2030年代のクェーサー吸収線研究の展望 (三澤透, 信州大学)

遠方宇宙に存在するクェーサーを背景光源とすることで、その視線上にあるガスをクェーサーのスペクトル上に吸収線(クェーサー吸収線)として検出することができる。従来は、銀河間物質 (IGM) や銀河周辺物質 (CGM) が大半の吸収線をもたらすと考えられていたが、高分散分光観測が可能になるとクェーサー自身に起源をもつ吸収線も多く含まれていることが明らかになり、その用途は大幅に拡大した。さらに最近では、次世代地上・宇宙望遠鏡が稼働する2030年代に向けて、宇宙論、基礎物理学、宇宙生物学にも関連するようなクェーサー吸収線の新しい利用方法も提案されている。そこで本講演では、クェーサー吸収線を用いた新しい研究テーマをいくつか紹介する。