※ 倫理学全般の入門書は多数あるが、個人的好みであえて厳選してみる。手元にあれば授業内容にだいたい対応できるはず。「応用倫理学入門」前半のネタ元でもある。
品川哲彦 『倫理学の話』 (ナカニシヤ出版, 2015)(やさしく倫理学の全体像を語ってくれるので、はじめに読むのに向いている)
伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会, 2008)(タイトルからすると動物倫理の本のようだが、規範倫理学から応用倫理学やメタ倫理学まで実に幅広い分野をカバーしている。語りも軽妙で読みやすい)
赤林朗・児玉聡 編『入門・倫理学』(勁草書房, 2018) (教科書として書かれているので少し堅く感じるかもしれないが、幅広い領域についてしっかり体系的に学べる。きっちりと知識を整理する際やレポートを書くときに便利)
神崎宣次・佐藤靜・寺本剛 編『倫理学(3STEPシリーズ)』(昭和堂, 2023)(幅広い話題をバランス良く学べる)
ジュリアン・バジーニ・ピーター・フォスル『倫理学の道具箱』(共立出版, 2012)(倫理学のいろいろな立場や概念を実際に活用しようとするときに手元にあるととても便利)
児玉聡 『実践・倫理学』(勁草書房, 2020)(死刑制度、自殺、安楽死、喫煙、災害時の判断など、現実社会の倫理的問題を具体的に考えることができる。 「応用倫理学入門」後半のネタ元)
【入門書】
児玉聡『功利主義入門』(ちくま新書, 2012)(功利主義の入門書と言えばこれか)
【一次文献・専門書】
ベンサム「道徳および立法の諸原理序説」『世界の名著 49 ベンサム・ミル』(中央公論社, 1979年)(なかなか手に入りにくいかもしれない)
ミル『功利主義論集』(京都大学学術出版会, 2010年)
ミル『自由論』(光文社古典新訳文庫,2012年)(功利主義の観点から他者危害原則(他人に危害を加えない限り最大限自由は守られるべき)を唱えたもの)
ヘア『道徳的に考えること』(勁草書房, 1994)(有名な「二層理論」が展開されている)
【入門書】
※ 義務論単体の手ごろな入門書はないので、上に挙げた倫理学全般の入門書にあたるのがよい。しかしあえて言えば、
御子柴善之『自分で考える勇気――カント哲学入門』(岩波ジュニア新書, 2015)(中高生向きとのことだが、カント哲学に関して内容充実で、初学者には一番お勧め)
【一次文献・専門書】
※ 専門家でもかなり厳しいが一応挙げると、
カント『道徳形而上学の基礎づけ』 (光文社古典新訳文庫, 2012)
カント『実践理性批判』(作品社, 2013)
【入門書】
※ 基本的には上の倫理学全般の入門書にあたるのがよい。ただし、ロールズの「正義論」以降の流れについては、以下がおもしろいかも。
サンデル『これから「正義」の話をしよう』(早川書房, 2010)
サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房, 2021)
【一次文献・専門書】
ホッブズ『リヴァイアサン』(岩波文庫, 1954)
ロック『統治二論』(岩波文庫, 2010)
ルソー『社会契約論』(岩波文庫, 1954)
ロールズ『正義論』(紀伊國屋書店, 2010)(現代に契約説を復活させたもの。20世紀中盤以降の倫理学に甚大な影響を与える。ただし太い。邦訳で844頁)
【入門書】
※ 徳倫理についてもこれといって特定の入門書で手ごろなものはないので、上の倫理学全般の入門書にあたるのがよい。
【一次文献・専門書】
アリストテレス『ニコマコス倫理学』(光文社古典新訳文庫, 2015)
ラッセル(編)『徳倫理学(ケンブリッジ・コンパニオン)』(春秋社, 2015)
【入門書】
※ ケアの倫理にも同様に上の倫理学全般の入門書にあたるのがよい。しかしあえて挙げれば、
渡辺一史 『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書, 2019)(倫理学の本ではないが、介護現場でのケアの実態がよくわかる)
【一次文献・専門書】
ギリガン『もうひとつの声で―心理学の理論とケアの倫理』(風行社, 2022)(ケアの倫理の原点とされる著作。新訳が出たばかり)
ノディングズ『ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から』(晃洋書房, 1997)(ケアの倫理を体系化)
品川哲彦 『正義と境を接するもの』 (ナカニシヤ出版, 2007)(日本語ではもっとも詳しい解説が読めると思われる)
長谷川寿一・長谷川眞理子 『進化と人間行動 第2版』( 東京大学出版会, 2022)(進化論の定評ある教科書。2022年には第2版が出て、最近の研究を踏まえてアップデートされている)
ジェイムズ『進化倫理学入門』(名古屋大学出版会, 2018)(このジャンルに関してはもっとも体系的か。以下のものと違って専門的な哲学者・倫理学者が書いているというのも特徴)
グリーン『モラル・トライブズ(上・下)』(岩波書店, 2015)(科学的に倫理というものを考えたいという人には楽しいはず。ヒトが道徳的な判断をしているときには脳のどこが働いているのか、感情と理性の関係、進化と道徳の関係など)
ウェイド『宗教を生み出す本能―進化論からみたヒトと信仰』(NTT出版, 2011)(進化論や人類学の観点から、宗教のみならず道徳の起源を説明しようとするもの。こんなにもワクワクする本は久しぶりだわさ)
ハイト『社会はなぜ左と右に分かれるのか』(紀伊國屋書店, 2014)
トマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』(勁草書房, 2013)
※授業で参考にしたもの
児玉聡 『実践・倫理学』(勁草書房, 2020)(第2章)
萱野稔人 『死刑 その哲学的考察』 (筑摩書房, 2017)
佐藤大介『ルポ 死刑 法務省がひた隠す極刑のリアル』(幻冬舎新書, 2021)
※授業で参考にしたもの
児玉聡 『実践・倫理学』(勁草書房, 2020)
松田純『安楽死・尊厳死の現在』(中央公論新社, 2018)(タイトル通り各国の状況や、安楽死に関する思想史的な情報、どのように考えていくかの提言まで、とても有益な情報が新書というコンパクトな分量の中にぎっちり詰まっている )
宮下洋一『安楽死を遂げた日本人』(小学館, 2021)(スイスで安楽死を遂げた小島ミナさんのケースが紹介されている)
NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(NHKオンデマンド, 2019)(同じ病気から〈安楽死を選んだ人〉と〈生きることを選んだ人〉の両方が描かれている)
森岡正博『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩書房, 2020)(反出生主義という立場に関して現状での決定版)
『現代思想 2019年11月 反出生主義を考える』(ベネターの議論の検討など様々な論点を含む)
佐々木閑「釈迦の死生観」(上の『現代思想』に入っている。仏教と反出生主義の微妙な関係がわかる)
品川遊『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』(2021, コルク)(とても楽しく読める)
大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』(2019, 講談社)(シオラン入門によい)
クーケルバーク『AIの倫理学』(2020, 丸善出版)(現状日本語で読めるものでもっとも良さそう。AIに関する極端な言説を歴史的に位置づけ、少し冷静な頭にした上で、現実的な問題(プライバシーや格差)を中心に論じる)
久木田・神崎・佐々木『ロボットからの倫理学入門』(2017, 名古屋大学出版)(これも入門的かつ幅広いトピックでよい。特にロボットを責任主体として認める可能性を論じる3章が授業内容とも関連する)
【特集】わたしとアバターと自己と:メタバース時代の「自己」とは何か考える 京大教授・出口康夫×東大准教授・鳴海拓志対談(Self as We 含め面白い論点が多数)(https://www.moguravr.com/metaverse-special-with-me-my-avatar-and-myself/)
伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会, 2008)(一般向け入門でも挙げたが、タイトル通り動物倫理のテーマがメイン)
田上孝一『はじめての動物倫理学』(集英社, 2021)(基本的な論点がコンパクトにまとまっている。新書なのでとっつきやすい。ただし自分の立場が強く出過ぎているところもある)
枝廣淳子『アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』(岩波書店, 2018)(集約畜産や食肉処理がいかに行われているかを知ることができる)
ピーター・シンガー『動物の解放 改訂版』(人文書院, 2011)(現代の動物解放論に大きな影響を与えた古典)
メラニー・ジョイ『私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か』(青土社, 2022)(「食肉主義」という言葉を造り、シンガーとは違った手法で動物解放を目指している)
中村正雄『祭祀と供犠 日本人の自然観・動物観』(法蔵館文庫, 2022)(不殺生戒という仏教の教えとの緊張関係のもとにいかにして日本人は動物の殺生を正当化してきたのかについても書かれている)
池田喬ほか『差別の哲学入門』(アルパカ, 2021)(差別の哲学についてよくまとまっており、一番に薦められる)
金友子(2016)「 マイクロアグレッション概念の射程」『 生存学研究センター報告』, 24, 105-123.(マイクロアグレッション概念がよくわかる。オンライン上で読める。http://www.ritsumei-arsvi.org/uploads/center_reports/24/center_reports_24_08.pdf)
代表的ないじめ研究者の内藤朝雄氏には、およそ難易度順に『いじめの構造』(講談社現代新書, 2020), 『いじめ学の時代』(柏書房, 2007), 『いじめの社会理論』(柏書房2001)という代表的な著作がある。これらはいずれも「中間集団全体主義」という観点からいじめを分析する。
荻上チキ『いじめを生む教室』(PHP新書, 2018)(各種データからの客観的な分析や主要ないじめ理論の紹介などバランスが良い)
板倉昇平『大人のいじめ』(講談社現代新書, 2021)(いじめの構造は大人の職場でも共通して見られることがわかる。自分が将来被害にあわないためにも、いじめの構造をしっかり理解しておく必要があることがわかる)
中野信子『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館, 2017)(認知科学や進化論的観点からいじめを捉えようとするもの)