ユリカモメ (Chroicocephalus ridibundus)
生息地と合わせてその間の移動経路も保全する必要がある
都市環境は道路や建造物などによって、生物の生息地が分断化されています。分断化されることによって、生存に必要な資源を獲得するための生息地間の移動が困難になったり、他の生息パッチの個体との遺伝子交流の機会が得にくくなったりするなど、個体群の存続等に負の影響が生じます。したがって、都市環境の生物の保全においては、生息地の保全と合わせてその間の移動経路も保全していく必要があります。
⽣物多様性に配慮した緑の基本計画策定の⼿引きにおいて、回廊地区(生息地間の移動経路となる空間)の保全の重要性が示されており、回廊地区の例としては緑道と河川が挙げられています。緑道については、陸生の小型鳥類の生息地間の移動を促進することがわかっているものの、河川に沿った鳥類の移動については未解明な点が多いのが現状です。
河川は水鳥の移動経路として河川はどれくらい貢献しているのか?
修士課程までの間に実施してきた東京都東部での研究から、市街地においては河川が水鳥の主要な移動経路として機能していることが明らかになってきました。水鳥の中でも主にユリカモメ(Chroicocephalus ridibundus)やセグロカモメ(Larus argentatus)、カワウ(Phalacrocorax carbo)の3種の水鳥が河川を移動経路として頻繁に利用していることがわかっており、流路に沿って河川直上かかる構造物(高速道路)が水鳥の移動に負の影響を与えている可能性も示唆されています (Takeshige and Katoh 2020, 2023 参照)。
どんな景観でどんな河川区間が移動のために大事?
博士課程では、ユリカモメをGPSロガーで追跡して移動空間として重要な河川の特徴を景観スケールと局所スケールの両方から評価しました(本研究の成果は投稿準備中)。また、本研究の中で移動経路選択解析手法を新たに開発しました。
その他共同研究等
・カワウのコロニーの存在が地域の昆虫の多様性に与える影響評価
・森林性鳥類の音響モニタリング