2023年9月2日(土)に行われた「ししぼね寺マルシェ」についてまとめました。(文責:圓勝院 寺庭)
2023年9月2日(土)、この夏を象徴するような炎天下でしたが、江戸川区の後援を得て第一回「ししぼね寺マルシェ」が圓勝院で行われました。当日は700名ほどの方が来場され、マルシェでの買い物やワークショップ、キッチンカーで提供される鹿骨名産の小松菜を使ったピザやスムージーなどを楽しんでいただきました。
住職主催の写経会には、小学三年生〜八十歳まで文字通りの老若男女18名の方にご参加いただき、本堂の静寂の中、真剣に写経に取り組んでいただきました。寺庭企画の「こどもマルシェ」ブースでは、町内の就労継続支援施設の商品(岩塩など)や寺庭が作ったドライブーケなどを16名の小学生が1時間交代で販売し、利益分をハワイ・マウイ島山火事災害救援金として寄付することができました。他にもヨガの体験や、緊急救命の講習会、参拝箇所を回るクイズラリー、子ども会主催のお菓子のつかみどりなども行い、大勢の方々が参加されました。
ここ鹿骨では数年後に近隣小学校の統廃合を控え、若い世代が子ども会や町会などの地域コミュニティとつながる機会が減る恐れがあります。寺マルシェなどの企画や運営を通して、圓勝院が地域コミュニティへの結節点の役割を果たせたら嬉しいです。
お檀家さまには駐車場のご利用等でご不便をおかけしましたが、来年以降もこうした活動を行っていきたいと考えております。ぜひご参加、ご理解の程よろしくお願いします。
(圓勝院寺報『金霊』Vol.21より抜粋掲載)
★事前の予告はこちら
近隣の子ども達の就業体験の一環として、小学生が販売員となる「こどもマルシェ」ブースを作りました。来場者・商品購入者とのコミュニケーションやお金の受け渡し、お釣りの計算、商品棚整理などの実体験を提供することができたと考えております。また取り扱った商品や利益の寄付などを通じて、自分たちの活動が地域や世界とつながっていることを伝えております。
このところ子供向けの就業体験施設が大人気ですが、地域の中でも大人たちのちょっとした工夫で同じような(むしろよりリアルな)体験ができる場を提供していくことは十分に可能だと感じました。
参考までに今回の活動についての簡易レポートを共有しておきます。
圓勝院は2010年度末まで「鹿骨保育園」を運営し、鹿骨地域の公益法人としての役割を果たしてきましたが、保育園閉園後からは檀信徒様向けの宗教事業のみを行っております。しかし、保育園の閉園から10年以上が経過し、地域にお住まいの方との接点が少なくなってしまったことが地域に根差す宗教法人として大きな経営課題であり、また保育園の閉園が鹿骨地域の社会的環境やコミュニティにも影響を与えたと考えるようになりました。そもそも現在でも町会や子ども会などの旧来からの強固なコミュニティ基盤が機能している鹿骨という地域で、あらためて圓勝院がどういう役割を果たすべきかを考えると、新規転入者や若い世代などに対し、旧来からのコミュニティへの入り口役を果たすという方向性があり得るのではないか。それを念頭にまずは地域にお住まいの方々にとっての身近なお寺として再認識してもらうために「オープンテンプル」(オープンキャンパス、オープンオフィスなどに類するもの)の実施を考えましたが、あいにくのコロナ禍で先延ばしせざるを得ない状況が続いておりました。(詳細については別レポートを参照ください)
そのような中、2022年から江戸川区主催の「農の風景育成ワークショップ」に参加しマルシェ開催のニーズがあることを知りました。2023年4月には鹿骨地区は無事に東京都から「農の風景育成地区」の指定を受けたことで、推進役の江戸川区としてもなんらかの企画の具体化を進めたい状況にあり、当寺でのマルシェ開催を打診いたしました。江戸川区後援のマルシェの企画の中に、以前から考えていたオープンテンプルの内容を盛り込めれば圓勝院単独で実施するイベントよりも周知・集客・運営体制の点でメリットが見込めますし、鹿骨という地域の特色である農の風景とのコラボを進め、都市農業や鹿骨地域についての学びを深めていくことは、鹿骨に在するお寺として大切なことであると考えたからです。また、コロナ禍の間に鹿骨小と松本小の統合も決まり、地域コミュニティを維持していくためのなんらかのアクションを起こすならできるだけ早い方がいいという思いもありました。
本来であれば、開催を決めるに際して、地域の関係者の方への説明やご協力の依頼を行いつつ実施日含めて調整するというのが丁寧だったかもしれませんが、江戸川区からの所与の条件として実施日は9月2日というのが決まっておりましたし、やったことがないものについて端的に説明することは難しく、まずは一度開催してみるということを優先し、具体的な企画を開始しました。
冒頭に記載の通り、約700名もの方が来場し、アンケート結果からはイベントとしてかなり満足していただけたと捉えております。また来場者の4割以上の方が初めて圓勝院に来たという結果は、地域の方への認知度向上を企図した圓勝院としてもありがたいことでした。アンケート内には次回に期待する声や具体的なコンテンツへのご意見などもありましたので、それらを反映していく形で、次の寺マルシェを行っていこうというのが主催者側の現時点での見解です。
来場者の方からのご意見とは別に、実施サイドとしての反省点は大小いくつもありますが、それらは概ね開催までの計画準備期間の短さに起因したものだと考えております。寺庭が江戸川区に開催の打診をしたのが6月13日、この時点で開催日である9月2日まで3ヶ月をきっておりました。イベントの青写真を描いて江戸川区とイメージ合わせ、「ししぼね寺マルシェ実行委員会」を立ち上げたのが6月末でしたので、実質的な準備期間は2ヶ月しかありませんでした。開催できただけでも御の字ではありますが、備忘と後学のため、
以下の3点について評価報告しておきたいと思います。
(1) マルシェ開催時期
根本的な問題ですが、鹿骨の農をキーワードにしたマルシェとして実施するのであれば鹿骨の農産物が充実している時期を選ぶべきだったかと思います。近隣の農家の方にとって9月2日という時期は協力しようにも協力できない(農産物がない)タイミングであったと伺っています。
圓勝院視点では、境内や本堂を使ったイベントとなるとそれに伴うご法事の実施やお墓参りへの影響なども考慮する必要が出てきますので、できる限り日付を固定して毎年の恒例行事として認識していただくことが望ましく、また多くの方にご来場いただきやすい「国民の祝日」などの開催が適しているのではないかと考えております。
また、来場者の方のみならず、長く同じ場所に留まることとなる出店者の方への健康的な配慮、また飲食物を扱う上での衛生上の配慮から考えても真夏の開催は避ける、あるいは暑い時期であれば夕方~夜の開催とするのが良さそうです。
(2) 周知チャネルとリードタイム
今回は鹿骨およびその近隣にお住いの方を来場者のターゲットととらえていたため、主に以下のチャネルを使った周知となりました。
※ここでは主に来場者向けの周知について記載しますが、出店者募集の仕方にも課題はあります。
1. 地域関係のチャネル(町会の回覧板・掲示板、小学校、商業施設等)
今回、配布用チラシの原稿が出来上がったのが8月10日で、これを印刷して各町会に回覧・掲示の依頼を行いましたが、実際に地域住民の方の目に触れる状態になったのは8月下旬以降となりました。各町会の各地区長さんが行政等からの回覧資料などをセットして回覧し始めるタイミングが月2回であり、また回覧板の内容が最後の世帯まで行き渡るのに1週間程度かかると考えると、最低でもイベントの一ヶ月前に配布用チラシを完成させる必要があったと考えます。開催側としてはこうした各チャネルの配信の実状などを理解した上で周知計画を立てることが非常に大切だと思いました。
上記に先んじて、7月15日に行われた一丁目町会の盆踊りの際に、町会の方に出店者募集用の簡易ビラ配布と開催アナウンス(放送)をしていただきました。ここからの出店者応募はありませんでしたが、実際の来場有無に関わらず、多くの方に寺マルシェ開催を認知していただけたと考えております。
また、寺マルシェ当日は一丁目町会子ども会でお菓子のつかみ取りコーナーを作っていただき、子ども会会員に限らず多くの子どもたちに楽しんでもらいました。8月の後半に寺マルシェ自体のチラシもあわせて会員宅への開催案内を行っていただき、周知に貢献いただきました。
当初は鹿骨小学校の保護者向け配信アプリを使った小学校児童宅への周知をお願いする予定でしたが、8月下旬に校内で不幸な事故があり、依頼を断念しました。(この場を借りて事故によりお亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。) 事故対応で大変な中にも関わらず、校長先生には寺マルシェにお立ち寄りをいただき、活動へのご理解をいただいたこと、ありがたく存じます。子どもも参加できるイベントであれば、学校経由での周知はぜひともお願いしたいところです。また周知への協力だけでなく、校外教育のひとつとしても何らかの連携ができるよう相談を行っていきたいと考えております。
寺マルシェでは実施しませんでしたが、地域の商業施設へのチラシ配布も有効な手段だと思います。また鹿骨ならでは、マルシェならでは、となりますが農家さんの野菜の直売所や区民農園も有効なチャネルだと思われます。直売所や区民農園を利用される方はそもそもマルシェへの関心があると思われますので、周知チャネルとして検討して良いのではないかと思います。(区民農園については出店者募集の対象にもなると思います。)
なお、境内での開催により駐車や駐輪、お墓参り等への影響があることから、圓勝院の全お檀家様には8月16日にチラシを郵送しております。うち数百件は鹿骨および鹿骨近隣にお住まいの方となりますので、これも周知チャネルのひとつとして機能したと考えています。
2. ホームページおよび各種SNS
圓勝院のホームページおよび農の風景の公式インスタグラムについては8月18日に、圓勝院のインスタグラムには8月19日に開催案内を配信しました。インスタグラムについてはどちらも100~200名程度のフォロワーなので、直接的にはそこまで大きなチャネルではないと思いますが、アンケート結果からは約3分の1の方が各種SNSで寺マルシェの開催を知ったと答えており、一定の効果はあったと考えております。
一方で、SNSを使っていない方からは、いわゆるホームページ等での周知がありがたいという声もあります。口コミなどで耳にした内容について、関係のホームページを確認したり、検索サイトで検索して詳細の情報を取りに行くということもあるかと思います。発信力という点ではSNSには劣りますが、どんなイベントなどをやっていくにしても一定のランディングサイトがあれば詳細な情報発信と記録ができますし、SNSもあわせて多層のマーケティングを仕掛けていくことができると考えられます。寺マルシェだけでサイトを作るのは厳しいので、その他のまちづくりの活動発信も合わせたサイトの仮運用を始めています。(鹿骨サーキュラーベース https://sites.google.com/view/shishibonecb/)
当面は鹿骨近隣にお住まいの方向けの寺マルシェというスタンスで実施していきたいと思いますが、地域の方の賛同や理解を得られた暁には鹿骨の町や農産物のPRになるような外部向けのイベントに昇華させていくことを考えたいですし、その際にはサイトとSNSなどをもっと重層的に活用していけたらよいと思います。
(3) アンケート実施方法
今回、来場者アンケートはオンラインでの回収のみとし、圓勝院クイズラリーをやってくださった方でスマートフォンをお持ちの方に景品を渡す際に直接的な呼びかけを行って回答をお願いしました。しかし、実際にはこのクイズラリーを配布した私自身が配布拠点となった本部テントに居られる時間がほとんどなく、結果としてクイズラリー参加者が少なく、参加者内のスマホ保持者(=子ども以外)が限定され、また該当者への直接的なアンケート依頼はさらに限定され、結果としてほとんどアンケート回収ができないという事態に陥りました。これは大いに反省しています。
地域の方に求められていることが何かということは、地域の方からしか聞くことができません。開催者側のやりたいことをやるだけではなく、地域の方の声を反映し、地域の方も参加していることを実感できるようなイベントにしていくことが肝要かと思いますので、アンケート実施についてはもう少し綿密な誘導線設計と、確実な回収のための役割分担などが必須だと考えています。