※ 以下の二つは、哲学史の大きな流れの中で個々の哲学を解説するもの。もちろん「超わかりやすい」「○○時間でわかる」といったあおり文言のある入門書と比べればはじめは少し難しいと感じるかもしれないが、大学生なのだからスタンダードでオーセンティックな水準というものを知っておきたい。
伊藤邦武『物語 哲学の歴史』(中公新書, 2012)
『哲学の歴史』1~12巻+別巻(中央公論新社)
※ 倫理学全般の入門書は多数あるが、個人的好みであえて厳選してみる。
品川哲彦 『倫理学の話』 (ナカニシヤ出版, 2015)(やさしく倫理学の全体像を語ってくれるので、はじめに読むのに向いている)
伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会, 2008)(タイトルからすると動物倫理の本のようだが、規範倫理学から応用倫理学やメタ倫理学まで実に幅広い分野をカバーしている。語りも軽妙で読みやすい。)
赤林朗・児玉聡 編『入門・倫理学』(勁草書房, 2018) (教科書として書かれているので少し堅く感じるかもしれないが、幅広い領域についてしっかり体系的に学べる。きっちりと知識を整理する際やレポートを書くときに便利)
神崎宣次・佐藤靜・寺本剛 編『倫理学(3STEPシリーズ)』(昭和堂, 2023)(まだ読めていないのだが、かなり良さそうではある)
【入門書】
遠山義孝 『人と思想 ショーペンハウアー』 (清水書院, 2014)(質・量ともに、とりあえずこれか)
梅田孝太 『今を生きる思想 ショーペンハウアー』 (講談社, 2022)(「講談社現代新書100」という100頁+αで何とか収めようというシリーズのものなので、コンパクトにまとめられている)
【一次文献・専門書】
ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』(中央公論新社, 2004)(ショーペンハウアーの主著。全部読もうとすると前半が特に大変なので、四巻(本シリーズのⅢ)から読むのがよいか)
※ 大部分の人にとっては主著よりも以下のエッセイ集の方がグッとくるはず。岩波文庫や新潮社や光文社古典新訳文庫など様々なシリーズから出ている。
ショーペンハウアー『幸福について』
ショーペンハウアー『読書について』
ショーペンハウアー『自殺について』
ショーペンハウアー『知性について』
【入門書】
三島憲一(1987)『ニーチェ』(岩波新書)(もっとも手堅くバランスがいい印象)
渡邊二郎、西尾幹二(編)(2013)『ニーチェを知る辞典』(ちくま学芸文庫)(ニーチェ用語・概念の信頼できる解説)
城戸淳(2021)『極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学』(講談社選書メチエ)(文章がいい)
永井均(1998 )『これがニーチェだ』(講談社現代新書)(個人的にかなり好きだが、クセと影響力が強めなので、他の本と一緒に読むのがいいかも)
【一次文献】
ニーチェ『道徳の系譜学』(光文社古典新訳文庫, 2013)(ニーチェの著作は初心者には厳しいものが多いが本書は比較的読みやすい)
【入門書】
高井ゆと里『極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる』(講談社, 2022)(わかりやすく独特の雰囲気をもつ解説書。基本的な論点と流れがよくわかる。特筆すべきはその独創的かつ重みのある具体例。「具体例で語る」という一つのやり方を示している。文学・小説のような読後感。私よりも4つ年下ということもあり純粋に尊敬する)
戸谷洋志『ハイデガー『存在と時間』 2022年4月 (NHK100分de名著)(NHK出版, 2022)(薄いこともありこちらはさらに読みやすい。最近若い人ばかりで焦る)
池田喬『ハイデガー『存在と時間』を解き明かす』(NHK出版, 2021)(上二つとは別の角度から、もう少し詳しくという場合に)
【一次文献】
ハイデガー『存在と時間』(日本でのハイデガー人気はすごく、これまでに8つほどの邦訳があるらしい)
【入門書】
梅木達郎『サルトル 失われた直接性をもとめて』(NHK出版, 2006)(サルトルの入門書はいくつかあり、それぞれ癖を感じた。こちらはコンパクトながら「直接性を希求しつつも限界があらわになる」という一本の筋でサルトル哲学を理解しようとするもので、個人的にはとても理解しやすくしっくりきた)
松浪信三郎『実存主義』(岩波書店, 1962)(少し古くサルトルに限定されない入門書だが、ポイントが絞られている解説)
【一次文献】
サルトル『存在と無』
【入門書】
児玉聡『功利主義入門』(ちくま新書, 2012)(功利主義の入門書と言えばこれか)
【一次文献・専門書】
ベンサム「道徳および立法の諸原理序説」『世界の名著 49 ベンサム・ミル』(中央公論社, 1979年)(なかなか手に入りにくいかもしれない)
ミル『功利主義論集』(京都大学学術出版会, 2010年)
ミル『自由論』(光文社古典新訳文庫,2012年)(功利主義の観点から他者危害原則(他人に危害を加えない限り最大限自由は守られるべき)を唱えたもの)
ヘア『道徳的に考えること』(勁草書房, 1994)(有名な「二層理論」が展開されている)
【入門書】
※ 義務論単体の手ごろな入門書はないので、上に挙げた倫理学全般の入門書にあたるのがよい。しかしあえて言えば、
御子柴善之『自分で考える勇気――カント哲学入門』(岩波ジュニア新書, 2015)(中高生向きとのことだが、カント哲学に関して内容充実で、初学者には一番お勧め)
【一次文献・専門書】
※ 専門家でもかなり厳しいが一応挙げると、
カント『道徳形而上学の基礎づけ』 (光文社古典新訳文庫, 2012)
カント『実践理性批判』(作品社, 2013)
【入門書】
※ 基本的には上の倫理学全般の入門書にあたるのがよい。ただし、ロールズの「正義論」以降の流れについては、以下がおもしろいかも。
サンデル『これから「正義」の話をしよう』(早川書房, 2010)
サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房, 2021)
【一次文献・専門書】
ホッブズ『リヴァイアサン』(岩波文庫, 1954)
ロック『統治二論』(岩波文庫, 2010)
ルソー『社会契約論』(岩波文庫, 1954)
ロールズ『正義論』(紀伊國屋書店, 2010)(現代に契約説を復活させたもの。20世紀中盤以降の倫理学に甚大な影響を与える。ただし太い。邦訳で844頁)
【入門書】
※ 徳倫理についてもこれといって特定の入門書で手ごろなものはないので、上の倫理学全般の入門書にあたるのがよい。
【一次文献・専門書】
アリストテレス『ニコマコス倫理学』(光文社古典新訳文庫, 2015)
ラッセル(編)『徳倫理学(ケンブリッジ・コンパニオン)』(春秋社, 2015)
荻原理『マクダウェルの倫理学:『徳と理性』を読む』(勁草書房, 2019)(個人的に最近マクダウェルにハマっているので挙げた。けっこう難しいかもしれないが)
【入門書】
※ 上記の倫理学全般の入門書がよい。
【一次文献・専門書】
ギリガン『もうひとつの声で―心理学の理論とケアの倫理』(風行社, 2022)(ケアの倫理の原点とされる著作。新訳が出たばかり)
ノディングズ『ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から』(晃洋書房, 1997)(ケアの倫理を体系化)
品川哲彦 『正義と境を接するもの』 (ナカニシヤ出版, 2007)(ケアの倫理に関して日本語ではもっとも詳しい解説が読めると思われる)
白川晋太郎『ブランダム 推論主義の哲学』(青土社, 2021)(5,6章あたりでケアの倫理を活用している)
児玉聡 『実践・倫理学』(勁草書房, 2020)(死刑制度、自殺、安楽死、喫煙、災害時の判断など、現実社会の倫理的問題を具体的に考えることができる)
佐藤岳詩『メタ倫理学入門:道徳のそもそもを考える』(勁草書房, 2017)(日本語で読めるメタ倫理学入門書の決定版)
佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』(光文社, 2021)(もっと読みやすくしたもの)
ジョシュア・グリーン(2015)『モラル・トライブズ(上・下)』(岩波書店)(科学的に倫理というものを考えたいという人には楽しいはず。ヒトが道徳的な判断をしているときには脳のどこが働いているのか、感情と理性の関係、進化と道徳の関係など)
ジョナサン・ハイト(2014)『社会はなぜ左と右に分かれるのか』(紀伊國屋書店)
マイケル・トマセロ(2013)『ヒトはなぜ協力するのか』(勁草書房)
ウェイド『宗教を生み出す本能―進化論からみたヒトと信仰』(NTT出版, 2011)(進化論や人類学の観点から、宗教のみならず道徳の起源を説明しようとするもの)
長谷川寿一・長谷川眞理子 『進化と人間行動 第2版』( 東京大学出版会, 2022)(進化論の定評ある教科書。2022年には第2版が出て、最近の研究を踏まえてアップデートされている)
ジェイムズ『進化倫理学入門』(名古屋大学出版会, 2018)(このジャンルに関してはもっとも体系的。以下のものと違って専門的な哲学者・倫理学者が書いているというのも特徴)