近傍宇宙に存在する低金属量セイファート銀河の性質調査 (土阪樹, 愛媛大学)

AGNの電離ガス領域の金属量は、典型的には太陽金属量より高いことが知られているが、稀に金属量が太陽金属量未満のAGNが存在する。金属量は銀河進化に伴って増加すると考えられているので、低金属量AGNとその母銀河は化学進化の初期段階にあることが期待される。したがって、低金属量AGNは、銀河中心の超巨大ブラックホール(SMBH)とその母銀河の共進化の物理的起源を解明するために非常に重要な天体である。
本研究では、AGNとして近傍宇宙に存在する2型セイファート銀河に注目した。低金属量AGNのサンプル選択のために、SDSS分光データをもとにBPT図([NIIλ6584/Hαλ6563 vs. [OIII]λ5007/Hβλ4861])を作成した。それにより選択された低金属量AGNサンプルを、スペクトルエネルギー分布(SED)の解析のために、近赤外線データ(2MASS)と中間赤外線データ(AllWISE)とマッチさせた。その結果、37天体の低金属量AGNサンプル(赤方偏移範囲は0.02から0.18)を選択することができた。
結果として、低金属量AGNの星質量が、典型的なAGNよりも系統的に高いことが分かった。このことは、低金属量AGNの母銀河が進化の初期段階にあるという主張を支持する結果である。低金属量AGNと典型的なAGNのSEDを比較したところ、低金属量AGNの中間赤外線におけるSEDの傾きが、典型的なAGNよりも急であることが分かった。さらに、SED fittingを実施したところ、低金属量AGNのAGN fractionの方が典型的なAGNよりも高いことが分かった。このことは、低金属量AGNが成長段階にあることを示唆している。