近年の研究では,「喜び」や「怒り」といった感情のカテゴリーが,言語によって作り出されたものであるとする考え方が提案されています。この考え方について,大人を対象とした検討はたくさん行われている一方で,そうしたカテゴリーがどのように発達するのか,子どもを対象とした検討はほとんど行われていません。感情カテゴリーが言語的に構成されるとする立場から,子どもの中でそのカテゴリーがどのように発達しているのかを明らかにする研究を行っています。
表情を見たり音声を聞いたりしたとき,考えるよりも先に体がビクっとしたり心臓がドキッとしたりすることもあるかと思います。このように私たちは,他者の感情表出に接したときに,相手が「喜んでいる」とか「怒っている」とか考えるのとは別に,迅速に反応するための処理過程を有していると考えられています。この2つのプロセスについて,その発達過程やメカニズムを明らかにする研究を行っています。
私たちは日頃,表情や音声,姿勢,状況,性格など,様々な手がかりを総合して他者の気持ちを読み取っています。その際,それらの手がかりが食い違っていたり,曖昧なものであったりすることも多いでしょう。そんな時,私たちは,何かしらの基準に基づいて,ある手がかりを重視したり,ある手がかりを軽視したりして,その人が喜んでいるとか怒っているとか判断を下しています。このような,複雑な手がかりから感情を判断する際の基準について,発達過程や個人差を明らかにする研究を行っています。