ジバク の 踊り

2020年7月31日- 2020年8月9日


展示会場:ANAGRA
102-0093 東京都千代田区平河町1-8-9 地下一階

【ステートメント】
僕は、世界の成り立ちは"関係"であると考えている。モノやコトが生まれるとき、そこには何かと何かの出会いがあり、反応があり、目に見えない関わりが複雑に絡み合う。関係は無数に物事を繋げ、その反応は止まらない。僕たちはこの流れにあらがうことは出来ない。
僕は現在、"関係"をテーマに、春画の手足に着想を得た「the Couple」シリーズを制作している。 2013年、関係について表現も説明もすることができず途方にくれたとき春画に出会った。何故かその手足の繋がりが、目に見えない関係の姿として僕の目に飛び込んできた。それ以来、僕にはこの世界のあらゆる物事が手足のもつれあいに見えている。

本展のタイトルは「ジバクの踊り」である。 ある時、地縛霊という言葉が頭をよぎり、「ジバク」が頭に張り付いてしまった。 場や想いに縛られるのは霊だけじゃなく、生きてる僕らもじゃないか。 僕たちは地縛人。そして、自分に拘って自身を縛る自縛人だ。 全ては"関係"がもたらした網の中だ。この世界は、目に見えない関わりと交わりのもつれあいなのだ。 そんな世界で人間は、美しく卑しく、生きて死ぬ。僕は壮大な人間の踊りを想像し、そのもがきのリズムを線でなぞり、手足で結ぶ。この瞬間、いつも人間がスバラシイと思うのは、もつれあいながらもその結び目が美しい姿を表すからだ。

本展では、「ジバクの踊り」を主軸に制作した新作を発表します。また、コロナウィルスの拡大により4月開催予定であった展示が延期となりました。その間に描き溜めたドローイングも発表いたします。

Installation view

「ジバクの門 -「世界が終わるまで絵を描く」ドローイングシリーズによるライブ作品

(ANAGRAインタビュー記事より) 2020年、COVID-19により世界が一斉に恐怖に覆われた。全世界がほぼ同時体験するというのは現代人にとって初めてのことだった。東京では3月25日に不要不急の自粛要請、そして4月7日に緊急事態宣言が出され今回の兼子真一個展「ジバクの踊り」も延期となった。僕はこの時に初めて世界の終焉を想像し、その時自分は何をしているか考えた。それは、絵を描いている姿だった。恐らく混乱の後、日課のドローイングを描いているのだろう。それしか出来ないだろうなと想像した。3月26日から「世界が終わるまで絵を描く」というタイトルでドローイングを描き始め、現在では300枚を超えた。 今回の個展でこのシリーズは終わりと思ったが、世の中の空気がまた濁ってきたようで終われそうにない。
本展で「世界が終わるまで絵を描く」シリーズを発表しようと考えていたが、この枚数を展示する方法に悩んだ。特別な時期に描いた絵の一枚一枚に何かが潜んでいる気がするが、それがハッキリ浮き上がる程時は経っていない。しかし「世界が終わるまで絵を描く」シリーズの全ては、今の世界の空気を纏っているのは確かだ。僕自身の問題だけじゃなく、今の世の中の空気や問題も自動的に記されている。そこでこの300枚は一つの作品として成立するかもしれないと考えた。この時期の個展に人が来るのか分からないから、会場をアトリエ空間として考えて10日間で制作してみたい。300枚の絵を組み合わせて、ロダンの地獄の門が出来そうだなと考えた。ロダンの「地獄の門(*6)」、そしてロダンがその手本としたギベルティの「天国の門(*7)」。僕は現世のもつれあいを表現しているから、天国でも地獄の門でもない、現在に建つ「ジバクの門」。壁に貼り付けながら、絵と絵をつなぎ合わせるように描いていこう。もつれ合う個人と群れが作り上げる空想上の門。不安と絶望に対抗するユーモアと想像力を武器にしてライブで制作していこうと思う。(7/31-8/10まで)

© KANEKO SHINICHI