AGNアウトフローにおけるスムースなプロファイルをもつNALの調査 (古布諭, 信州大学)
クェーサーの降着円盤から放出されるアウトフローの性質を探る方法として、クェーサー吸収線が用いられる。吸収線の線幅に応じ、BAL(FWHM ≥ 2000km/s)、mini-BAL(500km/s ≤ FWHM < 2000km/s)、NAL(FWHM < 500km/s)の3つに分類され、その中で、時間変動もしくは部分掩蔽を示すことから、クェーサー近傍のアウトフローである可能性が高く、またアウトフローの性質を表す物理パラメータを評価できるmini-BALとNALに着目した研究が行われている(e.g. Hamann et al. 1995, Misawa et al. 2014)。
Chen et al. 2021では、VLT/UVESおよびKeck/HIRESで観測されたアーカイブデータのうち、線幅が70km/s ≤ FWHM < 2000km/sのBAL-likeな形状(smooth rounded BAL-like profile)をもつ105個の吸収線に対し、等価幅や掩蔽率の統計的な評価を行っているが、簡易的なfittingに留まっているため、物理パラメータに関して議論の余地がある。
そこで、本研究は、同アーカイブデータに対し、CIV吸収線のうち、model-fitに適したスムースなプロファイルをもつNAL(Smooth NAL)に着目した。この Smooth NALについて、吸収線を精度良くfittingでき、また視線方向に対して吸収体同士の重複も評価可能な「mc2fit」コード(Ishita et al. 2021)を用いて、時間変動の有無や物理パラメータの評価を行った結果について述べる。