戸田山和久(2022)『最新版 論文の教室: レポートから卒論まで』(NHK出版)(初版、新版、最新版と改訂を重ね28万部突破のベストセラー。著者の文体が苦手な人以外はまずはこれにあたるのがよいと思われる)
ウィトゲンシュタインの主著は『論理哲学論考』と『哲学探究』(と『確実性について』)だが、いずれも初学者には厳しいので、以下のものから進むのがよいか。
【伝記】
ノーマン・マルコム (1998)『ウィトゲンシュタイン』, 板坂元訳, 平凡社.(マルコムの愛に溢れ、おもしろエピソードが多数)
レイ・モンク (1994)『ウィトゲンシュタイン(1)(2)天才の責務』, 岡田雅勝訳, みすず書房.(二段組みかつ分厚くてかなりのファン向けだが、本当に読ませる)
【全体像】
飯田隆 (2005)『ウィトゲンシュタイン(現代思想の冒険者たち)』, 講談社. (飯田さんは日本の分析哲学・言語哲学研究をリードしてきた人であり、信頼できる解説書)
永井均 (1995)『ウィトゲンシュタイン入門』, ちくま書房.(『これがニーチェ』同様、「永井節」が強すぎると言う人もいるが私は好き)
古田徹也 (2020)『はじめてのウィトゲンシュタイン』, NHK出版.(評判もよく、初学者にわかりやすく書かれていると思う。が、なんとなく刺激が少なめ。永井さんと雰囲気が逆なので、両方読んでみればどちらかが合うはず)
【規則のパラドックス(後期ウィトゲンシュタイン)】
ウィトゲンシュタイン (1953/2020)『哲学探究』, 鬼界彰夫訳, 講談社.(哲学探究には多数の邦訳があるが、本書はまとまりごとの要約や註が丁寧)
クリプキ (1983/2022)『ウィトゲンシュタインのパラドックス―規則・私的言語・他人の心』, 黒崎宏訳, ちくま学芸文庫.(クリプキは授業で紹介したような規則のパラドックスからに触発されて「言葉は意味を持たない」という懐疑論を展開しました。これは大いに議論を巻き起こし、いわゆる「クリプケンシュタイン産業」を形成することになります。最近文庫化された)
飯田隆 (2004/2016)『規則と意味のパラドックス』, ちくま学芸文庫.(上記の議論の明晰な解説)
ニーチェの著作は初心者には厳しいものが多いが『道徳の系譜』は比較的読みやすい。入門書の類はたくさんあるが、個人的には以下がよいか。「超訳」シリーズは読み方にコツがいるので少なくとも初心者には危険。
三島憲一(1987)『ニーチェ』(岩波新書)(もっとも手堅くバランスがいい印象)
渡邊二郎、西尾幹二(編)『ニーチェを知る辞典』(ちくま学芸文庫)
城戸淳(2021)『極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学』(講談社選書メチエ)(文章がいい)
永井均(1998 )『これがニーチェだ』(講談社現代新書)(個人的にかなり好きだが、影響力が強めなので、他の本と一緒に読むのがいいか)
ヘーゲル『精神現象学』(非常に難解だが、死ぬまでには読み通したい)
川瀬和也(2022)『ヘーゲル哲学に学ぶ考え抜く力』(光文社新書)(かなり苦労して一般読者にヘーゲル哲学を伝えようとしてくれている)
岩崎武雄(1977)『カントからヘーゲルへ』(東京大学出版会)
(ヘーゲルは解説書も難しいもの・癖のあるものが多い…)
カント『純粋理性批判』(カントの認識論の主著。もちろん難解)
『プロレゴメナ』(カント自身による解説。ここから取り組むのが吉。)
御子柴善之(2015)『自分で考える勇気――カント哲学入門』(岩波ジュニア新書)(中高生向きとのことだが、内容充実で初学者には一番お勧め)
御子柴善之(2018)『カント哲学の核心』(同じ著者がカント認識論をかなり詳しく丁寧に解説してくれている)
ヒューム『人間本性論』(法政大学出版局)
泉谷周三郎(2014)『ヒューム 人と思想 新装版』(清水書院)(コンパクトでバランスの良い解説書(と専門家から聞いた))
デカルト『省察』(ちくま学芸文庫)(哲学の歴史においてもっとも重要な著作の一つ。平易な言葉で書かれて前提知識がほとんど必要とされない。プラトンやデカルトといった時代の流れを生み出す人たちが書くものは本当にわかりやすくて、読んでいて清々しくなる!)
小林道夫(2006)『デカルト入門』(ちくま新書,)(現在でもデカルト哲学の全体像への最良の案内はこれなのでは?)
アリストテレス『ニコマコス倫理学』(光文社古典新訳)(一気に全部読むのは大変なので、興味があるテーマを少しずつ読んでいくのがいいか)
山口義久(2001)『アリストテレス入門』(ちくま新書)(一番コンパクトにまとまっているか)
プラトン『パイドン』(プラトンの雰囲気を掴みたい人には第一におすすめ)
プラトン『国家』(プラトンの主著。イデア論および理想的な国家運営も述べられる。ただ分厚い)
プラトン『饗宴』(パイドンではイデア論や魂の不死性がいわば冷静で清らかに論じられますが、饗宴の方ではエロースなどと絡めて熱っぽく語られます)
プラトン『ソクラテスの弁明』(光文社古典新訳文庫)(一番有名。とりあえず読んでおきたい)
プラトン『ゴルギアス』(光文社古典新訳文庫)(ケンカを眺めている楽しさがある)
岩田靖夫(2014)『増補 ソクラテス』(ちくま学芸文庫)(解説書で一冊あげるならこれか。名著)
伊藤邦武(2012)『物語 哲学の歴史—自分と世界を考えるために』(中公新書)(濃密かつ華麗な記述)
『哲学の歴史』シリーズ(中央公論新社)(関心をもった哲学者がいたらこのシリーズから当たっていくといいかも)