第十三號

特集「禅」 2003年9月


表紙の言葉


 私は3年前に脛拘基を発病して以来、宇宙イメージにこだわり始めた。ところが良く考えてみるとこの紫明の表紙にはすでに第一號から宇宙イメージが使われていた。発病後最初に発表した「イマジナリューム」では病床で描いた絵画を基にしたイメージをCG化した映像を用いた。宇宙に対する関心はその後も続き更に多くのドローイングを描き続けている。ところがこのドローイングには、回復の体調が反映されていることが分って面白い。こういう私的なことを表紙の言葉にして良いのだろうか。ところで本号のものには色彩を使っているドローイングシリーズの中の一点です。これは来年春に開かれる個展に出品を予定しているものです。



◇作品解説


「イマジナリウム」とは、山口が1970年代に提示した独自の概念です。情報化されたイメージがメディアを介して共有・改変・増幅されてゆくプロセスそれ自体に新たな価値を見出そうとするもので、その先進的な思考は今日のネット社会を見事に予見しています。ビデオアーティストとして、最新のメディア機器を用いて表現を行なってきた山口でしたが、病後は「紙」と「絵の具」を自身の新たなメディアとして、表現に取り組んていきます。そうして生み出されたドローイングは、従来のスタティックな作風から一転して、非常にダイナミックで肉感的な雰囲気を持っています。本号の「表紙の言葉」からは、そうした環境や作風の変化を肯定的に受け入れながら新たな創造へと向かう、山口の心境が読み取れます。