生息する自然環境の変化が問題となっている。こうした自然の変化は、生き物としてその自然を享受しながら地球上のさまざまな地域で暮らす人間の生活にも、貧困や飢餓などの重大な影響を与えている。
2015年に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、こうした地球規模で起こっている課題の解決のために、17の目標と169のターゲットを掲げたものであり、2030年までの15年間で達成を目指すとされている。貧困の撲滅から気候変動への対応まで幅広い課題を掲げているSDGsには、経済のグローバル化により相互依存を深めている世界の姿が映し出されている。一つの国家や個々の企業の努力だけではこれらの目標の達成は困難であり、地球に暮らすわれわれ一人一人が日々の行動や意識を変えていくことが必要なのである。
このように、国や地域を超えて人々が手を携え、この地球の環境を持続可能なものとして守っていくことを志向する時代に生きているわれわれは、幼児期の教育・保育に携わる者として、いま何をなすべきであろうか。
自然の中での体験活動を重視する自然保育の実践において、気候変動による生態系の変化や、自然災害や開発等によるフィールドの破壊は看過し得ない問題である。また、自然保育の実践における子どもと環境との相互作用を見てとる観点や、子どもが森林環境等の自然を守る主体として育っていくプロセスについては、これまでの自然保育をめぐる研究において十分に議論されてきたとは言い難い。子どもの豊かな育ちをもたらす自然体験の機会の確保と、子どもが活動するフィールドの環境保全とを、どのように両立していけば持続可能な実践につながるのかという視点から、自然保育を捉え直すことが、いま求められているのではないか。
こうした問題意識から、今大会では、大会テーマを「SDGsの視点から自然保育を考える」とし、環境先進国であるスウェーデンから基調講演者をお招きした。基調講演者のライラ・グスタフソン氏は、「森のムッレ」を取り入れた自然保育活動の実践経験があり、現在はクリスチャンスタッド大学で野外教育の分野で研究・教育を進められている。2021年には、スウェーデン国内で『雨の日も晴れの日も:持続可能なライフスタイルの実践のための体験型学習』という書籍を共著で出版されている。基調講演では、氏の実践と研究の成果を踏まえ、SDGsの視点からみた自然保育の実践のあり方についてご講演いただく予定である。
また、基調講演に続くシンポジウムでは、こども環境学会、日本野外教育学会、日本環境教育学会からそれぞれパネリストをお招きし、幼児期の子どもと環境との関わりについて議論を深めたい。各学会を代表するパネリストからは、それぞれの学会の理念をご紹介いただき、幼児期の子どもの自然体験の効果等に関する知見と、幼児期の環境教育のあり方に対するお考えについてご発表いただく予定である。その後のディスカッションでは、森林や里山などの環境を守る主体をどう育成していくかといったSDGsに繋がる観点に基づいて意見交換を行い、幼児期の教育に携わる者が留意すべき点について考察したい。
本シンポジウムは、所属学会の枠組みを超えて、幼児期の子どもと自然環境との関わりのあり方についての共通認識を構築しようとする学際的な試みである。4つの学会の構成員が登壇して意見を交わす貴重な機会であるとともに、討論の過程で得られる知見は、自然保育や環境教育等を専門とする研究者のみならず、現場の保育者や学校教育関係者、保育行政・森林行政の関係者、森林保有者等にとっても有用であると考えられる。このことから、基調講演ならびに大会企画シンポジウムについては、参加者を日本自然保育学会の会員に限定せず、一般公開で開催することとする。