SED fitting を用いた BAL クェーサーの統計的調査 (柳谷百合, 信州大学)
遠方宇宙に存在する銀河の一部は、非常に狭い中心領域から、莫大なエネルギーを放出している。このような銀河の中心領域をクェーサーという。クェーサーのうち、10-40%の割合で、そのスペクトル上に幅の広い吸収線 (broad absorption line; BAL) が検出される。このようなクェーサーを「BALクェーサー」という。BALクェーサーが検出される理由として、(1) クェーサーから吹き出るガスの流れ(アウトフロー)の放出方向が、我々がクェーサーを観測する視線方向とほぼ平行である「inclinationシナリオ」、(2)大量のガスとダストに覆われた進化の初期段階にあるクェーサーを観測している「evolutionシナリオ」、という2つの有力なシナリオが提唱されている。このうち前者については、シミュレーションでは再現されているものの、観測からは十分に検証されていない。
本研究では、SDSS、2MASS、WISEの多波長測光データを用いて、解析コードCIGALEでのSEDフィッティングにより、主要パラメータ(傾斜角、ダストによる減光量)を推定した。BALクェーサー、non-BALクェーサーの両者に対して解析を行い、「inclinationシナリオ」の検証を通して、BALの検出シナリオの絞り込みを試みた。