SDSSとeFEDSを用いたBALQクェーサーのX線吸収強度の統計的調査 (渡邊一樹, 信州大学)
活動銀河核 (AGN) のアウトフローは、超大質量ブラックホールとそのホスト銀河の共進化に寄与したと考えられている。しかし、その加速機構は未だ完全には解明されていない。特にアウトフローを効率的に加速させるためには、中心光源からのX線放射によるガスの過電離を防ぐ必要がある。その役割を果たす遮蔽物質として、光源とアウトフローの間に存在するX線吸収体 (Warm absorber) が有力視されている。実際に、速度幅の大きい紫外線吸収 (BAL) を持つ(すなわち、効率よくアウトフローが噴き出している)BALクェーサーにおいて、紫外線とX線吸収強度の間に正の相関がみられることが示唆されている。ただし、大規模なX線データに基づく統計的解析はこれまでにほとんど行われていない。
そこで本研究では、紫外線 (SDSS) および X線(eFEDS)のAGNカタログを用いて、Warm absorberによるX線遮蔽シナリオを再検証した。その結果、従来の結果と同様に、紫外線とX線の吸収強度に正の相関が見られたものの、Warm absorber の柱密度が小さくても紫外線吸収が強いクェーサーが存在することが分かった。この結果は、X線の遮蔽効果を受けずともクェーサー固有のX線強度が十分小さければ、アウトフローが効率よく噴き出す可能性があることを示唆するものである。